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感想・レビュー・書評
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図書館と本というハードが用意されているのに「みんなでつくろう」って何?
読む前はそう思っていても、読後はがらりと図書館感が変わる。
その道30年のベテラン司書さんが、高校の図書館を活性化させていく様子や、今後の課題などを熱く熱く語ったのが本書。
著者の成田庸子さんと言えば↓↓「高校図書館デイズ」を書かれた方。
https://booklog.jp/users/nejidon/archives/1/4480689842
図書館は司書や図書委員がつくるものではなく、生徒みんなでつくる「自由な場」であるという。ひとつの例で、勤務先の札幌南高校の図書委員がつくった「図書館のしおり」が先ずあらわれる。ここだけでもう驚かれるかと。
ちなみに、全ページの左下に書かれた犬のパラパラ漫画も生徒の作品。
俯瞰した館内の様子がまるでワンダーランドさながらの楽しさだ。
入り口から順に①「ようこそ図書館へ」から⑮「本が読みたい、でも何を読めば・・」まで、思い思いに利用している様子が描かれている。その楽しそうなこと。
当たり前だが、図書館は利用するひとによってつくられる。
図書館は人が出入りすることで輝く。そして利用するひとも輝いていく。
囲碁・将棋コーナーをつくり、図書委員の手づくりポップで本の魅力をアピールする。
印象に残った一文を書き出した「しおり」をつくっておく。つくるのは生徒たち。
面白いと思ったことのひとつに「図書館でイヴェントを行う」というものがあった。
書道の先生には「蔵書印をつくろう」として篆刻を教えてもらう。
美術の先生には「手製本をつくろう」数学の先生には「パズルを楽しもう」等々。
教室と図書館を近づける工夫って、結構あるものだ。
「図書館報」の作り方と、札幌南高校の具体例も載っている。
あえてカウンターにリクエスト用紙は置かないらしい。
用紙があると事務的に処理されておしまい。「あのう・・」という声を待っている。
会話があれば、目当ての本がなくても希望に近い本を探せるかもしれない。
携帯小説が出始めた頃、購入希望の女子がカウンターにあらわれたという。
すると居合わせたひとりの男子が「持ってるから貸してあげる」という。
更に「学校の図書館に入れる本と入れなくてもいい本がある」
「携帯小説はいらない。だって他にもっと入れなければいけない本がある」
とまで言い、司書さんの出番もなかったそうだ。やるなぁ、この男子。
司書さんは成績で評価しないし、プライバシーにはじゅうぶん配慮する。
何を読めば良いか分からない場合でもあなた好みの本をみつくろってくれる。
本がなければ、またそれについて聞く場所がなければ、考えたことをこれでいいかどうか聞く人がいなければ、知の再生産と発展は生まれにくいのだ。
ここまで出来るのかと羨ましい気持ちもわいてくる。
公共図書館で出来ることとは違うだろうし、同じ学校図書館でも小学校や中学校でもまた違うだろう。それでも図書館に対して能動的に働きかける姿は参考になるかと思う。
予算や人員のことはさておいて、「図書館」とは発展する可能性を秘めた場なのだと、大いに考えさせられた。
子どもたちの学校図書館の中には、物置と化しているところもある。
生徒指導室代わりに使用されたり、部活動の場となったり。
そもそも何十年も前の本が傷んだまま放置されてはいないか。
「本を読みなさい」と子どもに言う前に、大人も現場を見た方が良いかも。
と、ちょっとエラそうに言っておしまいにする。
とても良い本なのでお勧めです。(本書は購入できないので、図書館で借りてね)
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