[御堂おばけ]
ほんわかした気分で読了した。あるものはあるとして受け入れているように思えるバッチェル師のありようが、やはり愛しいと思った。最後の段落には、この物語とは独立して、頷いてしまった。締めくくりがこうなるのが、またよい。
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[宝の行方]
香炉の謎話、なのだけど、このエピソードに関しては、なんだかんだ言いもって、バッチェル師とワードル氏は仲良いよね、という話でよいのではないかと思った。それにしてもバッチェル師のいろいろと動じないこと……
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[インド土産のランプ傘]
物理的に痛い話でした。食欲がなくなりながらもやるべきことをやるバッチェル師は良い人だなぁ。
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[「ルブリエッタ」-「楡の杭」]
バッチェル師はどうも妙齢の女性に弱いというエピソードを含む話がふたつ並んでいて、ちょっと微笑ましかった。「楡の杭」の女性は、その女性なんですかね。
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[東の窓]
本書のなかの幽霊たちは、みな慕わしい存在なのだなと、水がしみ込んでくるようにわかってきた。この作品のなかに出てくる「三角形の友人」もまた。引用句を目にしたときに、「かれ」もまた閉塞した状況にあったことはわかるのだけど。
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[放牧場の怪]
積み重なっている時間の層のなかをたゆたい、不意に現れる存在があり、それは厄介なものかもしれないけれども、大きな恐怖の対象ともあまりならないような、そんな寛容な空気を感じました。酷い話だとは思うのですが。
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[深夜の納骨]
この先にどんな怖いことが待ち構えているのだろうと、どきどきしながら読み進んだところ、存外にイイ話だった。ほっこりすると同時に、自分の性格の悪さにちょっとめげる。
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[銀塩写真]
写真は何を写し、何を閉じ込めるのか。今となっては日々の生活から切り離せなくなったぐらい身近なものになったけど、写真がもつ力はやはり魅力的。