喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫) [Kindle]

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  • 工学系の大学そして大学院に通う僕(橋場)と研究室助手(喜嶋先生)の話。

    普段なら読まないジャンルでかつ、工学系の難解な単語が羅列され、アレルギーが出そうな話なのに、なぜかスラッと読むことが出来た。

    寝食を忘れて熱中できるものがあって、しかもそれが社会の役に立つ研究で、かつ将来的に自分の仕事にもなるなんて羨ましい。
    羨ましいけど、だからこそ、立場が変わると好き勝手に研究できなくなって、そのしがらみに苦しめられることになる。だから静かな生活なんてタイトルなんだなと思った。

    私は大学にも行っていないし、社会的意義のある立派な仕事に就いている訳では無いけど、今置かれている環境はきっと当たり前ではないのだろうなと、きっと過ぎ去ってしまってからようやくそれに気づくのだろうなと、ちょっぴり切なくなった。

    でもきっとこの本を読んだおかげで、多分今、とても幸せなのだと、疑いなく感じることが出来た。

  • 研究者、と言われる人の仕事や生活、考え方の一端を知ることができた。研究者道をひたすらに突き進む喜嶋、その喜嶋に最も憧れや尊敬を持ちつつも世間の価値観に徐々に溶け込んでゆく橋場。
    研究者ではない自分には簡単に理解できる世界ではないが、人間関係や立場ではなく、乗り越えるべき壁が次々に立ち塞がる研究という仕事の奥深さも感じられた気がする。
    研究者に感情がないわけでは決してなく、日常の思考や生活が研究中心になればなるほど、優先度のようなものが下がっていくのかもしれない。
    ただ、最後の展開が自分には残念でならない。。

  • 橋場の大学生活を通して研究者の生活を覗き見ることが出来ました。何か一つの事に没頭して研究するって凄いですね。その反面、進路に悩んだり自殺者が多かったりと負の部分も知ることが出来ました。以前テレビでOISTを特集していましたが、出てくる学生さんたちは皆さん本当にすごかった。研究に全力に進んでいる姿はキラキラしていて、研究者ってこんな感じなのかなと思いました。 帯に書いている通り最後の展開は衝撃でしたが、あえてそれを入れた意図が私には理解が出来なかった作品でした。

  • 最後の数行の中にある「風の便り」だけは、個人的には必然性がわからなかった。それを除けば、本当に、静かに迫ってくる小説だった。「学ぶ」とはどういうことなのか、を考えさせられる。なぜか私は喜嶋先生から星野源を思い浮かべてしまった。彼も「表現する」ということに純粋で、生活が苦手なタイプだとエッセイから感じたからだと思う。

  • アカデミックな世界の独特な雰囲気がとても良かった。

    作者の自叙伝的なところもあるのだろうけれど、主人公の風変わり(に思える)性格や、喜嶋先生はじめ学部や院内の個性的な面々のおりなすやり取りがとても面白い。

    ラストシーンがなんとも謎めいていて、物悲しくなる。

    理系の研究者らしい、棒線を使わないカタカナ語が特徴的でしたね。コンピュータとかマイナとか。

  • 作者の自伝的要素が入った、喜嶋先生についての小説のようなもの。これまで社会に出ていなかったことを発見するという、面白いけどすごく大変な仕事について、夢中になれる大人がいることに対する喜びや驚きに満ちていて、研究職じゃない私もビシビシと向上心が刺激される。
    けれど、研究と仕事の違うところは、プロセスへの他人のかかわり具合だと思う。
    他人が関わってくると、途端に複雑に面倒になるというのが社会に出てわかりました。

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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