観察力を磨く 名画読解 (早川書房) [Kindle]

  • 早川書房
4.05
  • (14)
  • (15)
  • (7)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 174
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (469ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アートの鑑賞方法を学ぶことを通して、観察力を磨く本。ビジネス、創作、日常生活全てに使える。読んだ後、電車から外の景色を見るのが楽しくなった。子どもの頃、外の景色を見るのは驚きだらけで楽しかったけど、大人になったら全部同じ景色でつまらないと思っていた。そうじゃなかった、自分は観察するのをやめていたと気づけた。

    <印象的な箇所のまとめ>
    ・私たちは、見ようとする世界しか見ない(ヘンリー・デヴィッド・ソロー)
    ・大事なのは人と違うところに目をつけ、または本来あるべきものが欠けていることに気づくこと。
    ・ペースを落とす。ペースを落とすとは、何も動作を遅くするという意味ではない。見たものを意識に染みこませる時間をとれという意味だ。
    ・ほとんどの人は見るだけで、観察していない。
    ・事実を集めるときは、客観的に観察する。「ひどい痣」は主観的な意見だが、「直径2.5センチほどの丸くて紫色の痣」は客観的な意見だ。
    ・小さいという形容詞は、人によってとらえ方が違う。長さ2.5センチメートルは、客観的だ。
    ・「くさい」より「死んだ魚のような匂いがする」のように伝える。
    ・発見とは、みんなと同じものを見て、誰も考えなかったことを考えること。(アルベルト・セント=ジェルジ)
    ・感覚に基づく情報はとくに具体的で正確な表現を心がける。
    ・疑問に集中する。私は何を知らないのか。私は何を知りたいのか。
    ・アートは疑問を呼び起こす。ひとりひとりが自由に解釈し、それについて語り合うことができる。現実世界に能動的に影響しないからこそ、見る人は安心して発言できるのだ。それがひいては、世の中を変える力となる。(JR)

  • アートを通じて観察力、分析力を磨き、それを正確に伝える力をつけようという内容。1枚の絵画を細かいところまで見たはずなのに、その後の問いで見えていなかったことに気づき、いかに見えていないのかを気づかされた。見るのではなく観察することが大事で、一見同じような意味だけど内容が全然違う。また、分析して伝えるのも自分のバイアスがかかっていたり、主観的すぎて客観性にかけていたりなど、これまで意識していなかったことを知らされた。

  • 結局これは途中で離脱してしまいました。
    まあ、私の知識および能力不足なのですが。
    それでも言いたい。
    絵画鑑賞に「観察力」が必要ですか?
    必要というかマストですか??

    音楽や文学や映画と比べて、
    圧倒的に瞬時に感じることができるもの。
    論理を必要とせず胸騒ぎをさせられるもの。
    それが絵画鑑賞の魅力。
    まずはそれでイイと思います。
    と自分に言い聞かせています笑

  • 観察力がテーマなので、あくまでアート目当てで読むと肩透かしをくらうかも。(後半アートあんまり出てこないし)
    観察力及びコミュニケーション方法の現実世界への活かし方(特にビジネス分野)は参考になった。個人的には著者の「上司に文句を言うのは時間の無駄(p.315)」「制約があるから能力以上のことができる(同ページ)」という考えなどが好きではなく、その考えの違いが透けてみえるためか後半は読み進めるのに時間がかかった。

  • 名画をじっくり観ることから、判断を磨く。
    最初の名画や写真への向き合い方や観察方法にはサプライズがあったが、ドンドン名画から離れていき、退屈になった。

  • ためになることが多かった。日頃意識していない部分を補強できるようなそんな本だと感じた。

    学び
    ・メモを取る時はパソコンよりも手書きのほうがいい。なぜなら、入力スピードが手書きの方が遅く、自分で考えて要点を抽出しないといけないので情報が記憶に残りやすいから。

    ・5W1Hで観察する。Whyは最後

    ・主観的な意見や感想は必ずしも排除しなくていい

    ・マルチタスクは4つでも多い

    ・観察結果を伝える時まずわかった事実に集中する
    →優先順位も大切

    ・長々と喋ったり、必要のない情報を盛り込むと、肝心のメッセージがぼやけるので気をつける。
    →大抵は説明しすぎない方が上手くいく。

    ・議論を回避したりメッセージを伝える上で、リピート、リネーム、リフレイム(視点の切り替え ex言いにくい懸念事項は角が立たないように質問として投げかける)が大事。
    →どれも通用しない相手なら、さっさと謝る


    要点
    ・複雑さを恐れない。結論を急がない。
    ・全体を捉えつつも、細部をおろそかにしない
    ・疑問を持つ心を忘れない。
    ・客観的事実だけを扱う

  • ### 本を読むきっかけ
    美術品を鑑賞する作法を知りたくて、調べたところ、「観察力を磨く 名画読解 (早川書房)」の評判がよく読んでみようと思った。

    ### この本を推薦したい読者層
    美術館や博物館、個展などをどのように鑑賞するかがきっかけだったが、ビジネスに応用できる点も多い。
    美術だけでなく社会を見るための観察力を磨きたい人に薦めたい。

    ### 概要
    「観察力を磨く 名画読解 (早川書房)」は、絵画を正しく鑑賞することは世界と人生を正しく鑑賞することと同じなのだと教えてくれます。
    この本を読むまで、自分は「見る」「聴く」「知る」ということを誤解していた。正しく見ることで、正しく理解できる。その「正しく見る」能力を磨くのに美術鑑賞がちょうど良いと教えてくれる。

    美術鑑賞すると、その絵画に対して、「この描かれている御婦人は悲しんでいるんだな」「この青色の空は喜びを表現した絵なんだな」と感じるかもしれない。それはだいたい自分にかかっているバイアスにすぎないことが多いと気づく。
    バイアス、思い込みをできる限り排除して、描かれている絵画をそのままに見て、感じることで正しく見ることができる。絵画を見る際に解説やタイトルを見ないで、自分でタイトルや感想を抱いてみる、そして、タイトルと解説を読んでみると、ぜんぜん違うことに気付かされる。
    徐々にバイアスを排除してみることになれてくると、タイトルと解説に近い感想を抱けるようになる。これが分かるようになると美術鑑賞が断然たのしくなります。

    「バイアスにとらわれない洞察力」以外にも「重要な情報を引き出す質問力」「確実に理解してもらえる伝達力」「失敗しない判断力」など、絵画を通して、学ぶ方法を教えてくれます。FBIやNY市警、大手企業で実践されている手法らしいです。

    ### 章の紹介
    第一部 観察
    第二部 分析
    第三部 伝達
    第四部 応用

  • 長いけど勉強になる

  • 観察力の不足が重篤な社会問題につながりかねない警察官に対し、名画を見せて観察力を鍛えるというユニークなプログラムを開発し実践した弁護士の本。
    ちゃんと写真をじっくり観察しながら読まなきゃならないので読むのに時間がかかるが、都度、おーなるほど!と発見がありそれなりの甲斐はある。観察のしかただけでなく、その優先順位の付け方、伝え方にも具体的に言及されていて、また人間である以上避けて通れないバイアスの問題や言いにくいことの伝え方、他人の仕事のしりぬぐい・・など、生きていくためのスキルにもつながる示唆が平易な文章で書かれており、とてもためになる。

    P25(プリンストン大学スン博士)「網膜はフィルムなんかじゃありません。非常に複雑な構造をしていて、カメラよりもすごいんです。どっちかというとコンピュータですよ。網膜の研究は、脳の働きを解明する近道でもあります。だって網膜は脳ですからね」

    P29 どこか街中で人間観察をすることもできるだろう。だが通行人が視界から消えた後はどうだ。自分の推測が正しかったかどうかわからずじまいになる。そこへいくとアートには答えがある。【中略】美術史家のディヴィッド・ジョズリットが述べたとおり、アートとは、「途方もない量の経験と情報の蓄積」なのだ。私たちの観察力、分析力、コミュニケーション力を鍛えるのに必要なすべてを備えている。
    P35(集中することが難しい時代)注意散漫な就業者のIQは10ポイントから15ポイント低下するという。マリファナを吸う以上の悪影響だ。IQが15%も低下すると、成人男性も8歳の子供と同程度の思考力になってしまう。

    P85 医師や警官や教師が「このケースは前にも見た」という時、彼らは常に間違っている。似たような状況に対処したり似たような患者を診察したりしたことはあるかもしれない。しかし目の前のケースは前に経験したものとは違う。

    P105 客室乗務員はABP(able-bodied passengers)つまり非常時に避難の補助ができそうな乗客を物色している。目と耳を使って情報を集め、それをつなぎ合わせて判断する。事実を集めるときは、客観的に観察すること。主観的ではだめだ。

    P125 <ステイトファーム保険>は、運転免許を取得したばかりの人に対して、安全に運転するにはとにかく車に乗るしかないと助言しているが、このやり方は、日常的に登場する盲点にも有効だ。とにかく見るしかない。

    P135 細部を見るための戦略「COBRA」
    Cまぎれているものに意識を集中させる
    O一つの仕事に専念する
    B休憩
    R期待の見直し
    A他者の意見を聞く

    P137 絵を描くように説明するとき、最初に確認すべきは、カンバスが真っ白だということ。だから空白を残さず、観察したことを正確に客観的に、わかりやすく描くようにする。大胆な筆遣いを求められるところもあれば、細かく書き込まなければならないところもあるだろう。

    P185 自分がどのように優先順位をつけるかを把握している人はめったにいない。

    P194 伝え方がわからなかったからと言って、事実を省いていいことにはならない。自分に理解できなくても、話を聞いた人にはわかるかもしれない。未知のものを無視するのは危険だ。【中略】見ているものの正体がわからなくても、情報を集め、優先順をつけなければならない。

    P197 あるべきものがないことを説明に加えれば、話を聞いた人が状況を誤解する可能性が低くなる。陰性所見を意識的に織り交ぜることで、情報の正確性が増すのだ。

    P199 私たちは知らない情報を省きやすい。知らないと認めることで、鞭だとか、努力が足りないと思われたくないからだ。しかし「自分は何を知らないか」を問いかけることは、「わからない」であきらめるのとは違う。むしろ、「今ここにいるものは誰もわからないが、この情報は重要だと思う。わかる人がいれば力を貸してほしい」と呼びかけることだ。

    P214 他者が目をつけないものや、流れを一変する可能性のあるものを発見しただけでは、まだ目的を半分しか達成したことにならない。正しく伝えることができなければ、自分自身を含めて誰も恩恵を受けることはできないからだ。

    P222 使わないほうがよい言葉や表現
    明らかに、間違いなく→ yとzを根拠に考えるとxのようだ というようにする
    けっして、必ず→ 正確な数字を示すか、できないなら”たびたび””めったに”を使う
    現実には→ 自分はそうは思わない、というようにする
    言うまでもなく→ 語彙から消してしまおう

    P234 KISS(Keep It Short&Simple) 「一方的にしゃべって失敗する人が多いのは、おちっついて準備する時間を取らないからです。本能的にもっと言わなきゃと感じるかもしれませんが、たいていは説明しすぎないほうがうまくいきます。しゃべりすぎると聞き手が混乱するのです。」マカーンの助言を受けて、カーラは質問されると困ることを一覧にまとめ、それぞれ短くてわかりやすい答えを準備した。あとは練習あるのみだ。

    P237 見たものを客観的に説明するときは、政治的な正しさよりも、情報を正しく伝えることを優先する。写真に写った人々を「黒人」と呼ぶことは、客観的な描写であって何ら問題ない。

    P258 見たものを(たとえそれがあまり話題にしたくない内容であっても)はっきり口にしよう。不快だったり異常だったり気味の悪いものを避けていては、良好なコミュニケーションは成立しない。嫌いだからといって目を背けていいことにはならない。好きになる必要はないが、対処は必要だ。

    P277 懸念事項は、角が立たないように質問として投げかけるといい。いっぽうが問いかけ、もう一方が答えるので、必然的に会話も成立する。質問にすれば相手に選択肢と逃げ場を提供できるし、あなた自身も、誤った情報や憶測に基づいて結論を急がずに済む。

    P195 バイアスによって生じる考えを疑問にすると、新たな事実を発見しやすくなる。例「介護施設の入居者が、ストリップショーで心理的な損害を受けた→入居者は~受けたのか?」

    P311 予測もできず、備えることさえできない人生を、どう生きればいいのだろう。道理が全く通用しないグレーエリアで、どう決断を下せというのか。【中略】グレーエリアでは特に、わかった事実に集中することが大事だ。わからないことはひとまず置いておく。「なぜ」は疑問の中で最後まで明らかにならないことが多く、永遠にわからないことさえある。よって優先順位を受けるとき「なぜ」は一番下に置く。

    P319 未完成のものはストレスを生じさせる。人間は無意識のうちに未完成の仕事に執着するのでストレスが生まれる。執着によるストレスは仕事の大小にあまり関係なく、大きなものからごく些細なものまで、同程度のストレスを生む。【中略】だから未完成の仕事を避けるのはやめて、代わりに、無限にある開いたままの回路を閉じたように扱うことで、注意を奪われないようにするといい。【中略】未完成の仕事に対する感情を遮断して、客観的事実に焦点をあてることができれば、他人の仕事を引き継ぐのも一から始めるのも、本質的には同じだとわかる。

  • アートを通して客観的に観測を行い、分析をして行動をするために必要な訓練を行うための本。
    物事を観察する時に、主観的な感想や意見、推測で見てしまうことがあるが、そうではなく、客観的な事実をもとに分かることと分からないことを分けて分析をすることが正しい行動に結びつく。
    単純にアート作品を見るときの新しい視座とも言える技法についての説明の本であったとも言える。

  • 趣味で美術鑑賞をするようになったのですが、当初は正直、美術品を見ても「理解出来ない」と思うことが数多くありました。
    今はあまり深く考えずに、「とにかく(数多く)見ること」と言い聞かせて、自分なりの観点で美術鑑賞をしています。

    そんなスタンスで良いのか、心に引っかかりを持っていたのですが、”名画と観察力”というキーワードが題名になっている本があると知り、読んでみることにしました。

    著者は、大学時代は美術史を専攻し、キャリアのスタートは弁護士だったという、アメリカ人女性。
    転職を契機に、「アートの分析を応用することで、医師の診断力を向上することが出来る」ということに気づきます。

    そのセミナー「知覚の技法」は口コミで広まり、警察やFBIで、その効果が確認されているとのこと。
    本書は、実際の絵画を題材にして、読者がその技法を体験出来るような内容になっています。

    まず第一部で、漠然と見ていることと観察することの違いを説明しています。
    第二部ではそこから得られた情報をどのように分析するか、第三部ではその結果をどのように相手に伝えるかということに展開していき、第四部でそれらを実際にどのように使うかという形でまとめています。

    題名の"名画読解"という言葉に着目した読者には、意外な展開に感じるかもしれません。
    セミナー名「知覚の技能」という題名が、しっくりくる内容だと感じました。

    特に印象に残ったのは、第一部の「観察」について。
    毎日、目をあけて何かを見ているはずの自分が、いかに「観察」というレベルで目と脳を使っていないか、自覚させられました。

    自分がどのような情報を得ているのか、その(限られた)情報の中でどう判断し行動するのか。
    取得したと思っている情報は事実なのか、自分のこれまでの経験等によってバイアスがかかっていないか、得られた情報と自分の感情・思いとを区別して伝えているか。

    情報を取得し分析をする、それを相手に伝える。
    そういった”当たり前”に行なっていること、出来ていると思っていることが、実際には出来ていなかった。
    そのことに気づかせてもらえました。

    あわせて、名画を見る楽しみも増やしてもらえたという、自分にとっては一石二鳥の内容でした。

    絵画に興味のある人はもちろん、とっさのハプニングに上手く対応できなかった経験のある人には、読んで損はない一冊だと思います。
     .

  • アート解説本。ではなく、知覚技法を説く、ノンフィクションサイエンス。〝リピート・リネーム・リフレイム〟情報に優先度を付ける。感情を差し引き、客観視事実で伝える。 アートの観察力を通じて、ビジネスシーンでの洞察力も磨かれる。 対面で学べるカリキュラムがあったら、これは受けてみたい。

全15件中 1 - 15件を表示

エイミーEハーマンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×