サイレンと犀 新鋭短歌シリーズ [Kindle]

著者 :
  • 書肆侃侃房
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感想・レビュー・書評

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  • 視野の広さに驚きました。素晴らしい発想。

    生死に関するうたにとても惹かれました。一部、思考が似ているかもしれませんね。


    2023/11/02 目次-140

    p.5
    “青空とブルーシートにはさまれてサンドイッチのたねだねぼくら”
    わあ……! この発想、好きです!!
    お花見をしているのでしょうか? その場所からぐーんと視野を広げて空まで包み込んだ短歌を詠むことができるのは、素晴らしい才能です。凄い。

    p.26
    “二人の「またね」は祈り”
    無意識に、わたしたちは祈っているのかもしれません。老若男女誰であっても、いなくなる時は必ず来るものですから。

    p.34
    “三分の二を隠しつつこの夜のひとりひとりに嘘をつく月”
    嘘つきな月がつく嘘はどんな嘘?

    p.35
    “プルトップまわりに埃めだちだす四十九日の友のコーヒー”
    お家か、お墓か、わからないですけれど……そこに行くことができるくらい親しい仲だったのですね。
    わたしも友人を亡くしたことがありますけれど、まだ、何も知らない時期でした。もっと仲良くなれたらよかったのにって後悔しても後悔は先に来ることなんてないから、あの時のわたしは本当に何も知らなかったです……。

    p.60
    “母と目が初めて合ったそのときの心でみんな死ねますように”
    生死を詰め込むこの技量凄いです。
    ねえ、生まれたばかりのわたし……どんな気持ちでしたか。せかいはまだ、明るかったのでしょうね。

    p.66
    “「自殺点?今のが?マジで?これほどの恍惚感の只中なのに?」”
    もしかしたらとても死に近かった瞬間、うとうとしていました。もうすぐ眠ることができそうな気持ち良い感覚。
    こわくなかったです。あれが最期だったら、とても良いのにって思います、これから来るであろう最期の瞬間も。

    p.73
    “生年と没年結ぶハイフンは短い誰のものも等しく”
    生死を意識しているのでしょうね、この方。わたしも。だから惹かれます。

    p.93
    “なぜ蟬はぼろぼろ死ぬのこんなにもスギ薬局のあふれる町で”
    その薬局では虫を殺す商品も売っていて、人には優しいけれど虫には厳しい町なのかもしれません。

    p.94
    “六カ月は死なない前提で買う六カ月通勤定期”
    一時期、何か予定を入れるたび、「その時まで生きているのだろうか」と考えていました。生きていますよ、過去の自分。

    p.126
    “運転に支障は無くて何年も放置している心の異音”
    そうしてわたしは壊れました。

    p.140
    “御守りになるような短歌を一首でも見つけることができたなら、それに勝る喜びはありません。”
    お守りにしても、良いのですね。作者さんから許可をいただけると、うれしいです。

  • えっめっちゃ良かったで!!!短歌初めてなんだけどめっっちゃ良かった!!短歌ってさ……良くね……?短歌ってさ……気軽に読める短編小説じゃね……??雰囲気めちゃかわやんって思って見てみたらなんかしんどいのもかわいいのも美味しそ〜〜!!もあったんだけど出会えてよかったあと絵が可愛いよね、想像力膨らむよねマジ神!!!!

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著者プロフィール

一九八〇年大阪府生まれ。歌集に『サイレンと犀』『たやすみなさい』『音楽』『うれしい近況』。共著に『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』『今日は誰にも愛されたかった』。がんサバイバー当事者による、闘病の不安に寄り添う短歌集『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える』を監修。

「2023年 『現代短歌パスポート2 恐竜の不在号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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