絶叫 (光文社文庫) [Kindle]

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  • マンションの一室でこの部屋の住人、鈴木陽子の死体が腐乱死体で発見される。
    自殺か他殺か解明していくと次々に明るみになってくる鈴木陽子の驚愕の過去。

    弟ばかり可愛がる母親、自殺した弟、借金苦から蒸発した父親、複雑で不運な家庭環境にいる陽子は地元に勤めるOLになり同級生と結婚し東京へ。しかし離婚。
    やがて陽子の仕事や生活は上司との不倫、彼からの暴力、生計をたてるための風俗、保険金殺人にまで関わる凄まじい転落の日々へ変わっていく。
    どこでボタンの掛け違いが発生し、転げ落ちたのか、、
    そこには貧窮暮らしの現実があり、陽子の目の前には他に生きる術を探す選択肢はなく、全ては今を生きていくための決断だったことがわかってくる。

    時代はバブル崩壊後、女性は就職しなくても結婚という永久就職があると言われたり、勤めても結婚退職が当たり前だった。
    そんな時代に自分の生計を立て、親へ仕送りもするのは並大抵のことではなかったはず。
    同情の余地はあるが、ここまでの転落に理解ができず茫然としてしまう。

    終盤に向け闇の世界の仕事で味わった達成感と満たされた承認欲求がイビツなモチベーションとなり、皮肉にも陽子を成長させていき、その意識の変化が結末に繋がったように見えてくる。

    衝撃のラストだ。
    どん底を知った人間が這い上がっていく気迫と生きていく魂からの決意になる結びは、ハッピーエンドにさえ感じる。

    自分の居場所を求め生きていくのに必死だった陽子、母親からの愛情と母親を心から守る陽子の気持ちが合致していたら、普通の親子の人生であったに違いないとやり切れない思いになる。
    いつまでも記憶に残る読み応えのある1冊だった。

  • 鈴木陽子 どこにでもいそうな名前の女性。愛情をかけて育ててもらえなかった子供時代。バブル期という時代背景。様々な社会の裏を見てしまう不幸。犯罪を犯し、最後は逃げ果せてしまうようなラストで、本来ならスッキリしないはずなのにまるでハッピーエンドのような錯覚を覚えてしまった。

  • 最後までとても面白く読むことができました。特に展開は想像を超え、全体の雰囲気やスピード感など十分満足できました。奥貫さんをもう少し暖かく見て欲しかった気もしますが、本庁の係長は最低の奴です。

  • ✩5つだけど、絶対読むのはお勧めしない。笑
    グロイから。
    読むのならご覚悟を。
    私は全く知らずに読んで、気持ち悪くて気持ち悪くてでもなぜか先を読みたくて。

    単純な保険金殺人の話では無かった。
    そこに至るまでの経緯や、主人公の気持ちなど語り手がいて話が進んでいく。

    最初、主人公の頭の悪さにイラっとしたのだけど、保険という武器を身に着けた主人公はけしてバカでは無かった。すごいとすら思った。(殺人を助長する気は全くないです)
    ただ、人の成長というか、ある時点で主人公はあることに気づく。この気づきが彼女を大きく変えていく。

    最後はなーんだアガサのパクリかと思いきや、え??と思わず息を呑む展開に少し高揚感すら覚えた。すごいな作者さん。葉真中顕(はまなかあき)さんと言うのね。覚えておこう。絶対また何か読みたい。久しぶりにすごい本と出会いました。面白かった。

  • 面白かった。違和感は感じてたのに深く考えず読み進めていて、うわぁぁぁとなった。ちゃんと騙されて満足。

  • 冒頭の感じから
    入れ替わりをすぐ想像してしまう自分がイヤ

  • 何がここまで彼女を駆り立てたのか。そうしなければやり直せなかったのか。家族に思い入れがあったのか。だから、あの場所に戻っているんだよね。

  • 私からしたらかなり分厚い本でしたが、あっという間に読み終えました。陽子は「自分は特別ではない」と言っていましたが、そんなことないと思います。面白かったです。

  • これもまた面白くて一気読み。
    陽子は、幸せになれたのだろうか。
    御守りの中に書かれた子の誕生を願うメッセージが、せつない。

  • 久々に綿密に構成されたクライムサスペンスを読んだ。
    とても面白く、本の帯に書かれていた、
    「ライト4行に驚愕」は全くその通りだった。

    物語は、2つの物語を交互に描いていく。

    1つ目は、鈴木陽子の人生を辿る
    第三者の視点で語られる物語。
    父母弟と4人家族の陽子は、父の蒸発、
    母との折り合いの合わない関係、弟の自殺を経て、
    自分の本当の居場所を探しつづけている。
    結婚し、離婚し、転職し、思うようにいかない
    陽子の人生を俯瞰で描き続けている。

    2つ目は、管轄内で発見された腐乱死体の
    生前の痕跡を辿る女性刑事奥貫綾乃の視点で描かれる。
    死体が発見された国分寺のマンションで、
    鈴木陽子の身分証が発見される。
    推定死亡年齢40歳。彼女はどうして死んだのか、
    事故なのか、自殺なのか、他殺なのか。
    戸籍や知人の証言から不審な事実が明らかになる。

    どちらの物語も鈴木陽子が重要人物として描かれるが、
    中盤まで、2つの物語がどこで繋がるのかが分からず、
    読み進め明らかになる事実に、いちいち驚いてしまった。

    また、要所要所に登場する鈴木陽子の人間関係も、
    飛ばさずじっくり読むと、後から後から「あっ」と
    気づく出来事が多々ある。

    じっくり読んで正解だった。
    読む側は絶叫はしなくとも静かに目を剥くと思う。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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