1985年のクラッシュ・ギャルズ [Kindle]

著者 :
  • 文藝春秋
3.83
  • (3)
  • (4)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 55
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (269ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 帯 「ふたりは、少女たちの殉教者だった」
    クラッシュギャルズは、アイドルとして扱われた。リングで歌を唄い、踊り、テープが投げ込まれる。
    長与千種の感じた違和感。エリートだった飛鳥。この二人が、今までにないプロレスをしようと合意したことから、成立したこと。
    しかし、輝きというものは短い。

    第1章 観客席の少女
    第2章 置き去りにされ
     親戚の間をたらいまわしにされた千種の幼少期
    第3章 光り輝くエリート
     エリート飛鳥、しかし松永兄弟から「伝わるものがない」と言われ
    第4章 赤い水着
     1983年に結成されたクラッシュギャルズ。女子中高生の熱狂
    第5章 青い水着
     トップだった飛鳥が千種に喰われる。なぜ歌うのか、苦悩
    第6章 親衛隊
     軍隊のような親衛隊組織
    第7章 引退
     クラッシュの分裂、ダンプの引退、千種は神取との対戦に活路を見出そうとするが
    第8章 現実と向き合う季節
     千種が引退、飛鳥も後を追う。しかしレスラーでなくなった現実
    第9章 新団体
     劇作家「つかこうへい」が千種の才能を見出す。「リング・リング・リング」上演
    。千種は1994年ガイア・ジャパン設立
    第10章 冬の時代に
     飛鳥も復帰、ヒールに転向して開眼
    第11章 夢見る時を過ぎても
    第12章 そして誰もいなくなった
     クラッシュ再結成、しかし時代は戻らない
    第13章 クラッシュ再び
     少女時代、応援していた少女

    第5章に、ノンフィクション作家井田真木子さんの話が出てくる。これを読んで「プロレス少女伝説」を読みたいと思った。本書の中では、千種と井田氏のやり取りだけが「デラプロ」に掲載され、飛鳥の考えが掲載されない、それはおかしいと著者。プロレス雑誌は試合のことを伝えることが主、記者の主観のみ掲載するのは疑問と。

    本書のあとがきで、井田氏が2001年、44歳急死されたことを知った。井田氏と千種の間には、行き違いがあったと。

    自分が高校卒業後、東京で一人暮らしを始めて、一緒に遊びに行く人もない日曜日の午後、いつもテレビで見ていた女子プロレス。
    あのときの6畳一間のアパート、暑かったし、寒かったなあ。

  • 格闘ライター柳澤氏によるクラッシュギャルズ伝。女子プロレスは、ほとんど見ないが、名前や長与千種の天才性は聞こえてきた。男子プロレスはレスラーが自我がぶつかり合う世界。女子プロレスは管理側から抑えられた環境からの解放と模索の世界か。

  • 名作「1976年のアントニオ猪木」を書いた元Numberデスク、
    柳澤健が、女子プロレス最高の栄華の時代と、その時代の頂点に居た二人の
    女性・・・長与千種とライオネス飛鳥・・・すなわちクラッシュ・ギャルズに
    ついて記したドキュメンタリー。

    確かに、80年代のクラッシュ人気は凄まじかった。
    ゴールデンタイムでTV中継される全日本女子プロレスの会場はいつも超満員
    で、客席に男っ気は皆無。声を枯らして応援しているのは殆どが痛そうな
    女子中高生であり、その様はあまりに異様だった。

    まだプロレスに対してピュアだった僕は、正直クラッシュ時代の全女が許せ
    なかった。長与・飛鳥の付け焼き刃の男子スタイル美味しいとこ取りや、
    あまりに陳腐なダンプ松本の凶器攻撃。そして絶対に認められなかったのが
    阿部四郎という悪役レフェリーの存在。コレと猪木や藤波がやっているモノ
    が同じプロレスと思われる事が我慢ならなかった。
    ・・・のだが。

    そこに本気で怒っている僕自身も、長与千種という天才の掌で踊らされて
    いたに過ぎない、という事に気付かされてしまう作品。確かに毛嫌いしなが
    らも毎週欠かさず観ていたし、冒頭に登場する長与vsダンプの髪切りマッチ
    で長与が負け、リング上で丸坊主にされた時には唖然とした。不条理ながら
    「そこまでやるか!」と感じたのも、紛れもない事実なのである。

    そんな全盛期の女子プロレスに巣くうドロドロした人間関係がこれでもか!
    という具合に描かれる。特に長与千種という天才の側で苦悩し続けるライオ
    ネス飛鳥に関する記述には思わず唸ってしまった。これまで長与について
    書かれた記事や作品はいくらでもあった気がするが、飛鳥にここまで踏み込
    んだ本はおそらくこの作品以外に無い。その部分だけでも一読の価値はある
    と思う。

    柳澤健の「19●●年の○○○○」シリーズは全て読むべき、と悟った。
    この「1985年のクラッシュ・ギャルズ」は特にプロレスファンで無くても
    心が揺さぶられる筈。Kindle版とはいえ、199円という価格は正しく破格。
    絶対に読んで損は無い。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒。文藝春秋に入社し、「週刊文春」「Sports Graphic Number」編集部等に在籍。2003年に退社後、フリーとして活動を開始。デビュー作『1976年のアントニオ猪木』が話題を呼ぶ。他著に『1993年の女子プロレス』『1985年のクラッシュ・ギャルズ』『日本レスリングの物語』『1964年のジャイアント馬場』『1974年のサマークリスマス』『1984年のUWF』がある。

「2017年 『アリ対猪木』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柳澤健の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×