読書の旅 愛書家に捧ぐ (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ブク友さんのお勧めで読んでみたが、これは面白かった。
    奥付で1984年初版と知り、のっけからちょっとした衝撃。(最初に奥付を見るのです)
    古さをほぼ感じることなく、終始わくわくして読んだからだ。
    あえて言えば「ビブリオマニアの旅行記」と言ったところ。
    体験型読書の話が次々に登場して飽きさせない。
    笑ったり感激したりしながら巻末まで来て、また衝撃を受ける。
    多数の書名案内と索引があり「え?こんなにあったの?」となる。
    たぶん読みながら私も一緒に読書の旅をしたのだろう。

    全部は読めないし読まないと分かっているのに、本屋さんに行くたび買ってしまう。
    手ぶらで帰るのは納得できない。一体これは何なのだ?
    「いや、読もうと読むまいとどうでもよろしい。
    私は本棚に本を並べるのが好きなのだ。それも格好いい本を」
    著者の考えが収集家の言い訳のようにも聞こえて笑ってしまう。
    そんな話の間にも聞き覚えのないたくさんの書名が登場し知の旅はすぐに始まる。

    「敦煌」を読んだら中国に行き、「死者の書」を読んでエジプトに行く。
    このフットワークの良さ。
    旅の間でも知的好奇心はやむことがない。
    インドのヨーガ行者にマンダラの壁画を教えてもらい、帰国後自身の本棚の前でこう述懐する。
    「なんの関連もない本が並んでいるようでも、これが私のマンダラだ。異質なものどおしの繋がりを見つけ、因果を探求するのが読書の楽しみである」と。
    ここはもう、殆どの皆さんが賛同することだろう。

    欲しい本をめぐって古書店の店主と喧嘩する場面でおおいに笑い、独歩の「武蔵野」の風景がどこにも見られないことを一緒に嘆く。
    そして心ふるえる場面もあった。
    塙保己一さんの業績について考察している箇所があるのだ。
    盲人でありながら万巻の書を読破し「群書類従」という一大書物をまとめあげた人だ。
    牧野富太郎さんを「敬愛する」と書いたが、塙保己一さんには「敬愛」の「愛」をつけられない。「敬」の上にも「敬」だけだ。
    散在した書物の行く末を心配して、集めた書物が1270余り。
    それを丹念に校訂して版木に掘り、665冊にまとめあげた。
    現存する版木に出会う場面は実に感動的だ。
    イースター島でロンゴ・ロンゴ(モノ言う板)に出会うところから始まり「群書類従」を入手するまでが、まさにときめきの流れだ。ここだけでも読んでほしいくらい。

    読書に関する蘊蓄もさることながら、本から触発された旅とその行程での知の旅の魅力がとてつもないものがある。
    きっと読まれた皆さんも著者と共に旅をすることになるだろう。
    「愛書狂」を笑われても一向に屈しない、底抜けの明るさ。
    自分だけのかけがえのない一冊を探すのだ。それは多いほど良いという。
    書物に書かれていることをただ理解するだけではなく、書物そのものを深く愛する「旅する愛書家」の本。
    本は楽しく味わうものと教えてくれる。これは面白いですよ。

    • nejidonさん
      goya626さん。
      そうそう、その方です!
      中江有里さんの本も本棚に入ってますよ。
      児玉清さんを大変尊敬していらしたんですよね。
      ...
      goya626さん。
      そうそう、その方です!
      中江有里さんの本も本棚に入ってますよ。
      児玉清さんを大変尊敬していらしたんですよね。
      児玉家の大量の蔵書は、今どうなったんでしょう?
      2020/10/30
    • goya626さん
      そのままだと家が傾きます。まじで。む、床が補強してあったりして。
      自宅が児玉文庫になるか、どこかに寄贈かですかね。
      そのままだと家が傾きます。まじで。む、床が補強してあったりして。
      自宅が児玉文庫になるか、どこかに寄贈かですかね。
      2020/10/30
    • nejidonさん
      goya626さん。
      ふふふ、一般に公開してくだされば良いのに。
      まぁそれも難しいか。寄贈が一番無難でしょうか。
      児玉さんの本もぜひお...
      goya626さん。
      ふふふ、一般に公開してくだされば良いのに。
      まぁそれも難しいか。寄贈が一番無難でしょうか。
      児玉さんの本もぜひお勧めです!
      2020/10/30
  • 高校、大学入試の現代文で頻出だった著者。
    改めて読むと、美しい日本語と透けて見える圧倒的な
    読書量に圧倒される。

    知識を得るための実用的読書ではない、
    読書をしてみたくなった。

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著者プロフィール

1925年東京生まれ。東大文学部哲学科、同大学大学院社会学科を修了。朝日新聞編集委員などを歴任したのち著述に専念。旅を趣味とし、そのエッセイ・評論はユニークな洞察と巧みな筆致で多くの読者の支持を得た。

「2023年 『ニジェール探検行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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