絞首刑 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 2019年2月に購入したまま放置していた本書を読もうと思ったのは、飯塚事件を特集したテレビ番組「NNNドキュメント死刑執行は正しかったのかⅢ」を観て、死刑や冤罪について考えたかったからだ。
    著者の青木理のことは以前から知ってはいたが、著書を読むのは初めてだった。
    臨場感のある死刑執行のシーンから始まる本書は綿密な取材のもとに書かれていた。飯塚事件に関しても触れられていた。
    本書を読んだ上での私の結論を言うと、飯塚事件の犯人とされた久間三千年氏は無罪だと思う。「DNA鑑定を外したとしても久間氏が犯人だ」という反論があるが、検察は一つくらいのピースを外しても大丈夫なように論理を組み上げているのだから当然だ。しかし、全ては状況証拠でありDNA鑑定という最大のピースを外したなら、その論理は弱いものになる。国は無実の久間氏を死刑にした。
    このような冤罪があり得る以上、死刑という制度は廃止するべきだ。「殺しは許されるべきでないから国は犯人を殺す」はどう考えても理屈に合わない。
    ヨーロッパでは死刑廃止が主流である。カミュの言葉が印象的だ。「認めようではないか。その本質的な姿は復讐であることを」

  • 私は死刑の存在を否定しない。
    ただ、その適用は行為の責任のみを勘案するだけでは十分ではないとの思いも抱くようになったのは、この本に出合ったからであろう。

  • 死刑制度がある国にいるとはどういうことなのかを考えさせられる著作。

  • 死刑制度に関する議論では、単純かつ表層的な感情論があまりにも強いため反対を唱えるのは気が向かないのだが、自分は死刑制度には反対である。
    ここで論を展開するのは避けるが、その趣旨は本書で青木氏が怒りをもって語っている内容の通り。特に冤罪の温床になっている刑事司法の徹底した不透明性には断固抗議したい。
    冤罪で死刑に処された人は非常に高い確率で存在すると思うし、今現在も冤罪で拘置されている確定死刑囚がいるはずである。そして彼らはおそらく処刑されるか獄中死するであろう。
    これほどの不正義が許されていいものだろうか。
    一人でも多くの方に読んでもらいたい。

  • 実際の死刑囚や被害者遺族、さらにはそこに関わる多くの人々の苦悩と葛藤を描いた壮絶なルポルタージュです。もの凄いですね。1994年に起きた大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件の主犯となる3人の元少年たちへの面会取材を主軸に、マスコミでは語られないであろういくつかの殺人事件における当事者たちの悲痛な声を浮き彫りにしています。マスコミは一般的に事件が起きた直後の被害者の悲痛な面持ちを大々的に報道し、お涙頂戴の演出を散々したあげく、世間の関心が薄まるととっとと撤退してしまいますが、実際にそこに関わっている人々は一生消えない傷と常時対峙しなければならず、死刑囚であれば自分の死までの余生をとてつもない苦悩と共に生きていかなければなりません。現実は単純な善悪の構図では収まりきれず、死刑囚と被害者遺族との関わりも時とともに様々な様相を呈示し、新たな人間関係が芽生えていることには目を見張ります。現在、先進国では死刑制度を行っているのは日本と米国の一部だけであり、さらにこれほど閉鎖的に行われているのは日本だけという非常に特異な状況下にあります。それ故に冤罪が起きやすい構造でもあり、囚人と言えども人権を無視した扱いがなされている状況で、世界の常識からは考えられない制度が未だに続いている現状でもあります。この問題を他人事と見切ってしまうには日本人として些か稚拙過ぎるのではないかと思います。多くの方に読んで頂きたい本ですね。

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著者プロフィール

1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。慶應義塾大学卒業後、共同通信に入社。社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、2006年に退社しフリーに。テレビ・ラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『日本の公安警察』(講談社現代新書)、『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ―徳田虎雄 不随の病院王―』(小学館文庫)、『増補版 国策捜査―暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫)、『誘蛾灯―鳥取連続不審死事件―』『抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)、『青木理の抵抗の視線』(トランスビュー)などがある。

「2015年 『ルポ 国家権力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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