- Amazon.co.jp ・電子書籍 (269ページ)
感想・レビュー・書評
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なんだかとても好きな本。
なにが好きか考えてもよくわからない。川上未映子の描写が好きなのかも。
恋かなにかわからないけど、とても必要な存在に出会って、でもすごく薄いつながりで、どうしようもなくて。このおぼれていく感じや苦しい感じが、本人はきつそうだけど、こういう文体で表現されるとすごく美しい。生きている感じがして。
二人の会話も凄く素敵。
こういう会話はこの二人だけのもので、この二人でしかできないものなんだろうな。
痛々しくも物凄く美しい文体だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この物語の主人公は実存的な人間ではないし、周りの人間が実存的で、その人々が自分がどれだけ実存的であるかを語り、認めてもらいたくて、スポンジのようにその価値を吸収してくれる主人公に近寄ってきている。
この主人公は他人の意見を吸収はしているが、染まってはおらず、それって依存ではないけれども変化を求めているわけでもないのだよな、これって実存的なのか?と考えさせられる -
際立った出来事のない日常、それも世間でいうかもしれない微妙な年齢の、一人の女性のことを,興味をあまり感じないままに、でも最後まで付き合ってしまいました。
こんな風に暮らしている、過ごしている人はきっとたくさんいるだろうなあ…
本人ともその母親ともつかない意識のままに読み終えました。 -
映画のワンシーンのような冒頭1ページ目にやられてしまった。
往々にして、声が大きい人に注目が集まって、それが物語になりがちだけど、そうでないその他の人たちの静かな青い炎のような恋愛小説。
描写が美しく、セリフが秀逸なので、映像化したものも見てみたい。 -
ごく普通の、どちらかというと地味な女性の再生・成長のストーリー。女性の心情がとても丁寧に表現されていて感銘受けました。
ねっとりした感じ(上手く表現できていないかもしれませんが)に好き嫌いあるかもしれませんが、私は「丁寧」「読ませる」と感じて星5です。
主人公冬子と三束さんの関係を中心としたストーリー展開でとても良かったのですが、冬子と聖の関係性も興味深く読了しました。 -
美しいんだけれど、それだけじゃない。生々しい。生きている限り、綺麗な表現だけでは塗り固められない感情や、それによって引き起こされる綺麗じゃない事象もあるのだよな、と改めて。ところで川上先生の作品は初めて拝読した。心理描写の綿密さはもちろん、温度や色や触れたものの感触がこちらまで伝わってきそうな、生きた文章を書かれる方だ。なんだかイロイロ書いたけども、要約すると文体がとても好みで引き込まれた。先生の他の作品も拝読したいと思う。