素晴らしい!
監督の八鍬新之介は、脚本も兼任。
なんでもテレビ版にて、制作進行から監督へ。
初の映画監督作は「新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜」で、本作のあとに、オリジナルの「のび太の月面探査記」。
そしてなんと最近評判の高い「窓ぎわのトットちゃん」を手掛けている。
近々見るつもりの「新・大魔境」が俄かに楽しみになった。
以下ネタバレ。
序盤から中盤まで、実に丁寧に原作および旧作をなぞっていく。
ただしそこにオモネリやメクバセがなく、リスペクトに基づいた的確な取捨選択がある。
たとえば旧作の、トラウマメーカーであった神隠しの説明場面は短縮。ヒカリ族の宴はカット。
つまり旧作の(善かれ悪しかれ)「過剰な部分」を適切に剪定しているのだ。
後半から終盤にかけては展開修正あり。
まず、ツチダマの脚が伸びたり、複数体になったりは、旧作を見慣れた者には面白いクスグリ。
で、複数人ドラえもん裁判場面はカットで、上記の理由。
それに続くマンモスのくだりが丸々カットで、その理由は終盤に判明する。
ギガゾンビと対決する場面で、旧作ではタイムパトロールの救出を(結果的に)待つ展開だったのに対し、本作では子供たちが自力で立ち向かう展開になる。
旧作では後半空気だったククルの見せ場もある(ジャンプ力すごすぎじゃねと思わないでもないけど)。
で、ドラえもんが放った槍が、ショックステッキ(ドラ22世紀<ギガ23世紀)ではなくククルの石槍だったのが、勝因。
ここにおいて中盤、ヒカリ族がここに新しい村を作ろうと動いているのを見て、ジャイスネがねえ便利な道具を出してと言い、ドラえもんが駄目と言ったのが、伏線になっているとわかる仕掛け。
文明の発展に未来人の介入は(本来)不要(であるべき)なのだ……このへん、文化人類学の知見を子供向けに伝える、ものすごく巧みな改変だと思う。
……だからこそ、ラストもラストにて、TPのお姉さんがキッとした表情をしたとき、(お、ドラえもんが叱られるんじゃないか、無思慮に過去に行って楽園を作ろうとしたりして、歴史犯罪者という点ではほぼ同罪よ! と言われるんじゃないか)とヒヤヒヤしたら、旧作と同じくのび太へ3匹を空想サファリパークに引き取るという説得が始まった……のだが、彼女はのび太へ語るその背中で、ドラえもんに対して無言の圧をかけていたに違いない。
というのは想像だが、要は師として尊敬すべきなのは重々承知だが、ゆうても20世紀後半のお気楽・享楽・バブリー・経済大国・上向きな時代のF先生に対し、お気軽に新世界作りすぎっすよ! という21世紀前半からの冷静なツッコミを行っている、といえると思う。
そんな作り手の「内部競合」、対して外部=視聴者へのサービスは旧作の原作力への信頼(内部信頼)、というバランス感覚が、素晴らしかった。
リメイクだからといって無駄にニギヤカシなオリジナルキャラを入れなくてもいいのだ。