ガウディの伝言 (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • サグラダ・ファミリアの構造、彫刻には全てに意味があり、合理的であり、その緻密さは妥協のない精度でなければならない。ガウディが自身の作に込めるその芸術性はピカソなど同年代の芸術家に大きく影響を与えるほどだったそうだ。

    例として、建築に用いられているカテナリーアーチは、鎖をぶら下げた実験を経て、自らを自らで支える重力の最適な曲線構造をとる。柱は螺旋状の模様がみられるが、高さに対して徐々に多角形の面を回転させるように作られており、これは植物に着想を得ている。

    自然に逆らわずに大規模な建造を緻密に作り上げていくガウディは、既に完成されたこの地球の一部として人という存在があったのだということを表現しようとしたのかもしれない。私たちの周りには自然と相反する物が溢れている。その中に身を置いていつの間にか不安定な精神状態を送っていることは、無理のないことかもしれないと気付かされた。

    人生を賭けて何かに打ち込んだ作品が、その美しさや理念が、死後も後世までつづくものであることはなんと幸せなことであるか。私たちの日常の中に、仕事でも、遊びでもそうした情熱を注ぐ何かを見出すことが幸福であるのかもしれない。

  • 京都市立芸術大学を卒業後、石の彫刻を手掛けたいとパリに渡った著者が、たどり着いたスペインで1978年から40年以上にわたって精魂をつぎ込んできたサグラダ・ファミリアの造作とその後ろの隠れたガウディの設計意図に関する叙述録。図面を残さず模型だけの状態から完成に至る過程が、構造様式ごとに語られる。

  • スペイン旅行でサグラダファミリアに行くために予習。
    成り立ちを分かった上で実際に見るとよく理解できた。

  • バルセロナにいって、サグラダファミリアをみたのは二年前だが、その印象は鮮明に残っていて、日本人の技術者がいることは知っていた。
    この本を読むと、ガウディについて、サグラダファミリアについて深く知ることができる。
    ピカソ、ダリ、ミロが青年時代にガウディの影響を受けているのは間違いないとの考察が興味深かった。
    昨年、色々あったカタルーニャ。
    サグラダファミリアの完成は2020年代だという。

  • サグラダ・ファミリアを見に行く予定があるなら☆5。

    著者は実際にサグラダ・ファミリアで石を掘っている日本人。天使像などを手がけ、いくつか0からのデザインも任されている。そんな著者がガウディおよびサグラダ・ファミリアな解説を行う本。

    サグラダ・ファミリアというと、いつまでたっても完成しないことで有名であり、みずほ銀行のアレのようなプロダクトを揶揄する際にも名が上がる。しかしこれを読むと、似ているのは製作に時間が掛かるという点のみであり、全く別物であることがわかる。

    ガウディの作品は彫刻が多用されているが、あれはただの飾りではない。あるものは柱の補強となり、またあるものは雨樋の役割を果たす。機能とデザインが一体となっているのだ。他にも作品の奇抜な特徴は自然を手本にしているなど、そこには意味がちゃんとある。本物を見る際にはこのような知識を持った上で望みたい。

  • ガウディって建築史ではあまり出てこないけど、アカデミックじゃないからかな。サグラダ・ファミリアは完成したら、またぜひ観に行きたいと思った。

  • サグラダ・ファミリアの現場で働く著者が自分のガウディ感や彼の建築について語った本。バルセロナに行くので読みました。ただの「狂った建築」を作ってるおじさんではなくて、ちゃんとそれぞれに意味があるということが分かってからサグラダ・ファミリアを見れたので本当に良かった。サイズの比率だとか、宗教モチーフの意味だとか、色んな事にちゃんと理由があるというのが「ダ・ヴィンチ・コード」のようなスリルがありました。
    これだけ有名なのに報われなかったガウディかわいそう…。

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著者プロフィール

1953年、福岡県生まれ。サグラダ・ファミリア聖堂彫刻家。京都市立芸術大学美術学部彫刻科を卒業後、中学校・高校定時制非常勤教師として勤務ののち、78年バルセロナへ渡る。彫刻家として認められ、アントニ・ガウディの建築、サグラダ・ファミリアの彫刻に携わる。2005年、アントニ・ガウディの作品群として外尾悦郎の作品を含む「生誕の門」と「地下礼拝堂」がユネスコの世界遺産に登録される。リヤドロ・アートスピリッツ賞、12年ミケランジェロ賞、20年文化庁長官表彰など受賞多数。サン・ジョルディ・カタルーニャ芸術院会員。天理大学客員教授。著書に『バルセロナ石彫り修業』(筑摩書房 )、『ガウディの伝言』(光文社)、『サグラダ・ファミリア ガウディとの対話』(原書房)など。

「2022年 『時の中の自分』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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