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感想・レビュー・書評
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新聞(日経)の記事を見て、さっそくに読む
尾崎方哉が病み果て、小豆島で最晩年の8ヶ月を過ごす
はちゃめちゃですさまじい、情景と心象を
吉村昭氏が自身の病歴の経験を踏まえて、描き浮き出させている
天才は偏るよなあ
やっぱり吉村氏はすごい筆力だ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自由律俳句「咳をしても一人」で有名な尾崎放哉が晩年放浪の末に小豆島に渡ってから41歳で死ぬまでの八ヶ月ぐらいを中心に、その生涯に迫った小説。ドキュメンタリーなのか小説なのか分からなくなってしまうような作品を書かせたら右に出る者がいない吉村昭の作品。尾崎放哉って実はこんな人だったのか・・・と結構驚きの内容です。
結核にかかり、仕事と妻を捨て(いや、仕事はクビだし、妻からはある意味見捨てられ)、台湾にでも行こうとおもいつつ俳句仲間にすがって夏に小豆島に辿り着き、お遍路の庵で病状が悪化していく。そして最終的に翌年の4月に息絶えるまでの約八ヶ月。著者の吉村昭自身が若い頃に結核で死線をさまよった経験があるようで、尾崎放哉が結核で苦しんでいく描写が、あたかあも本人の体験談のようにリアル。吉村昭はこの結核のことがあって尾崎放哉を書こうと思ったらしいが、調べれば調べるほど尾崎放哉の(晩年の)ダメさが見えてきたようで、繰り返し放哉の酷い所業の描写が織り込まれている。結核の話し以外は、ほとんどは酒とお金の話し。あと俳句が少々。もともと東大法学部出でエリートだった放哉は、仕事を止めお金が無くなり放浪しながら病気になっても、プライドは十二分に高かったようで、結局、それが病気を悪化させていったような面がなきにしもあらず。酒癖に悪さもピカイチ。本書を読んで、何だかんだといっても、人間にはお金と仕事は大事だなぁ、と思わされた。プライドや俳句だけじゃ食っていけない。でも、結核と貧乏が、放哉の晩年の俳句の鋭さを磨いたのは事実かもしれない。