嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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    子供の頃読んだ新潮文庫の詳細は、もう覚えていない。鴻巣友季子さんの新訳は手元に持っていて、人に貸したら返ってきていない。買い直すのも悪くないが、気に入って持っていった友人をお茶に誘い出すきっかけにしよう。どうせ勉強するなら、新しくてまだ読んでいない訳にしようと思い、光文社古典新訳文庫を選んでみた。

    荒涼感のあるお話だとは、ずっと思ってきたが、こんなにエネルギーに翻弄されるような小説だったかと驚いた。全く個人的な感想だが、ジャクソン・ボロックの『ナンバー8, 1951、黒い流れ』という絵画を思い起こした。初読の時は中学だから…最初の刷り込みというのは恐ろしい。

    ドラマチックな恋愛ドラマというイメージが強いのは、多分少女漫画の劇中劇でこの作品が紹介されていたのを私が覚えていたせいだが、本作はそんな甘さはない。エミリ・ブロンテが女性であることを思えば、むしろ男性的で骨太な、がっしりした小説だと言える。嵐が丘に引き取られ、虐待されつつ成長したヒースクリフだが、引き取られたアーンショウ家の令嬢であるはずのキャサリンも、そんなに大切にされて育った印象はない。兄のヒンドレーも同様である。むしろ教養はあまりなく、キャサリンが嫁ぐリントン家の方が、よほど名家らしく子供たちを育てている。そのあたり、マーガレット・ミッチェル描くところの『風と共に去りぬ』とも設定が似ていて、ミッチェルが嵐が丘を参考にしたりしていないのかなと、ふと思ったりもした。

    女性の読むロマンチックな小説というには、あまりにも切れ味鋭く、激しい翻訳で、男たちの造形が特にくっきりと浮かび上がる。それはヒースクリフだけでなく、聞き役のロックウッドや、嫌われ者の下僕、ジョウゼフに至るまで。上巻はヒースクリフが復讐を始めたところ…キャサリンがまだ病みやつれてだが生きているので、これから娘や孫の世代にお話が移ってゆく。情けないほどこの後半を思い出せないというのは、やはりそれだけインパクトが強いのか。

    ヒースの丘は、裸足で駆け回るには痛かろう。キャサリンは自由を夢に見ながら、同時に大切に労られ、温かい空気が満ちていたリントン家の生活も、私は愛していたと思うのだ。彼女はどこにもいけない。だからヒースクリフのように、いや、丘を渡る風のように、どこにでも行き、どこにでも帰り、どこででも消えては生まれる事ができる境遇を夢見ていた。恩讐と充たされぬ愛情に鬱々としたヒースクリフは、もはや少女時代のような理想の恋人ではないのかもしれないのに。

    彼らはどこに行くのだろう。

  • 題名は聞いたことがあるが読んだことはない、という扱いの人が多いのではないだろうか。自分自身もそうだったので読んでみたが、まず登場人物が絡み合い過ぎて把握するのにひと苦労という感じがした。ただ、その点も含めて田舎の人間関係はそういうものなのだろう。

  • 世界三大悲劇と謳われていてビビって読み始めたが驚くほど読みやすく、夢中でグイグイ読まされてしまった。ヒースクリフの言動の説明が酷すぎて笑ってしまう。激しい感情の噴出や恐ろしいほどの悪言が一周回って清々しいほどで、その裏にある何か、大きな影が身に迫って時折ゾッとさせられる。キャサリンのヒースクリフへの想い、ヒースクリフの静かな熱情など、魂の片割れという言葉や愛について今までとは全く違う視点から見させられているような感覚。過去の語りがゆえのドキドキもあり。先が気になる。

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