学習する組織 ― システム思考で未来を創造する [Kindle]

  • 英治出版
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感想・レビュー・書評

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  • テーマはいいが、全体像が捉えづらく、とくに後半は記述が冗長で、抽象的、自己啓発的な内容が多い。

    本書では5つのディシプリンを「システム思考」「自己マスタリー」「メンタル・モデル」「共有ビジョン」「チーム学習」とし、それぞれのディシプリンを統合して体系を作るためにとくに重要である「システム思考」が第5のディシプリンであるとする。原題である『The Fifth Discipline』はこのコンセプトを表したものだろう。捉えどころのないそれぞれのディシプリンとその関係性について、本書の全体を通して曖昧な状態が続く。

    「システム思考」で紹介されている因果ループ図は、システムの全体を考慮すべきだという主張は理解こそすれ、レバレッジを見つけられるまでなのだろうと思うが、システムのどこまでどのように考慮すべきなのかが曖昧である。考えるべき問題が先にあるのか、考えるべきシステムの境界についての認識が先にあるのか、指針がわからない。ループの中にある特性を表す小さな絵は、複雑で手書きできるようなものではない。
    因果ループ図を学ぶのは他の文献をあたった方がよいと感じた。メンタル・モデルなど他のディシプリンについても、応用を考えるなら他の文献でより具体的に学ぶ必要があるだろう。

    システム思考の例としてあれだけの文章量を割きながら、「ビール・ゲーム」で好成績を出すために必要な指針は「届いていないビールを念頭に入れる」「パニックに陥らない」と曖昧であり、ゲームに勝つための具体的な方策の記述すらない。

    本書の中盤、第14章「戦略」の冒頭の文章がこの本の傾向をよく表している。

    > 以前からわかっていることだが「学習する組織」を構築できる特効薬などありはしない。公式も「三つのステップ」も「七つの方法」もない。だが、見事な結果を、しかも楽しみながら生み出す職場環境を築くことについては、これまで多くの学習がなされてきており、今なお、その学習は続いている。...

  • 古来、リーダーとして求められるのは、黙ってその人についていけば、なぜかよくわからないけどうまくいく、というような英雄的な存在感だったのかもしれない。しかし本書でいうような、現代を生き抜く組織、学習する組織において、そうしたリーダーは機能しない。学習する組織において、リーダーは設計者であり、教師であり、執事(スチュアード)である。という。そこに所属するメンバーがいかにうまく活躍できるようにするか、そのためのお世話をするサーバントであることが、ここでのリーダーの要件なんだね。本書で描かれているのは、個々のリーダーではないんだ。学習する「組織」、集団としていかにうまく機能できるようにするか、そこに所属する人が成長し、生き生きとしていられる場をつくるか、なんだね。

     稲盛和夫や西水美恵子のような日本人についても、あれこれ描かれていた。けっこうな大著で、学ぶべき話は多々書かれているので、折に触れ、また読み返したいと思った。

  • めっちゃ長くて読むの大変だけど、システム思考が理解できる。これを読んでから構造的に考えるクセがついた。社会人になった時に一度は読むべき。定期的に読み直したい。

  • ベストセラー経営書だが、正直なところ文章が固く、読みにくい。

  • 文字が多くて難解。短縮すると
    ①全体像を掴む:仕事している領域を超えて、上位を掴む。ビジネスモデルの把握や顧客を理解していないで、目の前の仕事だけしていれば、育たなくて当然。
    ②前提・思い込みの排除:全体像と目標から逆算して、今の行動を覆す。前例に習って良いことは少ない。
    ③共有ビジョンを持つ:チーム全員が共通してビジョンを持つ
    ④個人ビジョン:共有ビジョンを個人ごとに落とし込む
    ⑤チーム学習:共有ビジョンと個人ビジョンを達成させるためにチーム全体で考える
    それっぽいことばかり書かれているが、意外に①②ができていないことは多く留意が必要。

  • 「学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)」とは、変化に柔軟に適応し、進化し続ける組織のことです。転換期を迎えている組織のあり方や職場での働き方について参考になる内容です。

  • 【学習する組織のディシプリン】
    ①システム思考:全体を明らかにする仕組み
    ②自己マスタリ:自分たちのビジョンを常に意識すること
    ③メンタルモデル:自分自身がどのように理解しているか、前提・思い込みがないかを考えること。
    ④共有ビジョン:組織全員が共通で持っているビジョン
    ⑤チーム学習:①から④を前提として、チームメンバーが考えること

  •  長い。。。日本企業や日本人の事例が多くてうれしかった。


    ■学習する組織のディシプリン
    ①システム思考:パターンの全体を明らかにして、それを効果的に変える方法を見つけるまての概念的枠組み
    ②自己マスタリー:継続的に私たち個人のビジョンを明確にし、それを深めることであり、エネルギーを集中させること、忍耐力を身につけること、そして、現実を客観的に見ること
    ③メンタル・モデル:私たちがどのように世界を理解し、どのように行動するかに影響を及ぼす、深く染み込んだ前提、一般概念
    ④共有ビジョン:個人のビジョンを共有ビジョンにつなげる
    ⑤チーム学習:チームのメンバーが、前提を保留して本当の意味で「共に考える」能力である。

    ■7つの学習障害
    ①「私の仕事は○○だから」
    ②「悪いのはあちら」
    ③先制攻撃の幻想
    ④出来事への執着
     私たちが生き残るうえでの最大の脅威は、突然の出来事によってではなく、ゆっくりとした緩やかなプロセスによるものだ。
    ⑤ゆでガエルの寓話
    ⑥「経験から学ぶ」という妄想
    ⑦経営陣の神話

    ■システム思考の法則
    ①今日の問題は昨日の「解決策」から生まれる
    ②強く押せば押すほど、システムが強く押し返してくる
    ③挙動は、悪くなる前に良くなる
    ④安易な出口はたいてい元の場所への入口に通ずる
    ⑤治療が病気よりも手に負えないこともある
    ⑥急がば回れ
    ⑦原因と結果は、時間的にも空間的にも近くにあるわけではない
    ⑧小さな変化が大きな結果を生み出す可能性がある―が、最もレバレッジの高いところは往々にして最もわかりにくい
    ⑨ケーキを持っていることもできるし、食べることもできる―が、今すぐではない
    ⑩一頭のゾウを半分に分けても、二頭の小さなゾウにはならない
    ⑪誰も悪くはない


     意志力には多くの問題があるが、狭い意味での成功しか眼中にない人はまずそれらに気づかないだろう。第一に、方法に無駄が多い。システム思考の用語で言えば、レバレッジなしで行動することになる。目標を成し遂げはするが、それまでの努力は膨大であり、ときには疲労困憊し、成功しても、それだけの価値があっただろうかとの疑問が頭をもたげる。皮肉なことに、意志力の虜になっている人は、克服すべき障害、退治すべきドラゴン、征服すべき敵を実は自分から探し求めることがある―自分自身にも他者にも自分の能力を思い起こさせるために。第二に、相当の意図せぬ結果を招きがちだ。仕事では大いに成功したにもかかわらず、意志力の達人は二度も結婚の離婚を繰り返したり、子どもとの関係が最悪になったりすることがしばしばある。どういうわけか、仕事ではうまくいく断固たる決意や目的志向も家庭生活ではさっぱりうまくいかない。


     最も生産的な学習は、通常、主張と探求のスキルが融合された場合に起こる。別の言い方をすれば「相互探求」である。つまり、全員が自分の考えを明らかにし、公の検証にさらすのだ。それによって、防御的な行動に走ることなく、弱みをさらけ出せる雰囲気が生まれる。

    ■探求と主張のバランスをとるディシプリンを学ぼうとするときの指針
    自分の考えを主張する場合
    ・あなたの推論を明らかにする
    ・相手にあなたの考えを精査するよう促す
    ・相手に別の意見を出すよう促す
    ・相手があなたとは違う考えをもっていれば、それを積極的に探究する
    相手の考え方を探求する場合
    ・もしあなたが相手の考えについて何か仮定しているなら、その仮定をはっきり述べ、それが過程であることを認める
    ・あなたの仮定の根拠になっている「データ」を提示する
    ・相手の反応に本当に興味がないなら、質問する必要はない
    袋小路にぶつかったら
    ・どんなデータや論理があれば考えが変わり得るのか聞いてみる
    ・新しい情報が得られそうな実験をいっしょに考える道があるかどうか聞いてみる
    あなたか相手が自身の考えを表現したり、ほかの考え方を試したりするのをためらうなら
    ・相手になぜ話せないのかを話すように促す
    ・もし双方がそうしたいと望むなら、協力して障壁を克服する方法を考えてみる

    ■システム原型
    ①遅れを伴うバランス型プロセス
    ②成長の限界
    ③問題のすり替わり
    ④特別な原型―介入者への問題のすり替わり
    ⑤目標のなし崩し
    ⑥エスカレート
    ⑦強者はますます強く
    ⑧共有地の悲劇
    ⑨うまくいかない解決策
    ⑩成長と投資不足

  • ある事象を一部ではなく全体(システム)で考える「システム思考」の本。システム思考を学ぶつもりで手に取ったけれど、それ以上に組織をより良くする話が詰まった本でした。

    最も私に刺さった文として『リーダーシップの役割とは、「船の設計者」である』というものが挙げられます。リーダーとは船を導く「船長」の役割だけだと思われがちだが、その船がどのように動けるかを設計するのもリーダーの役割だ、という意味合いです。

    ボリュームのある本ですが書かれている内容も濃く、多くの深い言葉が詰まっています。何度も読み返したくなる、と感じました。

  • 私たちが戦略的な会合に人々を集める際、私が管理することはただ一つ、場の構築と意図(真に必要性があると思うこと)の構築です。それ以外は管理しません。管理は、その場にいる人たちが会話と相互作用を通じて行うので

    本当に組織にとって重要なものに集中して取り組みたい。そのためには、何に注力すべきかをしっかりと考える時間が必要。そのためには、ある程度の時間の確保が必要。そのためには、無駄な作業の徹底的な洗い出しと効率化が必要。

    というわけで、今は無駄だと思う作業を徹底的に潰しています。これ続けていると、重要なものを考える時間が取れないくらい。本末転倒な感じがします。ただ、誰もやってくれる感じがしていないので、自らが立ち上がるしかない感じです。

    これでみんなの時間を作れるのなら、私以外の誰がが重要なことを考えてくれるのではないかと期待しています。自分でなくとも、誰かが取り組んでくれればいいはず。

    独りよがりではなく、効率化も効率的に取り組める仕組みがあればいいな、と思います。

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