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- / ISBN・EAN: 4547462111821
感想・レビュー・書評
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2017.1 劇場鑑賞記録転載。
マーティン・スコセッシ監督「沈黙Silence」
以下、ネタバレには気をつけているつもりですが観たい方はスルーしてください。
鑑賞。重かった。観終わった後はメンタルを相当消耗した。
日本人俳優の演技が素晴らしかった。イッセー尾形、浅野忠信、窪塚洋介。そして「シン・ゴジラ」の決定的脇役だった塚本晋也、そして決定的ちょい役だった片桐はいり、いずれも同じポジションニングで大名演。
壮絶な拷問シーンは心臓に悪い。が、同時に、キリシタンを禁圧する日本の立場にもそれなりの合理性がある(それもしっかり描かれている)。ちなみに、私個人として人生で最も恐ろしかった小説はエドガー・アラン・ポーの「落とし穴と振り子」。信仰と弾圧というテーマは世界のほとんどどの国でも理解されるだろう。
小説は中学時代に読んだきりなので脚本の細部の違いなど全く分からず。ただ、本当のラストシーンは、少なくとも私の記憶する限り決定的な違いがある。原作がああいう終わり方なのにも関わらずあえてこれを描くのが米国映画だとも言えるし、遠藤文学が行間で語っていることを映像化しただけ、とも言える。私個人はこのラストシーンを支持する。あってよかった、ありがとう、と。
宗教間の対立がグローバルな不安定要因にさえなっている現在へのなにがしかのメッセージも監督は込めた、のかもしれない。
もう一回観るのは非常にしんどい。が、だからこそ観てよかった、と心から思えた、そんな一作であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遠藤周作の"沈黙"をドキュメンタリーで有名なマーティン・スコセッシが映画化。江戸時代初期の日本にやってきた宣教師がキリスト教弾圧を受けて苦悩し、信仰について問い直す姿を描く。
テーマがテーマだけに多方向からの受け止めができるように思う。神の前に独り臨む信仰のありかた、日本と西洋の文化・人間観の違い、それによる信仰の変質、江戸幕府のキリスト教弾圧の苛烈さと為政者の民衆のとらえ方。どれも考えだすときりがなく、この作品でもほとんどは明確な答えが示されていないのだけれど、信仰の勝利だけは最後のシーンで表現されているように思う。でも個人的にはそれは日本を理解し、救うことを捨てた独りよがりの結果としか思えなかった。もうパードレでは無いのだから批判される筋合いはないと返されるかもしれないが。
あと、キチジローが何度も放免されているように、弾圧はあくまで表面上従えばよく、心の中まで完全に縛ろうとしない(やりようもないのだが)態度はある意味合理的で、日本的でもあるなあと思った。 -
強い信念は誰から見ても美しいと思うけど、わかりやすいものにこだわると本質を見失う。カトリックだから当然?なのかもしれないけど、わかりやすいから信じるための根拠が強まる気がする。だからパライソを求めて頑張ろうとする。でも、そんな根性論よりも大事なことがあるんだと思う。
劇中の村民って、キリシタンとしているわりにあんまりキリスト教を理解していなさそうだったのに、あんなになれるのはまたなんとも悲しいというか。報酬としてのパライソじゃなくて、結果論としてのパライソであるべきなんじゃないのかな。
本→映画だと不満が出そうだったので、未読のまま。これから読むつもり。一番最後はホッとするけどオチづけみたいな感じもする。そこはうやむやでも別に良かった気がする。 -
原作を読んだのが随分前になるので、記憶も曖昧だけど・・・
宗教と弾圧の歴史は悲しい。ただただ悲しい。物語の中だけではなく歴史の史料として残されている現実であるが故に悲しい。 -
日本人側の描写がやや原作と違っていた様な覚えがあるので今度また原作を読み返してみようと思ったが、司祭側からの視点で見れば良く作られている映画かな。
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原作に感銘を受けて、映画も鑑賞。
日本の、戦国時代の雰囲気と、どこまでも追いかけてくる日本の役人の残忍さ。
キリスト教の厳かな雰囲気、そしてそれにすがりつく百姓たちの胸を突く苦しみが迫ってくる映画に仕上がっています。
神の沈黙を題材とした映画で、難しく感じるかもしれませんが、教科書では迫害、踏み絵、などと単語で説明されておしまいなところも、いかにその迫害が苦しかったか、信仰を捨てることが辛いことかが、伝わる内容。
原作でも追われる恐怖心、どこまでも執拗な役人の追求が恐ろしく、息苦しいものでしたが、この作品はそれを見事に再現しています。
それどころか、映像でしか出せない余韻、静けさの表現が素晴らしい。
とくに、ヒグラシの声を効果的に使うところに、静けさがあってよかった。
芭蕉の俳句のような、染みるような沈黙。
踏みなさい、踏みなさい、そのために私は十字架を背負ったのだから。
信仰がなくても、なにか感じるところが出てくるはず。
なぜ神は沈黙したままなのか?
神の愛とは?
それが理解できたとき、愛や許し、そういったものの本質がわかるのかもしれません。
私自身は、宗教には属さないものの、神の存在や、見えない世界に興味はあるため、この作品の言わんとしたことは、とても納得できました。
それでも、遠藤周作の信仰の考えに反発はあるようですが、私はこの映画にある、どこまでも寄り添う愛のあり方、自己犠牲のあり方に、キリストの真実の心があるように思います。 -
★★★liked it
『沈黙 -サイレンス-』 マーティン・スコセッシ監督
Silence
原作は遠藤周作の『沈黙』
弾圧される隠れキリシタン&ポルトガル人宣教師
幸せを願って信仰することで、命が奪われるのは悲しい
ロドリゴが村人を助けるための選択
キリスト教神父として否定されたとしても人間らしい
教会、布教よりも大事なものがある
マーティン・スコセッシinterview
神の愛は彼が知っている以上に謎に包まれ、
神は人が思う以上に多くの道を残し、
たとえ沈黙をしている時でも常に存在するということです -
マーティンスコセッシがなぜ遠藤周作のあの沈黙を撮るのか?そしてそれがなぜイッセー尾形なのか?という問いに対する答えは映画を見てもわからないのだけれど、凄い映画だった。これが、資本主義の世の中で作られるという奇跡というか。