ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る (NHK出版新書) [Kindle]

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  • 冒頭に紹介される事例があまりにも衝撃的だ。死後7年も放置されていた5歳で餓死した男の子、母親によって8年あまりも自宅に軟禁されていた21歳の女性。しかしこのように事件として発覚する子ども虐待は氷山の一角かもしれない。居所のつかめない子どもたちは何万人も埋もれているのだ。
    近年社会問題となってきた「消える子どもたち」問題だが、本書の最も重要な貢献は、児童保護施設などに取材し、「消えていた」――虐待を生き延びることのできた子どもたち自身の口から、なぜ彼らが見つけ出されることがこれほど困難であるのかをていねいに探りだそうとしていることだ。さすがは腐ってもNHK。運よく生き延びて体験を話してくれることのできる子どもたちの勇気とともに、彼らが話すことができているのは、ごく限られた幸運であることも明らかにされる。辛い。
    学校や警察に強制的捜査権をあたえるべきだ、虐待する親に刑事罰をあたえるべきだ、と解決策を唱えることは簡単だが、あと一歩を踏みこみ子どもたちに手を差し伸べることのできない学校や行政や社会とは、彼らを見ないでいられる隣人のわたしたちこそが作りだしているのだと感じる。とはいえ、もう少し制度変革についてどのような議論があるのかという情報を盛り込んでもらってもよかったかとは思うのですが。

  •  2014年に白骨化した子供の遺体がアパートから発見された事件をきっかけに、なんらかの事情で社会との繋がりを絶たれた子供たちについて調査報道を行った「NHKスペシャル 調査報告“消えた”子どもたち──届かなかった『助けて』の声」の取材班が、その内容と背景についてまとめた本。

     従来は家庭の問題としてあまり表に出てこなかった児童虐待問題が最近は注目されるようになっているが、本書は直接的な暴力や放置より「学校に通わせない」というタイプを中心に取り上げている。体の傷は治療できるが、小中学生が1年以上学校に行けなくなったら取り返しがつかない。そういう意味では暴力以上の虐待とも言える。

     親によって自宅に監禁され、小学校も中学校もまったく通わせてもらえず18歳で保護された女性。精神疾患を患った親の面倒を見るために学校に行けなくなった中学生。夜逃げした親に連れられて数ヶ月車上生活を送った小学生。安穏とした生活を送ってきた自分には想像を絶する事例が紹介されている。これが21世紀の日本の話なのか。

     子供の話なので、例外なく親に問題があるが、「親が悪い」で話を終わりにしてしまったら再発は防げない。悪い親はたくさんいるし、これからも現れるだろう。親への処罰を強めて解決するものではない。

     以前、『ルポ 虐待──大阪二児置き去り死事件』を読んだ際にも感じたが、こういった問題では「親が加害者で子供が被害者」という図式よりも、「親子まとめて社会から見放された存在」として捉える必要があるだろう。親自身が抱えている問題を解消しなければならない。

     もちろん本書で語られているように、こういった家族は周囲とのコミュニケーションも上手く取れず、厄介者として扱われることが一般的だ。自分の隣人にこういった人がいた時に、どれだけ親切に振る舞えるか自信はない。関わり合いになりたくないと思うのが普通だろう。

     しかし、だからと言って学校や行政に任せっきりではいけない。本書が提言するように社会全体の問題として捉え、おせっかいでも気にかけることが必要だ。

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