鉄くず拾いの物語 [DVD]

監督 : ダニス・タノヴィッチ 
出演 : セナダ・アリマノヴィッチ  ナジフ・ムジチ 
  • KADOKAWA / 角川書店
3.32
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988111246264

感想・レビュー・書評

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  • 貧しくも幸せに暮らしていたロマの一家。
    ある日3人目を身ごもってた妻が激しい腹痛に
    襲われ病院へ運びこまれます。診断の結果5ヶ
    月の胎児はすでにお腹の中で死んでいて大きな
    病院ですぐ手術をしないと母胎の命があぶない
    と言われてしまいます。しかし保険証を持たな
    いため高額な手術代を払えず主婦はにべもなく
    門前払いされてしまいます。ドキュメンタリー
    タッチで描かれた衝撃的な物語です。色々と考
    えされられた映画です。

  • ちっぽけな人間たちの苦悩、前向きに生きる姿に感動できる映画。

    ストーリーは非常にシンプルで、余計なものがそぎ落とされている。全くウェットではなく、淡々と演出されているところがまた、かっこいい。

    ボスニア・ヘルツェゴビナのロマの一家。
    屑鉄を売ってなんとか生計を立てている。

    夫は日々、屑鉄を拾う、車を解体する、まきを割る。
    真面目に働き、稼ぎは少なく、生活は厳しい。

    幼い子供たちは、そんなこと関係なくとても元気。
    これは父母が、貧しいながらも時に心からの笑顔を見せることから、家庭内の愛が確固たるものとして存在するからこそと観客にも伝わる。

    そんな中、妻に悲劇が起こる。

    この映画の最後は、バッドエンドでもないし、ハッピーエンドでもない。

    我々の人生と同じで、映画の中の登場人物にとっても、人生は単純なものではない。
    悪いことも良いこともあるし、時間が立つことで、良いことが悪いことだと思えたり、悪いと思っていたことが、結果として良いことだったり。

    人生には死以外の終わりはない。
    登場人物と同じで観客である我々も、その時々は、必死にもがいている。そして時間は、常に継続して流れている。
    後になって過去のことを振り返る時、その振り返り時点の状況に応じて、切り口が異なり、違う価値になる。

    映画としては「映画の時間」という枠があり、映画の終わりがあるのだが、その時間内に「お話しの落としどころ」を探るのではなく、続いていくであろう人生の一部を切り取り、その先にある何か、いままでにあった何かが存在することを表している映画なのだと思う。

    その意味で、ドキュメンタリーのような(なので、手持ちカメラ主体)リアル感は演出として非常に重要な意味を持つ。
    そして、実際にあった話を当事者が演じているのもこの映画の迫力、存在感の鍵を握っている。

    同じような演出としては、モフセン・マフマルバフ監督の「パンと植木鉢」を見たことがある。
    あの映画も事件の当事者が演じていた。ノンフィクションの前提で演じているうちにフィクションになってしまうような、複雑な構成になっていて、物語と現実のミックスにより、現実世界の怪しさ、物語の中にこそ真実がある、というような、ロマンチックな考え方も表されている、芸術的な映画だった。

    この映画は、本当にリアルに、ドキュメンタリーのように、「ただそこにある何でもない人生」を現物そのまま提示しようとする。(当然演出もされているはずだが、子供たちの自然すぎるふるまいなどにより、ドキュメンタリーにしか見えない)

    世界の中で、価値があるとして扱われていない人間が、当事者家族たちにとって如何にかけがいのない存在であるか、ということ。

    近所の親しい人たちと、社会に属する人たちとの、主人公に対する優しさの格差、ギャップ、近しい人たちは朴訥だが愛にあふれている。

    主人公と周辺の人たちが、木を切る、車を壊す、そのようなシーンが反復して現れる。斧や鋸による破壊行為であり、囲まれているモノを壊していくことで人生を進めるという、そもそもの人間が生きていく上での、過酷な状況を暗示しているようだ。

    余計な音楽などもなく、観客の感情を誘導することもなく、ここまで単純で力強い映画を作れてしまうことが凄いことだと思う。(予告編の印象よりも、本編はもっとシンプルで余計な味付けがない。)

    単純な映画だあることは、純粋な映画であることだと思う。
    何度見ても飽きない映画なのではないだろうか。

  • ボスニアヘルスビア映画。
    ロマ一家の実話の物語、見応えがあった。

  • 特に日本人は感情移入しずらいかもしれない

    独特の雰囲気は、当事者を出演させ演じさせたドキュメンタリー映画、だということから来ていて、えも言えず心揺さぶられる。

    映画は観て楽しいだけでなく、「何かを伝える」ために作られるものでもある、というストレートな作品。

    好きだとか嫌いだとか、退屈だとか暗いとか、そんな感想を求めてないのがいいです。

    夫「男のコーヒーだ」
    妻「強そう」

    この会話を入れてくれて、正直救われました!

  • 2013年 ボスニア・ヘルツェゴビナ=フランス=スロベニア
    監督:ダニス・タノビッチ
    ベルリン国際映画祭審査員グランプリ
    キネマ旬報 2014年度外国映画第53位

  • ノコギリってのは国や文化によって形状がすごく違ってますよね。ここでは押し切りで金鋸より大きなサイズでした。こう言ったちょっとした道具の違いは興味が湧きます。奥さんが作るボスニアの家庭料理も食文化が伺えてとても面白いです。映画というよりライブ映像を見ているような作りの作品で演者たちが役者とは思えないですねぇ。まるで演技には見えませんもの…
    明確な知識ではありませんがボスニアってかつてソビエトの一部であった国で連邦解体後は内戦とかで疲弊した国家という記憶が強いです。でも高速道路や病院もあり後進国とは言えない環境ですね。
    冬場でより殺風景な田舎の寒村での暮らしぶりは、選べるほど就職先もなさそうだし、技術や教養のない人間には厳しいとしか言いようもありません。保険制度がどれ位整備されているのかわかりませんが病気や怪我に直面することで突きつけられた過酷な現実を今出来る精一杯の努力で乗り切ろうとする誠実な態度は胸が痛みました。
    ただ誠意や努力だけでは救われる訳もなく、苦しむ伴侶の傍で為す術がない哀しさ、決して病院側が一方的に悪い訳でもなく。社会的な道理の儘ならなさを感じました。
    NPOとかが支援をしてくれたのに、それを断ってしまう理由を考えると悲しいです。
    貧困とは格も過酷な現実を孕んでいるんだな。
    個人が一人の社会の一員として生きていく事と国家や社会が国民のために整備出来る環境には、あくまでもルールがあって国民一人一人に対して万能に機能する訳ではない事を思い知るような作品ですね。

    観ていて苦しい事ばかりではないです。隣人や家族、NPOかNGOとかの職員、病院の関係者など救いの手を差し伸べてくれる人がちゃんといたことは救いでした。最期のコーヒーがとても美味しそうで少し気が楽になりました。

  •  戦争後のボスニアに住む家族を襲った出来事を当事者達が演じる。
     
     これ、役者でも何でもなくて当事者再現映像なんだよね。言語が違うので棒読みなのかどうかが分からないが、すっごい自然な演技に見える。
     戦争そのものの悲劇ではなく戦争後の民族問題による社会の混乱を描いているのが面白い。
     そういう中でも逞しく生きる人その人を描いた映画でもある。お父さん達の慣れた車の解体シーンに力強さを感じた。

  • 実話を本人が演じているという、いわばドキュメンタリー。
    音楽が全くなく、淡々と現実を映した映画。
    都市から離れた荒涼とした土地、雪景色が、現実の厳しさともの悲しさをリアルに感じさせる。
    日常が戻っても手放しでは喜べない、辛い現実が続くことを感じさせる終わり方だった。

  • ドキュメンタリーなのかと思ったけれど、実話を忠実に再現したドラマ映画でした。
    貧しくて保険にも入ってなくて、なぜそのような状況になってしまったのかが気になりました。

  • 貧しいモノに救いはない。

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