ガウディの伝言 (光文社新書)

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  • 光文社 (2006年7月20日発売)
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サグラダ・ファミリアの構造、彫刻には全てに意味があり、合理的であり、その緻密さは妥協のない精度でなければならない。ガウディが自身の作に込めるその芸術性はピカソなど同年代の芸術家に大きく影響を与えるほどだったそうだ。

例として、建築に用いられているカテナリーアーチは、鎖をぶら下げた実験を経て、自らを自らで支える重力の最適な曲線構造をとる。柱は螺旋状の模様がみられるが、高さに対して徐々に多角形の面を回転させるように作られており、これは植物に着想を得ている。

自然に逆らわずに大規模な建造を緻密に作り上げていくガウディは、既に完成されたこの地球の一部として人という存在があったのだということを表現しようとしたのかもしれない。私たちの周りには自然と相反する物が溢れている。その中に身を置いていつの間にか不安定な精神状態を送っていることは、無理のないことかもしれないと気付かされた。

人生を賭けて何かに打ち込んだ作品が、その美しさや理念が、死後も後世までつづくものであることはなんと幸せなことであるか。私たちの日常の中に、仕事でも、遊びでもそうした情熱を注ぐ何かを見出すことが幸福であるのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年1月28日
読了日 : 2023年1月28日
本棚登録日 : 2023年1月9日

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