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- / ISBN・EAN: 4988142977427
感想・レビュー・書評
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正直に言うと期待していなかった。
屈託なくアメリカと民主主義の理念を褒め称える愛国調の映画だと思っていた。
が、いい意味で裏切られた。
なにより本作でアカデミー主演男優賞を獲ったダニエル・デイ・ルイスの演技が圧巻だ。甦ったリンカーンそのものではないか。そう観る側に思わせる佇まいは演技を超えたものだった。
前半は退屈。これは観る側の自分のせい。この映画は南北戦争を含むアメリカ建国史と共和・民主の結党背景と米国政治史を知らないと前半は退屈なシーンが続く。
ならば知識がないとストーリーは楽しめないのか。
いえ。そんなことはない。
終盤の奴隷制度廃止のため連邦議会での憲法修正案採択シーン。ひとりひとりの議員に採決を取っていく。個々の個性と共和・民主両党のせめぎ合いを丁寧にかつテンポよく描いていく。ここで光る演技をしているのが、日本のCMでおなじみのトミー・リー・ジョーンズ。
そして議決の場面。結果を知っていても情感の盛り上げ方は巧い。これは演出の腕でしょう。
ここに至るまでのリンカーンの政治手法もちゃんと描いている。リンカーンといえば清廉潔白。聖人のような政治家。ステレオタイプのイメージだとこうなるだろうか。
でも映画を見る限りそのイメージは崩される。
敵対する議員をときに金で買収し、ときに良心と思想に訴える。したたかで狡猾な政治手腕。「目的のために有効ならば手段を選ぶ必要はない」という清濁併せ呑むマキャベリズムを実践した政治家のようだ。すべては奴隷制度廃止のため。自身の政治的理想は合理で実現するもの。未来と夢は自分たちで作るもの。
本作はリンカーンの伝記ではない。リンカーンが最も力を入れて取り組んだ政治的課題にスポットを当てた映画。
ちょっと小難しい。でもこんな偉人がいたとその人と成りを知るのもいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ダニエル・デイ=ルイスがオスカーで主演男優賞を獲ったということで
ずっと観たいと思っていた『リンカーン』!!
やっと観ました!!
この映画は、
南北戦争が4年目に突入した1865年、
奴隷解放のため憲法を改正しようと奮闘するアメリカ大統領リンカーンの伝記映画です。
まずリンカーン大統領はとても不思議な方だなぁと思いました。
みんなが真剣な話をしている時に、
リンカーンは飄々とした雰囲気で、
その場での議題と全然関係のないいろんな逸話を話し出す。
登場人物も、視聴者である私も、
「いったいこの人は何言ってんだ・・・!?」
と不審に思っている間に、いつの間にか話の確信に辿り着いて、
不思議と納得させられてしまう。
この不思議な雰囲気を含めて、国民に愛されていたのかなと思いました。
そしてリンカーン役のダニエル・デイ=ルイス、おっきいなぁ・・・!!!と思いました。
身長2mくらいはあるんじゃないでしょうか・・・!?
一際おっきかったです。
なんかそのおおきさも魅力の一つだと感じました。
本物のリンカーンさんもあんなにおっきかったのかなぁ。
そしてアメリカ大統領のリンカーン役を
イギリス人俳優のダニエルさんが演じているというのもおもしろいですよね。
イギリス人を揶揄する逸話をリンカーンが話すシーンがあるのですが、
それをイギリス人俳優が言っているのだと思うとなんだかちょっとおもしろかったです。
そして一番印象に残っているシーンがありまして、
トミー・リー・ジョーンズ演じる、タデウス・スティーブンスという共和党の議員が
「オレは大統領を信頼したことはないが、リンカーン、あの男には驚いた。」
と言うのに対して、スティーブンスの部下が、
「いや私は驚きません」と。
それに対してスティーブンスが、
「お前は驚かない。だから誰もお前に驚かない。」
というシーンがありまして、
この台詞がとても印象に残りました。
なんかこれ芝居にも通じるなぁと思って。
自分が心を動かさない芝居は人の心を動かすことは出来ないよな、って。
そういうのをとてもストレートに表現してる言葉だなぁと思って私は受け取りました。
メアリー・トッド・リンカーン役の、サリー・フィールドの名演も光っていました。
聡明な女性なんだけど、
息子を亡くし情緒不安定なメアリー。
大統領夫人としての自分と、母親としての自分、の狭間で苦しんでいる様子が
痛烈に伝わってきました。
男性から見た場合の意見は分かりませんが、
この、一見少し自己中心的にも見えてしまうメアリーですが、
女の私から見ると、共感してしまうところもあって、
嫌いにはなれない。
大統領夫人でありながら、"普通の"女性だなと感じました。
あと全然関係ないけど、
リンカーンの長男役を演じてる、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが
ぶかぶかのコート着てるのが可愛かった(*´`*)笑
萌え袖(*´`*)笑
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットはどの映画でもキラリと光る役を演じてるなぁ。
『リンカーン』、
「もう一度じっくり観たい」
と思わせる映画でした。 -
スピルバーグ作品かぁ..... デイ・ルイスは 上手いのでしょうね、と思って公開時にはスルー。
今回、町山本の紹介で興味をもってDVDで観る。
http://booklog.jp/item/1/4797680059
これ、町山解説を読んでからで正解だった。じゃないと、米国史の基礎知識があまりないので、ちょっと掴みづらかったかも。
奴隷解放宣言を担保する条項を憲法にねじ込む。
そこに全エネルギーをかけたリンカーン陣営の交渉が題材。
それを通して、リンカーンがいかなる人物であったかも浮き彫りにされる。
「コンパスは北を示してくれるが、そこに至るまでに沼や川があることまでは教えてくれない」
なんとしても。
そのためには。。
リンカーンの言葉に押されて譲歩する急進派議員スティーブンスを BOSSでおなじみ リー・ジョーンズが 演じているが、彼が曲げて "equality before the law ! "と誇らしげに唱う姿が、リンカーンの信念を映して力強い。
スピルバーグ節もここではOK。
あと3回くらい観たら、もうちょっとわかりそうな作品だった。 -
アメリカ合衆国憲法修正案(公式の奴隷制廃止)と南北戦争集結にむけてのドラマ。主役のリンカーンを初め、様々な立場の人の葛藤が描かれており、見応えのある映画だった。
また、今の日本の国会と比べて、さらに興味深く観ることができた。
democracyという単語が何度も出てきた。 -
個人的には急進派のスティーブン議員の生き様に感銘を受けた。彼の政治信条は、人種間における平等であり、個人は何人たりとも平等であるべきというものである。
しかし、修正条項13条を可決させるため、あえて「法の下の平等」と自身の言説を議会で翻した。
その結果、修正13条は可決するわけだ。確かに、自身が理想に向けて突き進めるのもわかる。ただ、実質的内容を勝ち取るために、あえて政治信条を曲げてでも政治的行動を取る事も必要だと思う。
もっとも、リンカーンは奴隷を解放したがインディアン虐殺を指揮した事でも知られる。敵を作らない政治家というのいないのだろう。敵からも尊敬される政治家というのが真の政治家なのだろう(大平正芳とか) -
奴隷制度の撤廃と南北戦争終結のため戦う第16代アメリカ大統領リンカーンの姿を描いた歴史映画。
アメリカ史はあまり詳しくないのでその点はちょっと難しかったかな、とも思いましたが、奴隷制度撤廃のための様々な駆け引きが面白く、何よりアメリカを変えるんだ、というリンカーンや共和党議員の決意が見ている側に伝わってくる秀作だったと思います。
個人的に印象的だったのが、奴隷制度撤廃のため人種の平等を唱えていた共和党の議員が、制度を通すため自らの意思を曲げ法の文言の修正をした場面。そうした人々の様々な思いがあって奴隷制度がなくなったのかと思うと色々と思うところがあります。
またリンカーンのリーダーシップというものが色濃く描かれていた映画だったと思います。これは現代のアメリカ大統領が世界的にも、アメリカ国内から見ても求心力が失われていることを暗に示しているのかな、と思いました。 -
極めて真面目な政治的駆け引きの物語だが、
ユーモラスな表情と、
シニカルな表現とが、
スピルバーグ監督らしいドラマチックな展開を作り出し、
その筆頭がトミー・リー・ジョーンズのカツラw
偉業を成し遂げる時、
対立しても、
いずれ協力し、
達成するのが人間の真理のひとつであればいい。
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットは、
いつ観ても可愛い♪ -
リンカーン。南北戦争。政治の心。
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リンカーン大統領の生涯のうち、合衆国憲法修正に的を絞って描かれています。
その他の場面も描いて欲しいと思う反面。一つのことをこれだけ丁寧に描くのも良いのかな、と思いました。