真相 [Kindle]

  • ダイヤモンド社
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感想・レビュー・書評

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  • 偉大なボクサーであり、
    欲望に忠実な人なんだね。
    暴力、性、アルコール、ドラッグ、
    自由マインドな人間であり、
    ストリートからトップに登りつめるまでと、
    その後の凋落、再生、読み応えあった。
    無邪気で、
    金はあったらあった分使い、
    人間関係は損得にとらわれることなく付き合う。
    怖いけど、好かれる人なのかな。
    ピークを過ぎた後は、様々な中毒症状に、
    多くの人の支えで再生に向かう。
    人間らしさ、自分らしさとは、
    自分を抑制できる自制心こそが人間の証なのか、
    欲望に忠実であることが自分らしさなのか考えてしまう。

  • Kindleだから気付かなかったけど長い。
    そして、文才もある。
    転落が早い。麻薬好きすぎだろ。
    ボクシングはそんなに好きではない、自分のことはどーでもよくて、人のためが主の人だと思う。
    親の愛って大事だけど、人との出会いはもっと大事なんだな。

  • この本はなんと表現したらよいのだろう!?筆舌に尽くしがたいとはこのことだ。端的に言えば、ボクシングヘビー級の最年少統一チャンピオンとなったマイク・タイソンの自伝なのだが、全体を通じて、彼のサクセスストーリーではなく、人生の大反省、内観につき合わされ、それがあまりに凄過ぎる内容なので読んだ後もしばし呆然とする本である。

    その内容は本当に読んでもらうしかないのだが、のっけからニューヨークブルックリンの幼年期が強烈過ぎる。内向的な性格のタイソン少年が周りの環境にしっかりと教育されて、飲酒、薬、強盗、ケンカの限りを尽くし、12歳までに51回逮捕され、少年院送りとなる。そこでボクシングのトレーニングを本格的に開始し、伝説のトレーナーであるカスダマトと出会う。

    よくタイソンを語る際に「カスダマトが死んでからタイソンは無軌道になった」といわれるが、この本にはその真相が書かれている。つまりは逆、カスダマトがタイソンを無軌道な男に仕立て上げたことがその具体的な修行模様を通じて炙り出されていく。ここがこの本の前半の見所だと思う。まさにこの師匠にしてこの弟子あり。吉田松陰と高杉晋作を髣髴とさせる。やば過ぎる二人。

    タイソンの最年少ヘビー級王座奪取を目にせずカスは死去し、憂鬱なチャンピオン(タイソンは基本的には躁うつ病)は、無軌道の方向性を示してくれる司令官なく、「消費、女、薬」をモチベーションとしてその後の無敗伝説を作り上げていく。本当の意味でちゃんとトレーニングとモチベーションで臨んでいるのは、最初にWBCの王座になった時が最後で、あとは強烈にふしだらな生活の中でなおも無敗を続けていたのだから驚きである。

    そして、ついに、東京ドーム、バスターダグラス戦で統一王座から陥落する。同時にレイプ疑惑で逮捕、有罪となり、刑務所入りとなる。この刑務所での3年間の生活から復帰と再度の世界チャンピオン、そしてホリフィールドとの死闘、耳噛み事件、その後の「女と薬代を手に入れるための惰性のボクシング戦の数々」が第二の山場となる。この頃のタイソンのことはよく知らなかったので、暗澹たる気持ちの中で読み進めた。これほど人生の辛さや愚かしさをこちらの心にも感じさせる記述はなかなかないと思う。

    第三の山場は、引退後の超すさんだ生活、予想外の「ハングオーバー」のヒットからの芸能人としての再起、再婚と子供の急逝などを通じて自分を見つめなおし、一念発起でアルコール依存、セックス依存、ドラッグ依存の3重依存からの抜け出すための苦闘がこれでもかこれでもかとつずられる場面。読み進めていると、不思議と自分がそういう生活をしているような気分にさせられ、頭がおかしくなりそうになる。やはりこういう本はそうそうない。

    そして、最終章は、哲学書かと思わせるような自分の心の内側の描写が痛々しいほどに続く。3重依存も抜け出しつつある中でのプロローグ、そして、衝撃のプロローグ2。最後まで見るものを油断させない本であった。

    改めてこの本の、読んでいるときの感情の起伏は何なのかと思う。最初は自分とはまったく関係のない異物を異物として読み、途中から心理描写が増えていくため、だんだんと感情移入をしていき、そして最後は、自分あるいは人間の中に誰でもある欲の深さや愚かしさなどを見てしまい、タイソンへの嫌悪というよりかは自己嫌悪に陥っているのだと思う。こんなに感情をコントロールされる本は本当に珍しい。

    とまあ、そんなヤバい内容の本なのだが、救われるのが、全般を通じて、タイソンが極めて知的かつ自嘲的ユーモアに貫かれているという点である。辛い人生も「自分を笑う」という視点ひとつで、こうも面白くなるんだから、そういう心の態度が重要であるということが理解できる本である。

    とにかく、自分程度の文章力ではこの本のことは伝わらない。長く、辛く、どうにも愚かしい内容だが、それでも絶対に読んだほうがよいと思う一冊である。

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