新潮 2013年 07月号 [雑誌]

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感想・レビュー・書評

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  • 三島賞の選評を中心に読む。受賞作「しろいろの街の、その骨の体温の」が読みたくなる。

  • 「Re:依田氏からの依頼」平野啓一郎
    「猫の香箱を死守する党」木村友祐
    「蛸の夢」門脇大祐
    「いたちなく」小山田浩子
    以上4つの中短編を読んだ。

    一番面白かったのは平野啓一郎さんの「Re:依田氏からの依頼」。
    一度目に読んだときに読み取ったことと、
    二度目にいくつかの場所を読み直した時に読み取ったことが
    180度くらい変わってしまったのが面白かった。
    私は最初気の狂った運転手に依田氏と凉子さんは巻き込まれたのだと読んだのだけど、2度目で凉子さんが無理心中をはかったのだと気付いた。
    そのため、凉子の姉の未知恵が「悪く書かいてある」(大野さん)という部分も反転してしまうことがわかった。

    凉子の無理心中は3.11の再現で、そこからどうやって回復していくかということを描いた小説で、これからも小説を書いていくという平野啓一郎さんのマニフェストの小説だという話を聞いた。

    平野啓一郎さんは『日蝕』が出版されてすぐに読んで以来。

  •  ほぼ小山田浩子の小編めあてに購入。あまり純文学に詳しくないけれど、その他の作家作品もわりに面白く読めたので記録してみる。

     平野啓一郎『Re:依田氏からの依頼』。ある著名な演出家が、東日本大震災の年を境に姿を消す。知り合いのひとりに過ぎなかった小説家の大田は、失踪の顛末を小説に書き起こすよう演出家の妻に頼まれて…というお話。
     著者は同じ号に収められた三島由紀夫賞の審査員をつとめているそうで、そのコメントなど読むと「宮崎哲弥みたいな人?」という印象。賢くて口が達者でインターネットを利用した合理化が好きで、なんだかんだ言うけど美人が好きみたいな。小説のほうもそういう感じだった。サスペンス仕立てなんだけどちょっとモタモタしてるし、先が読めてしまって、ストーリーの面白みはよくわからなかった。演出家が不条理な病(?)に巻き込まれるくだりは、ずしーんとつられて不快になったけど。

     村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』、冒頭だけ掲載。女の子社会のストレス&不条理をていねいに、わかりやすく細かく描いている。児童文学とか漫画ではかねてから取り上げられてきたモチーフだと思うんだけれども、最近は純文学にも多いんでしょうかね。わたしは女子力が本当に劣等生なんで、こんなつらいこと(しかも卒業できること)を大人になってまで考え抜いて作品にしてる村田さんは、凄く根性がある人だと思います。女性って学校生活によるトラウマを必ず抱えているもので、こういう小説は一般的なOLのカタルシスになり得るのかもしれない。

     小山田浩子『いたちなく』。相変わらずシンプルでクリーンな文章です。昭和のホームドラマっぽく折り目正しく、かつ狂ってる感じがたまらんですね。いつも思うのですけれど、小山田さんの小説は常に冒頭でドン引きさせられる(笑)。うわー引くわーとショックを受け、ぼおっとしてるうちにディテイルの描写に引き込まれ、面白すぎて読み進めてしまうカラクリです。今回は日本昔話テイストもあいまって、ちょっと新たな「おどろおどろしさ」でした。登場人物間のシンパシーが排除された世界は、小山田さんの本でしか味わえない格別なホラーだなあと思う。

     宮尾登美子『きの音の消えるまで -追悼市川団十郎丈」。うちの母が「きのね」を愛していて、市川団十郎がテレビに現れるたびに「この人はトイレで生まれたらしいわよ云々」と必ず言っていたので、なんだか感慨深かった。そういう読者に向けたエッセイ的なもの。宮尾先生のノンフィクションライター魂はよくわかったし凄いと思うけど、やっぱりご本人は、小説になるってことは嬉しくなかったんだろうなあと思ったり。

     あとの作品は、出だしが面倒くさくて読んでいません。ふふふ。

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