オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 気持ちとしては3.5くらい。米原万里さんが書かれるディテールはいつも色鮮やかだ。
    この小説に書かれている通りや建物に行きたいのに、もう行けない。

  • ロシア語通訳だった米原万里さんの唯一の長編小説。寝不足になるほど、夢中になって読んだ。

    主人公は中年のロシア語通訳で離婚子持ち女性 。少女時代の1960 ~64年 、チェコスロバキアに在住 、プラハのソビエト大使館付属八年制普通学校へ通っていた。そこには、オリガ・モリソヴナという老女のダンス教師とエレオノ ーラ ・ミハイロヴナというフランス語教師がいた。モリソヴナはだみ声で厳しい指導を行い、エレオノーラは少し呆けが始まったのか、主人公を見ると「お嬢さんは中国の方?」と何度も聞く。
    42才になった主人公は、この2人の謎を解きにソビエト連邦崩壊翌年の92年にモスクワを訪ねる。本作は、その数日間を中心に描く、一種のミステリー小説とも言える。

    本作が主な舞台になるのは、37年当時のスターリンによる大粛清下のロシア、60年代のプラハ、そして92年のモスクワ。スケールが非常に大きい小説だ。特に大粛清時代、オリガとエレオノーラがどうやって生きてきたのか?情け容赦ない描写が続く。そして、この2人の消息は?寝不足になる要素はいくらでもある。

    反語法とは、人を罵倒するとき、逆の表現を使用すること。
    「ああ神様 !これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう 。長生きはしてみるもんだ 。こんな才能はじめてお目にかかるよ !あたしゃ嬉しくて嬉しくて嬉しくて狂い死にしそうだね ! 」
    本作はオリガのこのセリフで始まる。小説のつかみからラストのページまで幸せな読書体験ができた。

    米原万里さんのノンフィクション「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」と合わせ、絶対に読んで欲しい★5つ。

  • 最初はオリガ・モリソヴナの強烈なキャラクターに惹かれて読み始めた。
    読後、色々と考えはあったけれど結局はスープの出汁にされた七面鳥の気分になった。

  • タイトルからは予想できなかったが、いわゆるミステリーというか謎解き物語に分類される小説だった。

    ベースにあるのが著者自身の体験だが、登場人物の来歴は恐らくフィクション。謎が幾重にもなっており、どこまでが事実ベースでどこからがフィクションなのか考えながら読むのが楽しかった。

  • さあやってまいりました、ついに配信300回!今回は言語学者であり「白と黒のとびら」の著者の川添愛先生をゲストにお迎えしてのスペシャル回です!!恒例のオススメ本は米原万里の「オリガ・モリソヴナの反語法」を選んでいただき、知られざる歴史の悲劇と人間関係の面白さとを絶妙かつドラマチックに描き出す魅力を語っていただきます。さらに直近の著作、さらにさらに出版間近の新作も踏まえ、創作の原動力にまつわる裏話や今後の創作活動についてもお話を伺います。難解な科学理論とファンタジックで絵本的な世界とを融合させてしまう発想と手腕に、タナカとナリタは感心させられっぱなし!物語が生まれる面白さが散りばめられたスペシャル回、どうぞお楽しみください。

    2:08〜 ゲスト登場ー言語学と創作のきっかけ
    27:44〜 紹介本ー謎と歴史とストーリーテリング
    51:40〜 「働きたくないイタチ〜」とAI研究最前線
    1:18:33〜 創作についてー専門性とコンプレックス
    -
    ホンタナPodcastエピソードNo.300:
    2017.11.7 祝300回!言語の物語をたっぷり語ろうスペシャル
    http://hontana.info/2017/11/07/2017-11-7-300lg/

  •  もしタイトルで読むのを躊躇っている人がいれば、自信を持っておすすめしたい。
     わたしはこの本のおかげで「社会主義」や「ロシア」という国に興味が湧いた。
     本の役割は歴史からこぼれ落ちた物語を語るものだと書評されていたのを思い出し、その通りだと共感した。

  • 重い歴史と軽快なセリフ達が上手く絡み合って一つの大きな話が出来上がっているといった感じ。文章が綺麗でとても良い。こんなにもパワーを貰える作品はあるのかとため息が出る。

  • 1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか。感動の長編小説。第13回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作。

  • 誰にでもおすすめってテイストではないけど楽しく読めた。

  • オリガ・モリソヴナはプラハのソビエト学校に実在したダンス教師。著者もノンフィクションで書きたかった、とコメントしたくらい虚に実が入り混じる。物語が進むごとに明らかになるその秘密に惹きつけられる。スターリンの粛清の嵐が吹いた時代、鉄のカーテンの向こう側を垣間見る名作です。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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