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感想・レビュー・書評
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第106回アワヒニビブリオバトル テーマ「音楽」で紹介された本です。ハイブリッド開催。@水野ゼミの本屋
2023.12.5詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
音楽史というものに今まで全く興味を持ってこなかったので、勉強がてら読んでみた。
初音ミクの全盛期である2007年〜11年はちょうど自分は学生で、周りもみんなニコニコ動画やボカロに夢中の時代だったから、どんな曲がヒットしてどんなふうに知名度を上げていったかは体感として分かっていた。だが、もっと広い視点で見た時に、ミクがヒットするために必要な、基盤となるさまざまなカルチャーが積み上げられて存在していたこと、最終的にパリのオペラハウスで公演までしていたこと、これが3回目のサマー・オブ・ラブと解釈できるという考え方があることなど、全く新しい視点からボカロを知ることができた。
今の日本の音楽シーンも未だに独特で、ボーカロイドの全盛期は終わったが、あのメロディに影響を受けた若者達が大人になり、ボカロのエッセンスが入っていないとは思えないような楽曲をたびたび耳にする。
米津玄師(ハチ)も未だに健在で、大衆的に人気になったという意味では今の方が絶頂期と言えるだろう。
今はニコニコ動画や2ちゃんねるも下火になってしまい、若者は当時とは全く異なるTikTokやYouTubeに夢中だ。
インターネットのカルチャーは数年単位でガラリと変化するので今後もどんなふうに変わっていくか全く想像が出来ず楽しみでもあるが、本書にも書いてあった、やたら細部に凝って職人芸のようにする「浮世絵化」の力を日本人は忘れないでいて欲しいと思う。 -
ギターのインストで一曲だけ作ったことがあります。コード進行はとある曲からお借りして、そこにメロディーをつけました。
いい曲ができたかというと、そんなことはありません。ただできただけ、完成した時、そんな思いでした。
それからも何回か曲を作ろうと試みましたが、どれも完成に至らず仕舞いです。自分は作曲に向いてないのだろうか、と思いつつも、こんな本を読むと、もう一回トライしてみたくなります。
いろいろ落ち着いたら、腰を据えて作曲やってみたいです。本書のようなDTMではなく、ギターインストですが。 -
2014年4月初版
柴那典 著
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ボーカロイド・初音ミクに代表される2007年に端を発したインターネットカルチャーの変化を、近代音楽史や、文化史との対比を織り交ぜながら綴った一冊。
すごい、よかったのは、当時の熱の真ん中にいた多くの人たちへの充実したインタビュー。何よりその人たちの生の発言に金言が埋まっていたように思います。
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今の教育システムは、「産業革命以降の社会」に適した人材、つまり工場での大量生産に適した人材を育てるカリキュラムが支配的になっている。そうではなく、「情報革命以降の社会」に適応した人間を増やしていくことに、社会の一つの活路がある。そこにクリエイティブの活性化が位置づけられる。
この先、音楽の原盤で儲けることはだいぶ難しくなっていく。でもお金以外にも自分の生きがいを見つけることはできる。それだけでもやる意義があるのかなと思うんです。お金という概念がいつまでも世の中の主流であり続けるかもわからないですからね。情報革命の行き着く先は、価値のパラダイムシフトだと思ってます。
未来というものが可視化できないと、人は未来に前向きになれないと思うんです。未来を具体的にイメージできないと、人は未来に対してポジティブになれない。かつての鉄腕アトムにあこがれて科学技術を志す人が生まれた。なので、音楽テクノロジーを通して未来をポジティブに設計していきたい。それに尽きると思います。
クリプトンフューチャーメディア社の伊藤博之氏との対談が、決まったーって感じで、爽快でした。
途中なかなか専門的な音楽のパートがあるので、僕はキーボ弾きなので読めましたけど、ちょっとご留意ポイントかと。 -
初音ミク=サード・サマー・オブ・ラブという見立てを当事者インタビューや現場への参加経験から丁寧に追った本。
初音ミクがある種の世界を変えたであろうことは理解できるんだけど、やはりボカロ文化圏自体インターネットコミュニティがベースにある以上、自ら関われる者たちだけの狭い世界で高速な新陳代謝を繰り返していくに留まるんだろうなという印象。