新訂 孫子 (岩波文庫) [Kindle]

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  •  昔戦争が当たり前の時代に、いかに負けないようにするかのノウハウをまとめたもの。現代で戦争に直面する機会はないが、その戦略的な考え方はビジネスなどにとても参考になる。

     孫子は全部で13編に分かれている。内容は好戦的なものではなく、とても現実主義的で合理的判断を推奨している。最も語られているのが、戦争に際して主導権を把握することの重要性だった。

     「戦争をはじめる前によく考え、よくよく検討するべき」とまず語られる。これを十分にやれば、行動する前に勝敗を知ることができ、リソースを無駄にすることがないよと言っている。

     もし戦うとしたら、戦うのは「勝てるとき」だけ。勝てるときとはこちらの準備が万端で、あいての準備が整わず隙があるときだと述べている。さらに、戦争はうまくいってなくても短期間で終え、長びかせないことが大事だと述べている。無駄にリソースを割くと悪循環におち入りいいことがない。

     最高の勝利とは、戦わずに勝つこと。戦って勝つのは2流のすること。戦わずに勝つには「味方の状況、敵の状況をよく知り、ここぞというタイミングで攻め、戦わずに降伏されること」と説明している。有名な「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」。

     行動するときは、まず守備を固めじっと待つ、そして余裕が出てきてから攻める。また、あいてにこちらが守備を固めていることや攻めようとしていることを悟られてはいけない。無駄に準備させ、惑わし、隙を作れる。自分達の行動を判断するときは、誰でもわかる状況では遅い。どうなるか分からない時に読み取り判断する。なので最大の功労者は何もしていないように見られ、周りから評価されにくい。

     戦争は先に有利な行動をした方が勝つ。「風のように迅速に進み、林のように息をひそめて待機し、火の燃えるように侵奪し、暗やみのように分かりにくくし、山のようにどっしりと落ちつき、雷鳴のようにはげしく動き、食料を集めるときは兵士を手分けし、土地を奪ったときは要点を守らせ、万事についてよく見積もりはかったうえで行動する」とある。遠く時間や労力がかかる道も、近道や簡単に結果が出せるよう考える。

     偶然に頼らず、つねに合理的に考え、準備を怠らないこと。正攻法と奇策を使い分け、臨機応変に対応する。どんなことでも主導権を握り、主体的に行動する。仲間と協力しなければ戦争は勝てない。チームの助け合いができる態勢を普段から整えておくこと。

    感想
     孫子を読んで、ビジネスで大事なことが凝縮されていると思った。軍を動かすことは、会社を動かすこと。感情的に判断してリソースを無駄にしてしまっては損害が大きくなる。行動する前に熟慮することが大事で、十分な準備をしておくことなど。今も昔も勝つための考えや行動は変わらないんだなあと思った。

  • 奥が深く、難しい。何度も読み返して、理解するべし。

  • 一番びっくりしたのは兵を使わずに相手を屈させるのが最も有効な戦術だとしているところだ。戦いのための戦術はおまけ程度にしか書かれていない。

  • 将の能にして君の御せざる者は勝つ。

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著者プロフィール

1920年、三重県生まれ。東北帝国大学法文学部支那哲学科卒業。文学博士。東北大学名誉教授、追手門学院大学名誉教授、日本学士院会員。2003年、勲二等瑞宝章受章。著書に、『秦漢思想史研究』(平楽寺書店)、『管子の研究』(岩波書店)、『淮南子の思想』(講談社学術文庫)などがあるほか、訳書に、『論語』『荀子』『荘子』『韓非子』『孫子』『大学・中庸』(いずれも岩波文庫)など多数。2006年、逝去。

「2022年 『死と運命 中国古代の思索』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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