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感想・レビュー・書評
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萱野稔人・神里達博著『没落する文明』(集英社新書/756円)、萱野稔人著『国家とはなにか』(以文社/2730円)読了。
『国家とはなにか』は、著者(哲学者・津田塾大学准教授)が『現代思想』に寄せた数編の論文をベースに書き下ろした国家論(2005年刊)。
第1章「国家の概念規定」までは比較的わかりやすく、「お、哲学書にしては読みやすいぞ」と思ったのだが、第2章以降は難解で、私には内容の半分も理解できなかった。
いっぽう、『没落する文明』は対談集なので平明で、しかも内容は非常に深い。
対談相手の神里は科学史家で、東大大学院の准教授だ。
200ページに満たない本で、新書としても薄い。しかし、内容は非常に濃く、「読み応えのある本に出合った」という深い満足感が味わえた。
東日本大震災と福島第一原発の事故を文明の転換点ととらえ、現代文明は今後どこへ向かうのかを、人類史的視野から論じた内容である。
昨年来、この手の本はたくさん出ているが、管見の範囲では本書がいちばんよかった。
帯には次のような惹句が躍っている。
《災害・テクノロジー・エネルギーと政治・経済との相互関係を人類史的に俯瞰!
文明の限界を見すえた文明論》
まさにこの惹句のとおりの内容。そして、3・11うんぬんを抜きにしても、文明論・日本文化論・科学技術論として優れている。第一級の対談集である。
ただ、『没落する文明』というタイトルはよくない。これでは両著者が日本の将来を悲観しているように思えてしまうが、必ずしもそうではないからだ。
“今後、日本も世界も経済的に縮小に向かわざるを得ない”とは論じているものの、両著者とも、それを単純に「没落」とはとらえていないと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示