大事なことほど小声でささやく (幻冬舎文庫) [Kindle]

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  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • 森沢明夫 著

    『大事なことほど…』タイトルに惹かれて、
    手に取った本。森沢明夫さんの本を読むのは実は初めて…(^^;;
    後から知ったのだけど、随分前に高倉健主演の『あなたへ』の映画
    (テレビで観たんだっけ?)この作品も
    森沢明夫さん原作だったんですね。
    記憶は朧げだけど、高倉健さんらしい役柄で静かで結構好きな作風だったように思う。

    本作のタイトルからは然して大したことじゃないように小声でささやく聞き逃しそうな言葉が、結構重要で肝心なことだったりして…って意味なのかなって想像して読みました。

    別々の人生を歩く人達がたまたま、趣味か健康維持や体力作りの為か、出会ったスポーツジムで馴染みの顔になり仲間意識が広がって、互いに心通わしていく事が楽しくその場所だけは、普段の生活とはかけ離れたような空間を持てる、本来の日常生活の姿とは違った人間のように生きられる空気を纏っていて堅苦しくなく自然体で息抜き出来る6人の人物像やそれぞれの人生に於いて抱える事情を交えて、ハートウォーミングな小説に仕上がっていました。

    震える感動作というよりも優しい物語り…
    特別な意外性もなく何が起こるのだろうとハラハラさせる緊迫感はない(ま、ミステリーじゃないから、その先に待ちうける衝撃的な事柄に緊張感を持って読む本ではないんだけどね(^^;;
    とにかく、登場人物の皆んながいい人たちなんですよ!「なぁ〜んだ!嫌な奴だと思ってたら、案外いい人じゃない‼︎」という安心して、ガッカリする、いやホッとする話し。
    それだけでなく、最初から最後まで、いい人達の集まるホッコリする作品なんです。

    古い言い回しだけど、
    ”顔で笑って心で泣いて…”を実践しているような物語で、これからどうなってゆくんだろう…気になって仕方なくて本を置けない内容ではないけれど、人情ものか…と切り捨てる訳にはいかないものが確かに存在する。
    あ、そッ…と言いながらも感慨深く読後の本を置いて、それでも生きてゆく上で人情ってものが、
    どんなに大切かフト思い出させてくれる作品でもあった。
    実際、生きてる中で、その人情ってやつにどれほど救われたことか…。
    本作は、オムニバスの形式でそれぞれの人物が主人公になって紡ぎ出される連続短編集で読みやすい。

    オムニバス形式で追加される7人目の主人公に仕立てて、本作を読んでレビューを書いている私自身の思い出の頁を振り返える…学生時代の頃から、職も職場も違ってしまい、なかなか会えない気心知れる女友達4人で近場の旅館に一泊して、近況や身の上話しにワイワイと花を咲かせてたあの頃、
    まだ22、23歳くらいのことだと思う。
    以前から不思議な博士と揶揄されていた一人の友達が、唐突に「悲しみのバロメーターがあったら、私はこの中で、いや、この世で一番悲しみのバロメーターが高い!」と言い出した。
    「何、それ?」「自分が誰より一番悲しい、悲劇のヒロインってやつ⁉︎」他の3人は私の返しに吹き出した。
    「若い時は悲しいことがあったら、今この世で一番悲しんでるのは私だ!って思うものなんじゃない」しかし、彼女は頑として
    「違う!ここに悲しみのバロメーターを測る機械があったら、私の悲しみの値は一番高い値を指しているはず」と真顔で言い張る!「悲しみのバロメーター測るヤツ〜って(◎_◎;)?」発想自体は滅茶苦茶ユニークだけど…そんなの測れる訳ないし自分で勝手に思い込んでるだけやん」と食い下がった(この辺りから既に若いε-(´∀`; )
    「君のようなお子ちゃまには私の悲しみが分からないんだよ」(教授か⁉︎彼女は昔から?君という表現をよく使う)
    「お子ちゃま!って同い年じゃん(゚o゚;;」

    もし、悲しみのバロメーター測る機械があったとして、その値が一番高かったとしても…それを競って、そのことが自慢になるんだろうか?むしろ、そんなバロメーター機があったとして(ナイ、ナイ(" ̄д ̄)!)私は自分の値が1番高かったとしたら、それを考えただけで怖ろしく意気消沈してしまうのではないか?そう考えたら、平然と得意げに語る彼女はやはり不思議な博士だ!と内心思った。
    「とにかく…」とあの頃彼女は言ったけど…
    あの頃は、兎に角、本当に年齢的にお子ちゃまではないにしても、まだまだ若くて傷つきやすく、自己憐憫出来て…その自分に浸って悲劇のヒロインを演じてられる年頃だった気がする。それから20年程の年月の間には、その頃には想像すら出来ない、もっと心抉られるような悲しみの連鎖に出遭うことになるのだ、彼女も他のその場に一緒にいた友達も私自身も。 あの頃の悲劇のヒロインに扮する自分を覆されるくらいに…(´;ω;`)
    けれど、あの頃よりも今は大人であの頃より悲しみに疎い自分を演じられるようになってきたし、あの頃より悲しみに耐え、楽しめる人間に成長したようにさえ感じる。
    一番悲しみに暮れてると思ってたあの頃なんて、そう言い切って笑えるほど幸せな時間だったんだって思えるし、その後の年月に何十倍も辛いことや悲しいことを経験したけれど、若い頃には解決出来なかった悲しみを笑えるようになった~(・・?)図太くなってきただけかもしれない。
    そんな7人目の私に、本作のゴンママがささやく言葉が、いちいち心に響き諭され、本を閉じた後に胸に沁みるように落ちてきた。
    今は病気のこともあって、以前のように、
    気の合う仲間と夜の街に出て、飲み歩きするようなことはなくなったが、隠れ家的なゴンママの仲間の集うスナックが懐かしく、花言葉ならぬカクテル言葉が生きてゆく上での術を与えてくれる、いいなぁ、そんな雰囲気。
    私自身も常連のお店のようにしてた最後に行き着く小さなパブのような飲み屋さんがあった気がする。 そこでは、普段寡黙なマスターが時々、話してくれる、それこそ小声でささやくような言葉が流石に色んな人間を相手に商売続けてる玄人ならではの深い話しが、しみじみ沁みたなぁなんて思い出す。
    (今は病気じゃなくてもコロナ禍でそんなに飲み歩きなんて難しくなってるだろうし、あのお店はどうなったかしら?と心配になる)

    それでも、”やり直すことのできない過去を悲しんでいたら、せっかく生きている「いま」が不幸になっちゃうだけでしょ
    まだ来てもいない未来を不安がっても仕方ないじゃない。大切な「いま」をつまらなくするだけーいまこの瞬間だけをしっかり味わって生きない。”ってゴンママの小声でささやく大事な言葉が聞こえた気がした。
    今の私が通えるジムはないとしても、心は少し鍛えられたかな、と思えた。

    • hiromida2さん
      shukawabestさん、おはようございます。
      こちらこそいつもありがとうございます。
      私も森沢明夫さんの本を読むのは
      初めてでした(^^...
      shukawabestさん、おはようございます。
      こちらこそいつもありがとうございます。
      私も森沢明夫さんの本を読むのは
      初めてでした(^^;;
      確かに、レビューはネタバレになってしまう
      可能性大ですので、流石です。
      私も同じく森沢明夫さんの本はまだ一冊目
      なので、森沢さんの世界観が気に入ったかどうか?の判断はつきにくかったけど…
      何だかいい気分になりました。
      shukawabestさんもこの作品読まれたと
      コメントもらって余計、嬉しくて
      いい気分になりました(^^)
      本棚のレビューを拝見しても、頂くコメントを読ませてもらっても、つくづく、shukawabestさんって…本当に
      心の根の優しい方なんだなぁと感じます。
      ついつい、コメントに涙ホロリしちゃたりして…( ; ; )しみじみ、とても癒されてます♪

      歳を重ねる毎に、悲しみの質も深まってゆくけど、色々な立場にあるものや人たちに触れて、経験を踏んだ分、少し心も強くなれた気もします。
      こうしてブクログを通して出会えたことも、
      なんてラッキーなことだろうと思ってます。

      長くなりましたが、出来る限り…クヨクヨしないで楽しく日々を摘んで生きよう!
      こうやって人と繋がっていける時間の大切さを噛みしめてます。
      心のこもったコメント♡
      いつもありがとうございます(*^^*)
      2022/06/08
    • shukawabestさん
      ありがとうございます。昨日、スマホを置き忘れてしまい、今になりました。

      確かに、経験を積んだ分、僕の場合は強くなったというか、少しは立場の...
      ありがとうございます。昨日、スマホを置き忘れてしまい、今になりました。

      確かに、経験を積んだ分、僕の場合は強くなったというか、少しは立場の違う人たちの気持ちもわかるようになったというか・・・。

      そうですね。クヨクヨせず、強がらず、自然に前向きになれたらいいですよね。樹木希林さんのようなイメージですかね。

      今後も引き続き、レビュー読んでいきますのでよろしくお願いします。
      2022/06/09
    • hiromida2さん
      小声で…『こちらこそよろしくお願いします』
      小声で…『こちらこそよろしくお願いします』
      2022/06/09
  • スポーツクラブSAB(サブ)のフリーウエイトゾーンに集まる気の置けない筋肉フェチの面々。しがないサラリーマンの本田宗一(ケラ)、セクシー美女で実は売れっ子漫画家の井上美鈴(ミレイ)、小生意気でシャイな高校生の国見俊介(シュン)、金髪モヒカン頭の歯科医・四海良一(センセー)、零細広告代理店の社長・末次庄三郎(シャチョー)、そしてみんなの心の支え、スナックひばりのオーナー兼ママのマッチョな巨漢オカマ・権田鉄雄(ゴンママ)。

    彼らは、スナックひばりの常連客でもあり、夜な夜なひばりに集まっては楽しく盛り上がっているが、それぞれに心の傷や悩みも抱えていて…。ゴンママの包容力と美人バーテンダー・カオリちゃんのカクテルが、彼らを順次癒していく。

    連作短編。著者お得意のほっこり系。癒されたな。

  • (audibleで聞く)
    人とつながりの大切さをあらためと実感させられる人情小説
    特に味が出てるのは身長2メートル超のマッチョなオカマ・ゴンママ。昼はジムで体を鍛え、夜はジム仲間が通うスナックを営む。気の合うジム仲間達とのつながりなどや悩みも人間くさくて、すごく良かった。ここの話出てくるカクテル言葉もおしゃれでしたね。
    こんな素敵なバーと気の合う仲間がいたら本当に毎日が楽しいと思う。
    audibleで聴くと臨場感が出ていいかもしれない。

    #読書
    #読書記録
    #読書ノート
    #読書好きな人と繋がりたい
    #audible
    #森沢明夫

  • 久しぶりに読書で泣いた。

    みんなそれぞれいろんな事情を抱えた人たちが筋トレジムに通っている。そこでみんなそれぞれ癒されている。
    自分もそんな場所が欲しいなと思った。
    ゴンママのお店にも通いたい。

    時計の秒針を怖いと思った事は無いけれど
    一人で生きる事の怖さと寂しさは
    幼稚園の頃、同じ組の女の子を好きになった時から知っていたと思う。

    たまに瞑想してても、やっぱり今を生きる事を忘れてしまう。過去や未来を今考えても、ただ今が辛くなったり、今この瞬間をもったいなく過ごすだけなのに。

    みんなの辛さが最後は劇的にではなく、誰かの優しさで良い方向に向かって行くのが、良かった。

    子供の話はどうしても泣いてしまうな。
    前と同じ、動物病院の診察待ちの駐車場。
    読書で泣くのは何だか心地良くて、安心する。

    また良い本を読んだ。

  • リアルで哀しいことが続いているので、優しい話が読みたくて選んだ。期待していた以上の優しさと強さを感じた。阿吽の話が沁みた。

  • 優しい小説でした。

    とあるトレーニングジムに通う様々な人たちの日々のお話。悩んだり、疲れたり、苦しんだりしても、利害関係のない趣味の仲間の優しさに癒される、そんな話。

    マッチョなおかまのゴンママさんみたいな人、私の周りにもいてくれないかな。

    #KindleUnlimited

  • 心温まる小説。登場人物がみな生き生きしてるし、すごくいい人たち。でもその裏にはそれぞれの悩みや葛藤があって…。四海先生の話は涙なしでは読めなかった。ところどころに、胸に響く素晴らしい言葉たちもあって、また読み返したくなる小説。

  • 良い物語でした。
    こんなこと、こんな気持ちってあるよな…という場面も多くて、フィクションとノンフィクションの間のような。
    辛いことや悲しいことがあるから、楽しい時間が、人が、場所が愛おしい。その楽しさがまた人や仕事との関わりを良い方へ繋げてくれる。そして、自分自身にも栄養を。

    軽く読めるけれど、面白いだけでなく何気なく心に染み入ります。
    主人公のゴンママとカオリちゃんの関係がとても好き。
    こういうのを「尊い」と言っても良いのではないか。
    黒猫のチロも。

    また「カクテルの言葉」が響いてきます。
    バーテンダーさんはみんな知ってるものなのだろうか?
    機会があれば聞いてみたいな。
    最初はギムレットを頼もうと思いました。
    私もそこから成長していけたら良いけれど…。


    余談
    映像化に向いてそうと思っていたら、既に今秋Netflixで放送されるらしい。勝手にゴンママを鈴木亮平さん、ケラさんを東京03の方などと脳内キャスティングしていました。実際は全く違う方でしたが、どんなお話しになっているのか楽しみです。(契約してないけど).

  • マッチョなオネエというのは、無敵キャラだと思う。

  • 大事なことは小声で大切な人だけに伝えたいから、
    誰かの大事なことは人と深く関わらないと受け取れないな

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著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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