みかづき (集英社文芸単行本) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 時間が出来たので久しぶりに厚めの文庫を読みました。
    年に一冊あるかないかの割合で、感情を揺さぶられる系の物語と出会うのですが、今年はこれかな。

    一家が三世代に渡り塾経営に翻弄される話なのですが、私も中学受験の為に塾に2年くらい?通った経験があり、当時のことを思い出しながら読んでました。
    私が通ってた塾にここまでしっかり教育理念を持った人間がいたかは疑問だけど。
    たまに理解出来てない子にどうやって勉強を教えるかの実践が出てくるんだけど、当時こうやってきちんと教えてくれる人がいたらもっと上の学校目指せたのにと思ったり。
    因みに私は学校も含めて教師には全く恵まれない人生でした。
    父の会社にバイトに来てた早大生が勉強見に来たこともあったけど、私にウチの本棚の問題集やらせて自分は漫画(これもウチの本棚の!)読んでたし。

    話はレビューに戻りますが、娘たちが成長した以降、一家に次から次へと降りかかるドラマが波乱万丈でぐっと引き込まれました。
    キャラとしては次女の蘭が一番自分に近いところがあって親近感あったけど、終盤同じ方向を向けるパートナーが現れるところがやっぱり小説だなと。
    ああいうタイプは現実ではずっとひとりで戦い続けるのではないかと。

    この作者の方の本は以前児童書を読んだけど、その時の結末も結局誰かと一緒がいいという展開で、そこまで人恋しいとは思えない私はその時も違和感を感じたのでした。
    でも今回の作品はラストに全てが繋がっていく展開が面白かったです。

  • 壮大な大河ドラマの様な本だった。

    特に千秋のパートは胸に迫った。家族がバラバラにならなくて、本当に良かった。最後の終わり方も好き。

  • 壮大な物語でした。
    思っていた展開と違いがありました。教育者として…ぐっとくるものがありました。ドラマも楽しみです。

  • 人の写実がありありとしていて、話に入って行くことができた。学習塾業界の折々の苦労については相当リアルに書いてあると聞いたが、それは参考知識として得られた。

  • 昭和36年、用務員だった大島吾郎は塾の共同経営を赤坂千明から誘われます。本書は、夫婦となった吾郎と千明のおよそ半世紀の悪戦苦闘を描く家族三代の大河小説です。
    この小説の第1の読みどころは、半世紀の中でめまぐるしく変わる文部省の教育政策に学習塾がどう対応してゆくかです。詰め込み教育への批判、ゆとり教育への転換、その方向修正の中で学習塾=家族は翻弄されてゆきます。

    私事ですが、学生の頃、小さな学習塾でアルバイトをしていました。お父さんが塾長、お母さんが経理部長。朝は自分の子どもを学校に送り出し、昼は教室のメンテ、雑務、家事、夜は4時から9時近くまで授業、授業の後は父母からのクレーム処理、休日は補習授業や学力テストなどなど。一般の家庭とはかなり違う学習塾経営には、小説の題材になるようなネタはたくさんあるように思います。
    本書も、夫婦間の葛藤、多忙ゆえの親子のすれ違いなど、学習塾を経営するために発生する問題を淡々と描写します。これが、第2の読みどころです。

    個人的に気に入ったのは最終章。教育格差をめぐる青春小説といった印象です。最後の1ページは、ベタかもしれないけど、目頭が熱くなりました。吾郎と千明の人生が濃縮された秀逸なラストシーンと思います。

    本書はハードカバーで472ページ。扱いにくい重さです。それでも読了後は登場人物と別れるのが辛くなりました。お勧めの★★★★。

  • 〝常に何かがかけている、みかづきの様な、女系家族〟 塾教育を宿命として、それぞれの教師人生にもがく、三世代ドラマ。 戦後から現在までの教育現場と、学校と塾と文部省の難しい関係性も、ドラマを辿りながら追体験。 あまりに噛み合わない、家族間の歯車と、作品のボリューム感に、なかなか難儀したが、読後の清涼感で報われた思い。

  • セールでコミックを買い込み読み疲れたので、寝る前にちょっとだけ読もうと、何となく未読コレクションから選択。 結果大失敗。読む手が止まらなかった。おかげで最後まで一気読み。
    大筋は知っていたのだが、最初はあれ?塾経営の話だったの?と戸惑いながらページを進めた。塾経営夫婦の心温まる話と思い込んでいたのでw しかし、このお話無駄が一切ない。

    吾郎(ぜひ、同名の方に演じてもらいたいw)の視点は塾が成功し、一企業として成り立つまで。籍は抜かずに、ここで袂を分かつ妻の千明が次の視点。 まあ、何とも強気でやり手で。どうにも彼女が苦手だった。長女の蕗子同様「ぜったい許さない」と思い、いつ罰があたるんだろうと読み進めたが、千明は順当に年を重ねていく。そしてその年月は彼女を徐々に変えていく。 最後の視点は、蕗子の長男一郎。 ここで現代が舞台となる。
    吾郎も一度退場するし、蕗子、蘭、菜々美という娘たちも時折しかでてこない。 塾の講師陣も唐突に登場し去っていく、それぞれに詳細のエピがあるわけでもない。 徹底して本筋は「塾」「文部省」。 なのにエンターティメントに仕上がっている。 お見事としかいいようがない。

    ただ、これだけ教育に熱心なご夫婦が子育てにあまり力を入れたようにはみえない。教育と子育ては違うのだろうか。 国(文部省)民(塾)個(家庭)三位一体が理想であるならば、今この国はまったくもってバラバラだ。この3つをコネクトするという意味をもつならば、一郎くんの試みはぜひ成功してほしい。

    ゆとりと聞くと思い出すことがある。息子が教科書を片付けていなかった。夫がその本を見て、こんな雑誌いらないんじゃない?と言った。 私「それ、教科書なの」 え?!
    あまりの薄さに夫呆然。塾や中受にあまり乗り気でなかった夫もこれ以降、ちょっと考え直したw

  • やりたいことをやり遂げるには犠牲が必要なんだろうな。ガツガツするの嫌だな。ただ、のんびり子供の成長を見守りたい、と思う。

  • 塾業界の黎明期から現在の激動の歴史を、ある家族の三世代の活躍を中心に描く。最後の謝辞に「元山田義塾塾長の山田圭祐氏」の名が!元塾生、元バイト(特にチーフ)は本屋に急げ!今がその刻!今日がその刻!ときめきの刻!山田義塾!
    僕たちが知る塾の形態はその時代の要請を見事に反映したもの(ある種バブリー)だったことを再認識すると同時に、最後(三代目)の現在を舞台にした取組には胸が熱くなった。やっぱりこの業界面白いよねー。
    テレビドラマ化希望。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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