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感想・レビュー・書評
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若い頃に読んだとき、言行一致をみずからの生命より優先する究極の「不器用さん」の話だと解していた。
しかし塩野さんの『ギリシア人の物語』を通して、民主制の悪い側面ばかりが露出しはじめたこの頃のアテネの時代背景を知った今、自らが思想的に退けていたはずの民主制、民衆に裁かれるソクラテスの絶望に思いをいたさずにはいられない。
圧倒的な知力、智力の差ゆえに、何をどう話しても理解されないならばいっそ、本作のソクラテスのように、裁判員たちがどう受け止めようと一切斟酌せず、思うままを論じて潔く死にゆくほうを選ぶ、そんな絶望である。
賢人と評される人々を訪ねて行っては逐一論破していくソクラテスに社会性があったかと言えば無論、ない。しかしこの死に様は彼の社会性の欠如ゆえではない。
だいたい、この法廷で、他の被告人と同じようにソクラテスが家族を連れてきて情状酌量を求め泣き落としなんぞしていたら、あるいは脱獄を説得する旧友クリトンに従っていたら、現代まで続くソクラテスの名声はなかったわけで、彼はこのような死に様を選んだがために、ある意味で「後世」に生きたのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今の常識に照らせば、「まあソクラテスも社会性なくて非がないとはいえない」って感じだけど、彼の「無知の知」が無ければ現代は違う形をしていたと思う。
ソクラテスの正統性と社会の正統性、その均衡点を今でも人は探し続けてるのかな。 -
国が悪いとか、制度が悪いとか、ただ不満を言うだけではなんの解決にも繋がらない。
本の趣旨とは離れるけど、こう言う言い回しって言うのもあるのか。
「われわれの主張は、はたして本当でないであろうか。なぜといえば、われわれはお前を産みおとし、扶養し、教育しまたお前やその他すべての市民に、われわれの掌中にあるあらゆる良きものを分け与えたものだが、それにもかかわらずわれわれは、これを望むどのアテナイ人に向ってもこう宣言しているではないか.彼が一人前の市民となり国家の実状やわれわれ法律というものを観察したときに、もし万一われわれが彼の意に適わないようなことがあれば、その時彼はその全財宝を携えてどこでも好きなところへ行くことを許される」 -
自分の生涯をも含めて、細かな一つ一つの事象ではなく、その内にある真理をみていたソクラテスの問いは、正しいこと、善いこととはどうあるものなのかを、改めて考えさせてくれた。
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昔々のその昔にいたひろゆきがずっと論破する話
良き人生を送るために最後まで信念を貫いた男
言ってることは割と普通だけどなかなか人にはそれができないのでそれができたソクラテスはかっこいい
彼の無知の知は好奇心の塊
知っていたら興味は湧かない何も知らないからこそ興味を持てる
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読んでもないのに、「ああ、無知の知ね」と分かった気になるにはもったいない。本書の魅力の70%は、要約しがたいスタイルにある。70を超えたジジイが、最後の最後までブレずに噛みつき続ける姿に、「自分の頭で考えるとは何か?」という問いを叩きつけられる名著。
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クリトンのみ
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難しい本でした。
死を前にしたソクラテスが堂々とした態度で語っていたので、いつか自分が死ぬ前にもこうありたいなと思いました。
若干脚色されているのかもしれませんが、ソクラテスは一本筋の通った人だった気がします。そういう人はかっこいいですね。
心に残った部分
・知らないことを知っている
・死は一種の幸福である
・単に生きることではなく良く生きること
・良く生きること、美しく生きること、正しく生きることは同じ -
皆さん大好き「無知の知」の哲学者ソクラテスの死刑判決を出した裁判の様子を描く。
ソクラテスパイセンの死生観が達観しすぎていて最高にかっこいい。ロックです。 -
かの有名なソクラテス問答法を見ることができる一冊。
例えば、ソクラテスが若者を邪悪な道に導いているという嫌疑に対し、告発者への問答を通じて、自分にはその動機がないことを、告発者自身の口から出た言葉により証明させてしまった。(十三)
しかし、限られた時間の中では、さすがのソクラテスでも十分な問答ができなかったのだろうか。所々説明不十分と思われる部分があり、相手にしゃべらせることなく、一人で話を進め、完結させてしまうところがあった。時間さえあれば、告発者は反論したい部分があったろうし、それに対してソクラテスも説明することができたろう。