サイボーグ009完結編 conclusion GOD’S WAR(1) (少年サンデーコミックススペシャル) [Kindle]
- 小学館 (2012年10月18日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
未完成交響曲の完成版を聴くような気分。残された素材は相当にあるようなのだが、最後の仕上げで本物らしくできているのか不安を感じながら鑑賞する。
ある組織によって能力を与えられた主人公が、正義のためその組織を裏切って戦う、というのは、石ノ森章太郎の終生のテーマだったようだ。『仮面ライダー』しかり、『人造人間キカイダー』しかり。『サイボーグ009』もまた、このテーマだったが、サイボーグたちを作りだした「黒い幽霊団」を倒したあとは、人間が造物主・神と戦うという主題が登場してくるのは避けがたいことだったのだろう。
「天使編」「神との闘い編」は1969年〜70年に執筆されたが、このテーマに取り組もうとしたもののプロローグに終わった2つの試みである。その後、『サイボーグ009』はスピンオフ的な中編がいくつも書かれたが、このテーマに戻ることなく、石ノ森章太郎は逝ってしまった。
『HOTEL』だの『マンガ日本の歴史』だのを書いている時点で、私としては「神との闘い編」の完成など諦めていたが、実は作者は病床においてこれを完成させるべく、かなりの創作ノートを書きためていたという。そもそもその「完結編」は小説としてまず出版し、その後、マンガにする予定だったという。そのノートと作者自身との対話をもとに息子の小野寺丈が完成させ、まずは小説の形で出版された。そして、こんどはそれをマンガにする作業を、かつてのアシスタントの早瀬マサトとシュガー佐藤が行ったのが本書である。
ジェームズ・ボンドよりも先に知っていたというくらい、子どもの頃から親しんでいた『サイボーグ009』だけに出来の悪いものを見せられては、と若干おっかなびっくりだったが、表紙の青い戦闘服に目を惹かれた。これも石ノ森章太郎自身が完結編で登場させようとしたものだという。ただし本巻では戦闘服姿は回想シーンでしか出てこない。
小説版をさっぱり読む気がしないのは、やはり『サイボーグ009』はマンガだからである。読んでみて、びっくりしたのが、人物といい、コマ割りといい、石ノ森章太郎の絵とほとんど見分けがつかないことであり、こいつ、アシスタントに相当仕事させていたなと思った次第。その点では十分楽しめた。
ただ、ストーリーのほうは病床の石ノ森章太郎のもとに001のテレパシーが届き、ギルモア博士が姿を現すというプロローグに続いて、002以下のサイボーグたちそれぞれが事件に巻き込まれ、超常的な力と遭遇するエピソードが連ねられていく形式。第1巻では003のエピソードまでで、話は小ぶりに留まっていて、物足りない。最後は相当ハードな展開になるのだそうだが。