ブッダ 7 [Kindle]

著者 :
  • 手塚プロダクション
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感想・レビュー・書評

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  • ミゲーラを助ける為に苦行のような治療行為を1年間続けたシッダルタとタッタ
    この巻ではこの行為に始まり、シッダルタが向き合ってきた苦行に対して本格的に疑念を呈すような描写が目立つようになってきたね


    ミゲーラの命は助かり、タッタも改心した。人々への救済を目指す第一歩としては素晴らしい成果
    だというのに、デーパからすればこれは穢れそのものに該当してしまうというズレ
    デーパとの苦行はシッダルタに何も齎さないという点がよく判る離別

    こういった反発が有ったからこそ、一見すると修行しているようには見えないアッサジの在り方そのものが苦行のように見えてくる構図は面白いね
    彼は予知の力によって自身の死を知っている。けれど、それを表情に出すことなく飄々と生きているし、死の運命に抵抗する気もない
    全てをあるがままに受け入れている

    そんな彼の死は壮絶の一言……
    本作の序盤で語られた兎が自らを人間に食べさせる逸話。ナラダッタがダイバダッタに語った食べられる為に捕まったという逸話
    アッサジの行為はそれらに通じるものが有る。飢え死にしかけた小動物のために自身を食べさせたその行いはあらゆる苦行を超越し、そして正真正銘に尊い死と呼べるもの

    これを目前にしたシッダルタは価値観がひっくり返されたようなもの
    苦行林の苦行を否定し、そして自暴自棄としか思えない自傷に走ったのもそういった影響によるものかな
    けれど、あまりにアッサジの行為は超越的すぎて、逆にシッダルタに道を見えなくさせてしまうものとなってしまうわけだね

    いわば道を失っていた状態のシッダルタにとって臨死のスジャータを通して見た生命の道は果たしてどのような意味を持っていくのだろうね……


    話は変わって始まるのはルリ王子の物語
    クシャトリヤの子として生まれながら同時にスードラの子でも有るルリ王子
    本作は身分の壁や差別を強く描いてきただけにこういった生まれを持つ人物が登場すると、尚更に身分差を残酷に感じられるようになっているね

    そしてルリ王子と関わることになるのが、特殊な身体を持つヤタラとなるわけだね
    彼もスードラの生まれでありながら、大きく強い身体を持つためにクシャトリヤが相手だろうと粉砕できる
    それは力によって身分を超えかねない存在

    だから複雑な生まれのルリ王子と身分を超える力を持つヤタラが関われば問題として持ち上がってくるのはルリ王子の母親の処遇
    彼女はスードラであるけれど、別の見方をすればクシャトリヤの母親とも言える。なら他のスードラと同じ処遇とされるのはおかしいと言えるのかもしれない

    母親への不義を見過ごせず抗議したヤタラの言葉は果たしてルリ王子に届くのだろうか?

  • 悟りそうになると何かが起きてそれどころではなくなる、という繰り返しにも感じるが、この3歩進んで2歩下がるような構造そのものが修行なのかもしれない。
    アッサジの死は、改めてブッダの思想を深化させたわけだが、同時に故郷の滅亡という憂き目にも合う。あとスジャータもブッダに恋していて、ブッダまじでモテる。
    他方、コーサラ国ルリ王子と巨人ヤタラのエピソードも描かれる。奴隷の母から生まれたルリの屈折と、悲しき奴隷ヤタラの物語は、これからどのようにブッダと絡んでくるかちょっと検討もつかない。
    しかし、手塚のこの風呂敷の広げ方は大胆で惜しげもなくてすごい。手塚漫画といえば、基本的にうまくまとまらない事で有名だが、今回は伝記物で大枠のプロットが決まっているから大丈夫なのだろうか。少し心配になってきたが、全14巻の本巻はちょうど真ん中なので大丈夫なのだろう。

  • スジャータかわいい

    アッサジの最期がすごすぎる

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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