彼らが本気で編むときは、 [DVD]

監督 : 荻上直子 
出演 : 生田斗真  柿原りんか  ミムラ  小池栄子  門脇麦  柏原収史  入江海翔  りりィ  田中美佐子  桐谷健太 
  • ジェイ・ストーム
4.04
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本棚登録 : 263
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4580117626356

感想・レビュー・書評

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  • 荻上直子監督の作品って独特ジャンルではあるので、多分好き嫌いはっきり分かれると思います。ただしこちらは私が今まで観た荻上作品のどれとも違う、ポワポワしてないし、もたいまさこさんも出てこない、全く新しいジャンルでした。

    内容はトランスジェンダーのリンコさんとその恋人まきおくんの家に、母親にブチネグレクトされた、まきおくんの姪っ子ともちゃんが転がり込むことから始まった不思議な疑似家族の物語。

    ちょっとだけ、「チョコレートドーナツ」みたいですが、あれを日本の文化に合わせて描いた感じ?
    とにかくこの作品、脚本がしっかりしているので、感情論だけじゃなくロジックとしてしっかりしているので、荻上さんらしい、ちょっとシュールな演出もありながらも、現実味があり、身近にリンコさんたちのような人が居ない私でもストンと心に入ってきます。

    母になりたくてもなれない女。
    母に抱きしめてもらえない娘。
    娘の愛し方が分からない母。
    親に理解してもらえない少年。
    なりたくてもそこに到達しない人たちが、それを少しずつ享受していくのを見届けなきゃいけなくて、なんか最後まで悲しくてちょっと苦しい。

    メイン3人だけじゃなくて、それを取り巻く人たちの人間像がしっかりと生きて描かれているおかげで、この映画の中では描いていないその奥にあるかもしれないストーリーも想像できてきて、それも含めて劇中何度も泣かされました。(普段、荻上作品を観ない主人でさえも結構泣いてた。)

    リンコさんがよくしている編み物をしている理由も編んでいたものの正体も、ちょっと笑えてちょっと切ない。おかげで春先なのになんか今からなんか編みたくなってきた。

    桐谷健太の演技だけは気になってしょうがなかったけど、生田斗真が演じるリンコさんは役は思ったよりは違和感ありませんでした。 むしろゴツいけど、ちょっときれいな人に見えるそのギリギリのラインは絶妙かも。
    ともちゃん役の女の子も初でしたが子どもすぎないクールな感じが自然で好感持てました。

    確かに特殊なストーリーなんですが、全ての人の立場をちゃんと荻上監督が考えて、リサーチもして構成されたのが伝わってきて、監督の持つ母性に溢れた作品でした。

  • 2017年 日本 127分
    監督:荻上直子
    出演:生田斗真/桐谷健太/柿原りんか/ミムラ/小池栄子/門脇麦/柏原収史/込江海翔/りりィ/田中美佐子
    http://kareamu.com/

    小学5年生のトモは母のヒロミと二人暮らし。しかし男にだらしない母親はある日トモを置き去りにしていなくなってしまう。そんな事態にも慣れているトモは、淡々と一人でコンビニおにぎりを食べ、淡々と叔父のマキオの所へ。しかしマキオの部屋ではマキオの恋人でトランスジェンダーのリンコさんが一緒に暮らしていた・・・。

    トモ役の女の子がツンデレでとても可愛かった!「母親である前に女」とか自分で言っちゃう母親は完全にネグレクト、甘えることをしないクールなトモは、それでも平気な顔で日常をおくり、学校でもそれなりに上手くやり、仲良しの幼馴染男子カイくんが「ホモ」と苛められていても学校では無視、自分の身は自分で守る生き方を小5なりに心得ているかに見える。そんな彼女が、トランスジェンダーゆえにありあまる母性愛に溢れているリンコさんの温かさに接しているうちに変わっていく過程がとても愛おしい。個人的になぜか疑似家族ものに滅法弱いので、序盤ですでに涙腺ゆるゆる。

    リンコさんを演じた生田斗真は、もとが整っているから女装しても美人なのだけど、体型のそれなりの男性ぽさは否めないので、出はじめこそ「女装した斗真」だと思ってしまうのだけど、だんだん「リンコさん」にしか見えなくなってくる。仕草とか立ち居振る舞いとか女性に見えるように相当研究したのだろうなという印象。リンコを全面的に受け入れているマキオ(桐谷健太)の懐の深さというか器の大きさというか揺るがない愛情のありかたも良かったなあ。もちろんリンコさんが素晴らしい女性だからこそだけど。

    この映画には、いろんなタイプの母親が出てくる。トモを育児放棄している駄目母ヒロミ(ミムラ)、裕福だけど過干渉で息子を追いつめるカイくんの毒母(小池栄子)、そしてトモの祖母でヒロミとマキオの母(りりィ)もまたヒロミにとっては良い母ではなかった。逆に女の子になりたいというかつての少年リンコを全面的に肯定した豪快母(田中美佐子)もいて、母のありかたは様々。でもやっぱり、この母に育てられたリンコさんはトランスジェンダーゆえに悔しい思いも沢山しただろうに愛情たっぷりだし、トモの母親は自分の母親に愛されなかったからトモへの愛情の注ぎ方もわからないのだろう。

    わかりやすい伏線だったけど、ホモの少年カイくんに対して「学校では話しかけないで」と言っていたトモが、リンコさんの愛情を受けるうちにまた一緒にカイくんと遊ぶようになり、終盤、毒母に追いつめられたカイくんを励ます言葉を言うシーンは胸アツ。成長して強くなったトモは頼もしかった。

    だからラストは前向きな別れで、マキオがトモに言った言葉もそれを象徴していたと思う。あの母親よりトモのほうがもう大人なんだよなあ。きっと彼女は駄目な母親を支えてめげずに強く生きていくのだろうし、これからは学校でカイくんが苛められたら助けてあげるんだろうし、ときどきはリンコさんとマキオにも会いに行って一緒に編み物をしたりするのだろうし、そういった明るい未来を想像させる良い終わり方で、良い映画だった。

  • 最後のシーンが特に良かった。余韻まで味わえる終わり方が好き。
    トランスジェンダーは主題ではなく、それぞれに編まれた絆こそが主題である。こういう作品は私の懐にすっと入ってくるなと思う。

    それに、主題ではないが(だからこそなのかもしれない)、説得力を持たせるには技量を要するテーマには違いなく、その辺りは見事だとも思った。

  • 生田斗真すごい

  • 2022/03/21
    よかった…。みんなで108の煩悩を燃やすシーンがいい

  • 青臭い人間の優しい話。

  • 生田斗真さんが優しい女性に扮し恋人の姪と親子の情を築いてく。

  • 記録。

  • 機能不全家庭をどうにかするには、個が個を優しく包み込むことしかないのかなぁ…と感じた映画でした。
    セクシャルマイノリティ、ネグレクト、過保護など、色々な問題を抱えながらも、結局は人に優しくしたくなる作品です。優しくなりたい人や、大切な人と穏やかに映画鑑賞したい人におすすめ。



    何があっても、何を言われても、飲み込んで、踏ん張って我慢して、怒りが通り過ぎ去るのを待つの。
    私はね、すっげー悔しいこととか、死ぬほど悲しかったことを、全部チャラにするの。ざっけんじゃねーよ。ちっくしょーって。一目一目編みながら。

    きっと今までの人生で、これでもかってぐらい周りから憎しみや誹謗中傷や蔑みを受けてきたんだろうに、リンコさんはすごく凜としていて温かくて美しい。
    きっと親御さんが「自分の娘が一番大切!」って子どもに豪語できるぐらい、全力で味方してくれる人だったからだろう。
    優しさは連鎖する。
    最後、リンコさんはトモに、ニセ乳を贈った。母からもらったのと同じように。まるで親子のように、優しさも、きっとトモに受け継がれる。トモの優しさは母親へ、そしてまたその母親へ…と、機能不全家庭が好転することを信じたくなるラストだった。


    そしてマキオが最高の人でした。
    「全部受け入れます」っていう言葉、優しい言葉選手権宇宙一位。
    リンコさんの体や性のことだけじゃない。それによって世間から受ける批判や、辛い過去や、そういう全部を受け入れるっていう言葉…と捉えるのは拡大解釈すぎるか?
    マキオはあの母の養育を受けてきたのに、なぜそんな優しくなったんだろう。
    リンコさんから連鎖した優しさだとしたらいいなぁ。
    自分からはじめて、いつか自分にも優しさが返ってくると信じて、人に優しくし続けたい。

  • よかった。すごくすごくよかった。生田斗真が綺麗で、とにかく綺麗で女性にしか見えなかったよ、わたしは。最後にトモがリンコとの生活を選ばなかったところも作品として好き。チンチンをたくさん編んでお焚き上げする海のシーンも好き。病院で男性部屋に入れられ1人仕切りの中でごめんねっていうところ、すごくすごく悔しくてわたしも泣いた。素敵な作品だった。

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著者プロフィール

荻上直子(おぎがみ・なおこ)
1972年、千葉県生まれ。映画監督、脚本家。千葉大学工学部画像工学科卒業。1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画製作を学び、2000年に帰国。2004年に劇場デビュー作「バーバー吉野」でベルリン映画祭児童映画部門特別賞受賞、2017年に「彼らが本気で編むときは、」で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞など、受賞多数。他の監督作に「恋は五・七・五!」「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」、著書に『モリオ』がある。

「2021年 『川っぺりムコリッタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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