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感想・レビュー・書評
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焼け跡東京グラフィティ、遂に最終巻。
中国の戦地で、部隊で2人だけ死地を切り抜けた元班長・川島と元部下・門松。
命を落とした部下たちの遺族に金を届ける慰霊の旅も一通り済ませた。
戻って来た東京では、新しい時代を迎えようと歯車が回り始めていた。
戦後の復興の一翼を担ってきた闇市が、GHQの意向で消えようとしていた。マーケットで食いつないできた者は、別の生き方を探さねばならぬことになる。
心機一転、新たな商売を始めようかと思う川島だが、そんな彼の前に、戦地の「死神」が現れる。
甦る戦地での日々。
現地の村人たちを拷問に掛けた挙げ句の非道な殺戮の陰には、戦争に乗じて甘い汁を吸おうとする者がいた。兵士、農民、八路軍。多くの者があっけなく命を落とす傍らで、私腹を肥やす者たち。
「死神」はそんなやつらの1人だった。
一度は新しい時代に向けて気持ちを切り替えようとした川島だが、東京の雑踏で出会った「死神」は、彼の意識を一気に戦地に連れ戻す。
こうなってはもう、落とし前を付けずには終われないのだ。
本巻では、部隊の最後も描かれる。虚しい結末は濃い闇を孕む。
膨大な死者。理不尽な日々。支配する虚無。
誰を許して
誰を許さず
誰の死に花を供して
誰の死にこそ唾を吐き
川島の独白が苦く重い。
正義の戦争など詭弁だ。正義のための死など、そこにはなかった。
混沌を包み込んでいた闇市の崩壊は、戦争の傷を抱えるものに過去の清算を迫る。
川島は1つの決断をする。負の遺産を地獄に引きずっていく覚悟を決める。
結末近くで、1つの命が生まれる。
女たちは命を囲む。
アプレゲールのカンナが命を寿ぐように歌い踊る。その姿は、闇の後、光を呼び戻したアメノウズメのようですらある。
手塚治虫が「火の鳥<黎明編>」で、次世代の命を宿すウズメを描いたように、山田参助は新世代を切り開くものとして、彼女たちを描いたのだ。
生き続けるものたちに幸あれ。
川島は、部下たちの位牌代わりの小石を持ち続けていた。
それを門松が引き継ぐ。
終幕の星空が目にしみる。
あれよ、星屑。 -
最終巻。よかった。仲間を失いつつ自分だけ生き残ってしまった主人公。“戦後”の世の中でひとり続く“戦中”にどう落とし前をつけるかが一貫したテーマだったが、うまく着地できたと思う。
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「なるほど如何にも済んだことです/しかし済んだことをなかったことには自分はできんのであります」
あーーーー終わってしまった…
めちゃくちゃ絵のうまい人がめちゃくちゃ繊細な話を紡ぐんだから参る。