ダンス・ダンス・ダンス 上・下巻セット 全2巻 (講談社文庫)

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  • ブンガク
    かかった時間300分くらい


    「羊をめぐる冒険」の続編。キキを探す僕の旅。ドルフィン・ホテル、ユミヨシさん、五反田君、ユキ、メイ、牧村拓。
    高度資本主義社会、自己イメージと他者からのイメージの乖離(オリンピック聖火のようにガスバーナーを扱う五反田君)、ブラディー・マリーなどなど。

    アメ、ディック・ノース、ジューン、マセラティ、死の部屋、ドルフィン・ホテル、ユミヨシさん。そんなに簡単には人は消えない。朝。

    久しぶりにこの作品を読んだが、他作品と共通する要素を多く見つけた。特に「ねじまき鳥クロニクル」との関連を強く感じる。まず主人公が妻に捨てられ、鳥の声を聞き、娼婦と出会うこと。個人を超える大きな権力が描かれていること。真意の見えない同級生(主人公から見た印象は真逆だが)、死体を埋めること。壁を抜けてもう1つの世界に行くこと。

    また、それだけじゃなく、ダウンタウンに消えるキキは「国境の南、太陽の西」の島本さんだし(島本さんも青い服を着ていた)、恐怖のなか、ゴムシューズで床を踏みしめる音は「鏡」にも描かれている。僕と五反田君の親密さは「レキシントンの幽霊」に通じるし、そもそも、2つの世界というモチーフはすでに「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」に表れている。

    村上春樹の、そういう作品を自分がとても好きだったことを思い出す。主人公が失い、混乱し、どこかズレながらこの世界と繋がろうとし、(壁を抜けて)もう1つの世界にアクセスし、戻る。

    そして、そんな主人公の戦いは(「海辺のカフカ」はよく覚えていないが)、「1Q84」で愛の成就として描かれていた気がする。

    「世界の終わり」「ねじまき鳥」「1Q84」あたりをとても再読したくなった。そして、読みかけの「騎士団長殺し」
    も。「多崎つくる」は違ったけれど、「騎士団長」には、自分が好きな村上春樹の感じがあった。

    ところで、「ダンス」が30年前の作品であることに、私はびっくりしましたですよ…。

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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