- Amazon.co.jp ・電子書籍 (397ページ)
感想・レビュー・書評
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■荒唐無稽――多事多難、
破廉恥――理不尽――予想外、
多弁――饒舌――豊饒――流麗、
知的――病的――破壊的………。
■【梗概】スミヤキ党の密命により工作員Qが、離島に建つ感化院に派遣されてくる。感化院の内情を探ったうえで、虐待されていると噂される院児たちを扇動し院内権力構造の転覆を計ろうというのだ。Qはそこで次々と悪夢のような経験をするのだが、やがて革命というには程遠いけれども院児たちによる自発的な騒擾が発生、結果、感化院は完全に崩壊、離島も荒廃してしまう。Qはやるべきことをやり終えたと感じ、多くの犠牲者を残したままひとり離島から立ち去る。
■物語はいたって簡単。Qはひとりスミヤキズム(マルキズムのパロディ)を体現する工作員だがそれへの解釈は皮相的、またQの言動は愚直で不器用。Qは赴任先の感化院で一方的に狂気めいた事態に巻き込まれるが、たいした活躍もせず、また成長も変化もしないまま当地をあとにするだけ――。
■それはともかく、作者の日本語が実に素晴らしい。毀つこと能わざる完成された美しさをつねに保っているといおうか。数々の比喩表現もいちいち肯綮に中っており感心しきり。お話は、食人や”手術”などグロテスクな場面が多く、院長、ドクトルの会話は哲学的に晦渋ではあるが、終始テンポよく快適な読書が楽しめる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白い部分はところどころあるが、いかんせん著者のマルクス主義の理解が不足しているように思う
作中に出てくる「スミヤキズム」はマルクス主義を連想させる内容になっているが、名称はフリーメイソン系のカルボナリ党(炭焼党)から来ているらしく、マルクス主義とは別物だと考えればいいのだが、作品内容としてはやはり「ブルジョア文学」にとどまっていると言えよう
もっともそのことは終盤で起きる革命を主人公が理解できないことにも表れているが…
ブルジョア革命とプロレタリア革命は全くの別物、正反対のものなのである、ということを改めて再認識した -
倉橋由美子さんの本の中で一番好き。不思議な世界。ちょっと尻切れトンボだけど。