仕事に効く教養としての「世界史」 [Kindle]

著者 :
  • 祥伝社
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感想・レビュー・書評

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  • 本書ではざっくりと世界史における裏舞台を学べます。
    こういうことが世界では起こっていたけど、その背景にはなにが起因していたのか?
    ということを知れます。

    教科書にあるような出来事を深掘りしているような感じでとても興味深い話ばかりでした。

    ただ、内容が非常に幅広く多岐に渡るので、筆者の狙いである「教養」をこの本を使って社会で活かすにはいささか難があるようにも思います。

    しかし筆者の、1を知って10を知るといったような、一つの事象をとことん掘り下げて、知識の泉を他分野まで広げていく思考法は真似るべきだと感じました。

  • 20年以上前にセンター試験で世界史を選択していましたが、大部分忘れていたので読み進めるのに苦労しました(汗)
    しかしこの本の本筋は、細かい内容ではなくそれらがどのように有機的に繋がって、地理関係、民族関係、その時代の技術や文化の背景などが、どう影響したのかを大きく捉えることにあるのでしょう。

    そして世界の流れの中で、日本の歴史を見つめることで初めて気づくことがある、ということが数々の例で実感しました。
    例えば、ペリーが来日した目的が、捕鯨のためではなく、太平洋航路を開いて中国と交易をし、大英帝国に勝つためでした。日本の文献だけを見ていたら、そのアメリカの意図には気づくことができないのです。
    この事ひとつだけでも、いろいろと考えさせられますが、やはりそういった事に気づかずに踊らされるのは気分的に許しがたいと思ってしまいます。

    その他にも中国やヨーロッパ、アメリカに対するhttps://booklog.jp/users/satoshi22#イメージが結構覆されましたので、これまでいかに偏った情報であったかがわかります。

    莫大な知識量に読み終えるのは骨が折れますが、新たなことに数多く気づくことができるとても良い本でした。

  • 出口氏がどれほど歴史好きかというのはWebで読めるインタビューなどから知っていたので、これはと思い読んでみた。

    氏がこれまで蓄積してきた知識から導き出される想像としての「真相」に、「へぇそういう考えもあるのか」と知的好奇心を刺激されるところはある。

    が、タイトル通り「仕事に効く」かどうかとは全く別のお話のような気がする。また、扱われているテーマが世界史とはいえ高校レベルの内容全てを網羅できるわけもないので、本当に世界史を学ぶならやはり教科書などにあたるほうがいいと思われる。

  • 題名が秀逸というかずるい。単に「教養としての『世界史』」だったら、買わなかったと思う。あとがきで「歴史を学ぶことが『仕事に効く』のは仕事をしていく上での具体的なノウハウが得られるという意味ではありません」とし、世界史から「骨太の知性」を身につけることが仕事に役立つと著者は説明している。だまされたという気がしないでもない。ただ、つまらない本ではなかった。

    著者はライフネット生命の会長兼CEO。無類の歴史マニアで京都大学で歴史講義を持つが、専門的な学者ではない。そのためか、本は高校の授業のようにわかりやすく、面白い。

    例えば、ユーラシア大陸で交易を考えたとき、氷河時代に氷に全ては覆われなかった東(主に中国)が豊かで、西(ヨーロッパ)が貧しいという図式があり、茶や絹といった世界商品は東で生産され、決済のための銀が西から東に流れていった。1820年の世界に占めるGDPのシェアはヨーロッパの国が一桁なのに対し、中国32%、インド16%。これが逆転するのは20年後のアヘン戦争だが、2060年の予想では、中国は再び30%台となる。すなわち、現在の中国は台頭しているのではなく、単に元に戻ろうとしているだけ。
    また、米国や革命後のフランスは伝統がない、人工国家。特に米国は「憲法、契約というか、人間の理性を国の根幹においている不思議な国家」であり、イデオロギーが過剰で、独特の正義感を持つ。したがい、米国は、ある程度おだてて、出しゃばらない程度に保安官をやってもらうのが一番いいと言いきる。

    冒頭書いた通り、つまらない本ではない。ただ、やはり題名が気に入らず、★3つとした。

  • 40年ぶり世界史学び直し
    バブル世代には良い薬です。

  • 「歴史を自分の武器にせよ」、あとがきの著書の歴史に対する想いを知るだけでも読んで欲しい一冊。

    本著のタイトルは「教養」としての世界史である。
    多くの人が気になるのは、「教養としての世界史」とはどういうことなのか、
    ということにあると思うが、著者は以下のように答えている。

    《ですから、とりわけ未来ある若い皆さんには、人生の出来事に一喜一憂するのではなく、
    長いスパンで物事を考え、たくましく生き抜いてほしいと思います。
    そのためには、目前の現実にばかり心を奪われることなく、
    自分のアンテナを高く広く張りめぐらして勉強して欲しい。
    そして、今日まで流れ続け、明日へと流れて行く大河のような人間の歴史と、
    そこに語られてきたさまざまな人々の物語や悲喜劇を知ってほしいと思います。
    それが人生を生き抜いていく大きな武器になると思うのです。》P332

    「歴史」とは、人物や年号と言った断片的な「情報」ではなく、
    時の移り変わりと共に変化していく、「流れ」を捉えることが重要であり、
    そうすることで目前の出来事に囚われず、
    長期スパンで物事を俯瞰する、「視座」が得られると説く。
    この部分を読むだけでも本書を読む価値があるのではないかと思ってしまう、含蓄に満ちた一文である。
    著者の「歴史」に対する鋭い洞察に対して、しばしば「出口史観」と呼ばれることがある。
    当人は、歴史的事実は一つだけで合って「出口史観」など存在しないと、
    この言葉に対して、否定的な反応を示しているのだが、
    本著を読むと、目から鱗が出るような、「歴史」に対する鋭い洞察が随所に散りばめられており、
    やはり、「出口史観」を感じざるにはいられない。

    例えば、ペリーが日本に開国を迫った理由に対して以下のように説明している。

    《ペリーの来日目的は、アメリカの文書には明確に書かれているのですが、
    太平洋航路を開いて中国と直接交易をするしか大庭帝国に勝つ方法はない。
    大西洋、インド洋ルートを使用している限り、永遠にライバルには勝てない。
    そのようにペリーは主張しています。日本を開国させることは、
    太平洋航路の中継地点を獲得することになる。まさにクジラはどうでもよかった。》P32

    「鎖国政策」により、海外からの伝聞が限定されていた当時では、
    アメリカと日本では文明の発展度に雲泥の差があったと思われる。
    そのように考えると、「まさにクジラはどうでもよかった」という言葉が言うように、
    アメリカにとって日本という国など、前近代的な東洋のちっぽけな島国に過ぎず、
    交易を行うメリットなど皆無に等しいことは容易に予想できる。
    また、世界全体の流れを無視して個別の国や出来事を論ずることは出来ない、
    その意味において、日本史というのは存在しないとも述べている。
    ペリーが太平洋航路の中継地点として日本を開国させた、という説も、
    世界全体の大きな流れの中での日本史という視点があって成立があってこそのものだと思う。

    本書は「教養としての」というタイトルの通り、
    「歴史」を学ぶ為の「視点」を得るために有用だと思う。
    これで「歴史」に興味をもって、
    いざ「世界史」の「通史」に手を付けたい場合は、
    文字の誕生からの人類の歴史を記した「人類5000年史」をお勧めしたい。

  • 読もうと思った理由
    題名の通り、仕事に効くような歴史事象が紹介されているもの、また現代社会の課題について先人の考えを知りたいと思ったから

    気づき
    ・もし日本史だけを勉強していたなら、武則天のことや
     新羅の二人の女王のことは学ばない。そうではなく、
     奈良時代に女性があのように頑張れたのは、周辺世界
     にロールモデルがあったからだと思う
    ・ペリーの来日目的は日本を開国させ、太平洋航路の有
     力な中継拠点を獲得するためだった
    ・なぜ科挙という全国統一テストができたかといえば紙
     と印刷である。技術が制度に影響を与えるという好例
     である
    ・「長者の万燈より貧者の一燈」などという諺もあって
     貧しい人の真心の一燈が集まった時の力は、とてつも
     なく大きい。そういう形で、どこの社会でも宗教が成
     立し、お金が潤沢に流れ込むようになって、宗教は長
     続きしていったのではないかと考えている
    ・老子と孔子が対立していたのではなく、それぞれのポ
     ジションをきちんと取っていた。法家は霞が関、儒家
     はアジテーション、墨家は平和デモ、それを冷ややか
     に見ていり知識人は道家というように棲み分けていた
     のではないか
    ・人類の交易は海を中心に行われてきたのである。また
     海路は安全性に加え、量をたくさん運ぶことができ
     る
    ・ユーラシアの交易は豊かな東から西へという太い流れ
     が長い間続きました。この流れが完全に入れ替わって
     くるのはアヘン戦争からである
    ・アメリカにはどうしても許せない奴は最後は暴力で片
     をつけるという文化が残っているような気がします。
     その文化がベトナム戦争やイラク戦争に対する姿勢に
     も出ているように思います
    ・世界の歴史を見ていくと、豊かで戦争もなく、経済が
     右肩上がりに成長していく本当に幸せな時代は、じつ
     はほとんどないことがわかります。その意味で、戦後
     の日本はもっと高く評価されてもいいと思います。世
     界史の中でも例がない

    著者の全世界的な(中国・ヨーロッパ・アメリカ・中央アジア、中東・日本など)歴史・宗教・哲学の知識に毎回、感服します。特に、ヨーロッパの歴史は自分には複雑すぎて毎回、理解するのに苦労します。また、それを現代の自分たちの当事者にあてはめてわかりやすく、また人間の行動様式・心理にも深く切りこんで推察するところがすごいと思いました。数年ぶりに再読。

  • 出口さんらしい博識、かつ独自的視点に基づく考察で面白い。
    ただある程度世界史の知識がないと理解は難しい、、、

  • ★4.3(3.85)2014年2月発行。ここまで世界史を極めた著者はいるだろうかというような素晴らしい内容ですね。あまりに高尚すぎて、ついていけない箇所もありますが、いつか再読に挑戦したくなる本です。それにしてもサラリーマンとして勤めながらここまで本を読みこんでいる著者は、まさに知の巨匠の一人ですね。世界史を、中国、中央アジア、中東、欧州、アメリカ、そして日本と縦に見るのではなく、横の繋がりを押さえながら、さらには宗教や交易という観点で見ると、なるほどこれまで見えない所が良く見えてきますね。

  • 偉大なローマ帝国、のイメージがあり世界はずっと西洋中心で動いてきた、って思ってきたけどそんなことはないんだな。
    アヘン戦争まではむしろ東洋の中心と言える。
    勝者が歴史を書き残す、ってその通りなんだよな。

    知っている日本史に世界の動きを絡めると違った見方ができるんだな。
    トゥルクマーンの章だけ分かりにくかった。

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著者プロフィール

出口 治明(でぐち・はるあき):立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画(株)を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命株式会社に変更。2012年上場。2018年より現職。著書に『全世界史(上・下)』(新潮文庫)、『0から学ぶ「日本史」講義』シリーズ(文春文庫)、『歴史を活かす力』『日本の伸びしろ』(文春新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『一気読み世界史』(日経BP)、『ぼくは古典を読み続ける』(光文社)等多数。

「2023年 『人類5000年史Ⅴ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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