すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 講談社
3.41
  • (28)
  • (45)
  • (45)
  • (20)
  • (10)
本棚登録 : 786
感想 : 63
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (269ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • なんだかとても好きな本。
    なにが好きか考えてもよくわからない。川上未映子の描写が好きなのかも。
    恋かなにかわからないけど、とても必要な存在に出会って、でもすごく薄いつながりで、どうしようもなくて。このおぼれていく感じや苦しい感じが、本人はきつそうだけど、こういう文体で表現されるとすごく美しい。生きている感じがして。
    二人の会話も凄く素敵。
    こういう会話はこの二人だけのもので、この二人でしかできないものなんだろうな。

    痛々しくも物凄く美しい文体だと思う。

  • この物語の主人公は実存的な人間ではないし、周りの人間が実存的で、その人々が自分がどれだけ実存的であるかを語り、認めてもらいたくて、スポンジのようにその価値を吸収してくれる主人公に近寄ってきている。
    この主人公は他人の意見を吸収はしているが、染まってはおらず、それって依存ではないけれども変化を求めているわけでもないのだよな、これって実存的なのか?と考えさせられる

  • 孤独な女性が初めて人を好きになり、自分の欲を知り、苦しみ、発露して、産まれて初めて人と関わろうと努力したけれど、結局、恋は実らなかった。
    それでも前を向いて地に足を付けて、その経験を糧に生きることができたのは、苦しいときに自分をさらけ出して、できるだけのことをしたから。
    その恋は実らなかったけれど、これから先は違う恋が待っているかもしれない。恋だけじゃなくて、色んな人との出会いがあるかもしれない。主人公にとって、それを楽しみにできる今の自分が生まれ変わったようなのかもしれない。
    傷つくことを恐れて何もしないなんて人生じゃないんだなって思った。傷ついても、それを受け止めて人と関われば、それが強い結びつきになる。友情になり、愛情になる。
    結果は伴わなくても、得るものがある。
    だから何も怖がる必要はないのだと気づかせてくれる一冊だった。

  • 際立った出来事のない日常、それも世間でいうかもしれない微妙な年齢の、一人の女性のことを,興味をあまり感じないままに、でも最後まで付き合ってしまいました。
    こんな風に暮らしている、過ごしている人はきっとたくさんいるだろうなあ…
    本人ともその母親ともつかない意識のままに読み終えました。

  • 映画のワンシーンのような冒頭1ページ目にやられてしまった。
    往々にして、声が大きい人に注目が集まって、それが物語になりがちだけど、そうでないその他の人たちの静かな青い炎のような恋愛小説。
    描写が美しく、セリフが秀逸なので、映像化したものも見てみたい。

  • ごく普通の、どちらかというと地味な女性の再生・成長のストーリー。女性の心情がとても丁寧に表現されていて感銘受けました。
    ねっとりした感じ(上手く表現できていないかもしれませんが)に好き嫌いあるかもしれませんが、私は「丁寧」「読ませる」と感じて星5です。

    主人公冬子と三束さんの関係を中心としたストーリー展開でとても良かったのですが、冬子と聖の関係性も興味深く読了しました。

  • 美しいんだけれど、それだけじゃない。生々しい。生きている限り、綺麗な表現だけでは塗り固められない感情や、それによって引き起こされる綺麗じゃない事象もあるのだよな、と改めて。ところで川上先生の作品は初めて拝読した。心理描写の綿密さはもちろん、温度や色や触れたものの感触がこちらまで伝わってきそうな、生きた文章を書かれる方だ。なんだかイロイロ書いたけども、要約すると文体がとても好みで引き込まれた。先生の他の作品も拝読したいと思う。

著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上未映子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
川上未映子
有川 浩
村上 春樹
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×