- Amazon.co.jp ・電子書籍 (156ページ)
感想・レビュー・書評
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朝日新聞デジタルに連載のシリーズ「きょうも傍聴席にいます」の2013年5月から2015年12月までの記事を書籍化したもの。刑事裁判の法廷で明らかにされた事件の経緯と、被告人・弁護人・検察官・裁判官によって語られた言葉を傍聴席の記者が記録している。
本書に収録された29のエピソードはどれも、個々の事件が大きく報道されるほど注目されたものではない。殺人事件もあるので軽いとは言えないが、社会全体から見ればすぐ忘れられるような「小さな事件」ばかりだ。ひとつの話は5分で読める程度にまとめられているが、しかしどれも色々と考えさせられる。
職業犯罪者ではなく、ふとしたきっかけで道を踏み外してしまった人や、苦しみを誰にも相談できずに最悪の選択をしてしまった人などが多い。そういう事件をあえて選んでいるのかもしれないが、根っからの悪人ではない人々の転落は痛ましく、涙を誘われることもあった。
書籍タイトルになっている「母さんごめん、もう無理だ」は、98歳で認知症の母を一人で介護していた74歳の息子が手にかけた事件だ。この事件なども、相談できるはずの人はいたのに相談できなかった。そんなにも「遠慮」させてしまう社会の問題でもあるだろう。助けられる人はちゃんと助けたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
記憶に残ってる事件も多かった。追いつめられた末の犯行やと、どこかでどうにかできんかったんかな、ともどかしく感じる。
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どこにも逃げられず、誰にも相談できず、なんでも抱え込んでしまったら、他人に優しくできる余裕なんてきっとないんだろうな。