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感想・レビュー・書評
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地球上から女性がいなくなったら男性はすっかり自信を失うだろうという主張は、笑えるほどに的を得ている。
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本書は、ヴァージニア・ウルフが小説家として、そして個人として、もっとも充実していた時期に書かれた作品だそうだ。
1928年にケンブリッジ大学の女子カレッジで行なわれた講演をベースにした、フェミニズム批評の古典的作品である。
〈女性と小説〉について話して欲しいと言われて、「事実よりも虚構(フィクション)に真実がたくさん含まれることがある」というウルフの考えから、小説家として小説(フィクション)で語られている。
本書も「意識の流れ」という表現を用いており、慣れない人は読解に時間がかかると思うが、訳注と解説があるため読みやすい。
経済的な基盤のない女性が、作家としての自立を困難にしてきたかという内容が語られている。
女性が小説や詩を書こうとするならば、「年収500ポンド」と「ドアに鍵のかかる自分ひとりの部屋」がいると、ウルフは主張する。
しかし、「お金」と「部屋」の問題だけを語られている訳ではない。
他の女流作家を評価していたり、男性作家についても、女性的価値観を兼ね備えている点で、トルストイよりもプルーストを評価するといった内容も見られている。
本書で「シェイクスピアに優れた才能のある妹、たとえばジュディスという名の妹がいたらどうなったでしょうか?」と、想像で書かれている部分もあり、そこでも女性の肩身の狭さが、リアルに描かれている。
“過去何世紀にもわたって、女性は鏡の役割を務めてきました。鏡には魔法の甘美な力が備わっていて、男性の姿を二倍に拡大して映してきました。その力がなければ、たぶん地球はまだ沼地とジャングルのままでしょう。数々の栄光ある戦争も、きっと遂行されなかったことでしょう。”
というウルフの言葉はいかに女性が男性を立てるために存在していたかが強く伝わってくる。
現代の社会は男女平等があたりまえ。それぞれの人が鏡として存在し、自分を見つめる時代。人を通して等身大の自分を見つめていく時代だと思う。
ウルフの生きた時代、社会では考えられないような、むしろウルフが目指した社会であると思う。
もし、ウルフが今の時代を生きていたらどのような言葉を残すだろう。
逆に、私はウルフの生きた時代や社会の空気感を知らなかったので、本書を通じて実感する良い機会になった。
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