2007年初版だが、現在の平昌オリンピック前の北朝鮮・アメリカの一触即発の状況に近い。北朝鮮の姿勢は、飢えた国民が凍えた大地の土となるのを横目で見ながら偽札と覚醒剤、ミサイルと核で世界を脅かし綱渡り的に現体制を維持している。北朝鮮はこれまで循環型の社会機構を構築しようとせず、農業は大量農薬による破滅型、経済は闇市が活況で公営化するなし崩し型、重工業は不良在庫過剰型、国家運営は腐敗、国益は強奪、日本は拉致被害者は戻らず、朝銀破綻で国庫負担を余儀なくされ、偽札大量流入、サイバー攻撃、テロの脅威に晒されている。物語は、北朝鮮の亡命反体制分子がアメリカと謀りミニニュークで体制転覆を画策し、日本経由での持ち込みを事前にキャッチした日本の公安がアタッシュケースに収められた核をめぐる内容。日本の公安はこの作戦の事実を握り、今後の対米交渉を有利しようと画策、それ対してその記録を奪われまいとするCIA、そして日本の国家警察が入り乱れる。この作戦に使われた在日北朝鮮二世、三世とそれを取り巻く翳が物語の基調でなんとも言い難い。