- Amazon.co.jp ・電子書籍 (17ページ)
感想・レビュー・書評
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出だしから3行目で、早くもぷぷっと吹きだしてしまった。
こんなに品の良いユーモア小説も珍しい。
全編くすくす笑いが止まらないし、読み終えた後もふいに思い出し笑いがこみ上げる。
まるで楽しい趣味のように(?)何度も禁酒の決心をする夫と、それを応援しようとする妻のやり取り。
この夫婦のみでなく、女中さん・巡査・車屋さんなど、登場人物たちは全員善意の固まりで大真面目なのだが、ほとんど落語レベルの可笑しさ。
特に新年の挨拶まわりで、友人宅からヨタヨタと酔って帰る時の描写がたまらなく面白い。
そして最後の一行まで、実によく出来ている。
将棋の舛田名人が、奥様に禁酒を説得された時、「5歳の時から飲んでいる酒だ。俺は古い付き合いは大切にするから、新しい付き合いのお前の方を切る」と言ったという有名な話があるが、酒飲みの屁理屈というのはどうしてもこうも可笑しいのだろう。
見事な理屈を絞り出すその頭の良さを、他の場所に使ったら良いのにとさえ思う。
雑誌が家庭の娯楽だったという昭和初期、皆が皆、その連載を心待ちにしていたという佐々木邦の作品。
ユーモア小説のパイオニアとして、もう少し評価されてもいいのにな。
他人を貶めたりする笑いとはまるで一線を画す、温かく上質の笑い。
ごく短いので、ちょっとした空き時間でも楽しめる。おすすめ。 -
書き出しの
「片岡君は又禁酒を思い立った。」が、ちょっと気が利いていて良かった。
こういう罪のない、柔らかなユーモアに素直に笑い転げることの出来ない自分が無念である。
Wikipediaで佐々木邦を調べるに、ある人(失念氏)が、
「もし日本が英語を母国語にしていたなら、佐々木氏は世界で屈指のユーモア作家になっていただろう」と絶賛していたらしい。 -
「旦那さまはまた溝へでも落ちたんだよ。あんなに溝な好きな人はないからね」って、ばれてる。平和でおもしろいの。
私は、おつき合いで「いいね」を押すことはなく、
「一度読んでみたいな」と思うか、感想文に感服するかのどちらかがあった場合に
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私は、おつき合いで「いいね」を押すことはなく、
「一度読んでみたいな」と思うか、感想文に感服するかのどちらかがあった場合に
「いいね」ボタンを押すようにしています。
「おつき合いのいいね」、
何の意味があるのかと疑問を感じます。
もらって悪い気はしないが、感想も書いてないのに
「いいね」を頂戴すると、さすがに面食らいます。
ということで佐々木邦、読んでみました。
時代を考えると、長谷川町子はきっと佐々木邦を読んでいたに違いない。
などと余計なことを考えたりしながら。