川はどうしてできるのか 地形のミステリーツアーへようこそ 藤岡換太郎〈地球の謎解き〉シリーズ (ブルーバックス) [Kindle]

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  • 多摩川の水源から上流・中流・下流を旅する。
    急峻な日本の上流は、川の流れが速く、また滝も多い。
    天竜川は、1700万年前、日本列島が大陸の縁にあったとき、ロシアのウスリー川から現在に信濃川、天竜川までつながっていたという仮説。
    1500万年前頃から日本海が拡大し、フォッサマグマがつくられて、それぞれに分断される。
    また、南米のアマゾン川は2億5000万年前の超大陸パンゲアがあったとき、南米大陸はアフリカ大陸とつながっていた。そのとき、アマゾン川はアフリカ西部のニジェール川とつながっていて、逆の方向、西へ流れていた。
    2,000mを超える大河は、アフリカ大陸、南米大陸、北米大陸に三つずつある。
    オラーコジンの大陸分裂の考え方に沿えば、大陸には三つの大河ができるという仮説が符合する。
    源流から流れ流れて海に注いでも、海底の川を流れて、海溝へたどり着き、また陸上の一滴となる。
    地味だが、壮大な川の輪廻、面白く読みました。
    「山はどうしてできるのか」「海はどうしてできたのか」「川はどうしてできるのか」、藤岡さん3部作完読しました。
    どれも、とてもよみやすく、楽しく読めました。

  • 予想外の面白さに驚きながら読み終えた。

     ヒマラヤの北側から4000m級の山脈を越えて南のガンジスへ合流する川。砂漠に起こる洪水。笠取山の分水嶺の話もドラマチックだ。秩父市と甲州市の境にある小さな三角錐の分水嶺の、秩父市側へ落ちた雨水は荒川へ、山梨市側に落ちた雨水は笛吹川へ、甲州市側へ落ちた雨水は多摩川へと分かれるという。
     そして、海底を流れる川「海底谷」。川は源流から下って海へ辿り着いたところでその旅を終えるのではなく、海底谷をさらに流れ海溝へ注ぎ込む。太平洋にある日本海溝の最も深い場所は水深9200mあり、富士山に降った雨が川となり終着点である日本海溝へ辿り着くまでの最大落差は1万2976mにもなる。
     
     川の流路やずれの話から、数億年という長い時間の中で衝突し引き裂かれる大陸の姿が見えてくる。
    川が山々から削り取って海へ運ぶ堆積物がプレートの運動で海溝から地球内部へ、それが火山活動で再び地上へ戻り山を作る話に、地表のみならず海底や地球内部を含め活発に活動を続ける地球の胎動を感じる。

     漢詩や芭蕉、井上靖の「洪水」への言及など、地学だけに話がとどまらないところも良かった。多摩川の源流から河口へと辿る旅では、笠取山の険しい山道を登って山頂から関東平野の絶景を見晴らし、沢伝いに急斜面を下り、滝でごうごういう水音を聞き、青梅市役所のカツカレーを一緒に食べている気分になった。著者の豊かな見識と人間的な魅力がこの本を一層面白くしているのだろう。

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著者プロフィール

ふじおか・かんたろう
静岡大学防災総合センター客員教授。1946年京都市生まれ。東京大学理学系大学院修士課程修了。理学博士。専門は地球科学。東京大学海洋研究所助手、海洋科学技術センター深海研究部研究主幹、グローバルオーシャンディベロップメント観測研究部部長、海洋研究開発機構特任上席研究員を歴任。「しんかい6500」に51回乗船し、太平洋、大西洋、インド洋の三大洋初潜航を達成。海底地形名小委員会における長年の功績から2012年に海上保安庁長官表彰。著書に『山はどうしてできるのか』『海はどうしてできたのか』『川はどうしてできるのか』『三つの石で地球がわかる』『フォッサマグナ』『見えない絶景 深海底巨大地形』(いずれも講談社ブルーバックス)など。


「2022年 『天変地異の地球学 巨大地震、異常気象から大量絶滅まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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