ふぉん・しいほるとの娘(下)(新潮文庫) [Kindle]

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  • シーボルトの娘こと楠本イネを描いた本作品。

    上巻では、イネ誕生までの経緯についてシーボルトと妾(妻)其扇(そのぎ)とのロマンスを通じて描かれていました。

    下巻では、彼らの娘楠本イネの活躍と悲哀をドラマティックに描きます。

    ・・・
    宇和島で、シーボルトの高弟子二宮甚作に薫陶を受け、勉学に勤しむ姿や「あいのこ」ながらも徐々に受け入れられていく様はNHK朝ドラばりに清々しい。その二宮の医学仲間の石井宗謙で更なる修行に身が出る様、両師匠の別の面を垣間見たときの思い、宗謙に凌辱され彼の子を身ごもったシーン、さらにはその子を誰にも見られず産科医として独りで産み落としたこと等々、実にビビッドでありました。

    この後、ペリーの来航以降の幕末・明治維新という日本史の出来事とイネの仕事とがやや錯綜する形で描かれますが、個人的には日本史の部分は少し冗長?に感じました。一度おさらいして読むと分かりがいいかもしれません。

    更には父シーボルトとの再会や、実は女癖がよくないシーボルトに幻滅しつつ、長崎での医師兼研修生としての生活、さらに東京での医師生活、福沢諭吉との邂逅など、歴史上の人物との交差も見ものでありました。

    ・・・
    ということで下巻でした。上巻につづき非常に緻密に描かれており、遅々として進まずも楽しく読みました。

    歴史好き(幕末・維新)、長崎に興味があるかた、医学の歴史に興味があるかた、等々にはお勧めできると思います。

  • さすが吉村昭の代表作。
    お滝、楠本いね、楠本高子の生涯を通して、
    幕末の日本が描かれている。
    女性が一人で生きていくのが困難な時代、
    夫に先立れた寡婦が、次の縁談を進めていく様子も
    当時としては当たり前のことだった。
    女性の生き方を、真正面に捉えた秀作だと思う。

  • 師と仰ぐ石井宗謙に犯され「ただ」を身ごもり、愛情を持てぬまま育てたことを知った 父との再会も必ずしも幸いをもたらさなかった ネットで調べてみて、大筋合っていた 昭和53年3月出版すでに35年の歳月が流れたが小説は残り、人に感動を与える

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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