戦略的交渉入門 (日本経済新聞出版) [Kindle]

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  • 交渉学の基礎についてまとまっているが、ところどころ日本語として違和感のある表現がある。(やや校正が不十分ではないか)
    Kindleがセールだったので購入したが、どうせなら別の交渉学の本をみたい。

    以下、簡単なまとめ。

    ====

    ▼心構え
    ・「正論だから受け入れるべきだ」という思いだけで交渉しても、結果はついてこない。
    ・賢明な合意=当事者双方の正当な要望を可能な限り満足させ、対立する利害を公平に調整し、時間がたっても効力を失わず、また社会全体の利益を考慮に入れた解決
    - 特に重要なのは、「当事者双方の正当な要望が可能な限り満足されているかどうか」という部分。
    - 取引相手の利益と自己の利益を調和させ、その結果の継続的関係を重視する思考が大切。
    ・交渉相手が背後に抱えている事情について、十分理解しているという姿勢を見せてあげることによって、相手とのつながりを深めることができる。
     =交渉相手の問題は相手が解決すべきであり、私たちとは関係がないという態度をとるのは望ましくない。

    ▼アンカリングとは、最初に見た数値や情報が印象に残り、それが基準点(アンカー)となって、その後の判断が左右される心理現象。

    ▼パワープレーでは、仮に自分の利益を確保することができて、相手に「勝利した」としても、満足しているのはパワープレーヤーだけ。交渉相手は、強い反感や心理的な反発を感じている。=持続的な契約関係を締結するような交渉には向いていない。

    ▼交渉の事前準備:ファイブ・ステップ・アプローチ(Five Step Approach)
    ①状況の把握(状況把握)
     1.利害関係者は誰/2.交渉を取り巻く外部/3.交渉を図式
    ②ミッション
    ・何のために交渉し、交渉して合意することによって、最終的にどんな問題を解決したいのか。
    ③自分の強みを探す
    ・交渉に行く前に、自分の強みをできるだけたくさん用意してから交渉に臨む。
    ・交渉における強みは絶対的な優位性だけではなく、相対的に優位であったり、交渉相手は持っていないが私たちは持っているという程度でもよい。
    ④ターゲティング(目標設定)
     1.交渉で話題になる協議事項を特定する/2.協議事項に関して、相手に対する提示条件(金額)について決定する/3.自分が譲歩できる最低ライン(金額の場合は 留保価格)を決める
    ・留保価格=自分が譲歩できる最低の金額。
    ・ZOPA(ゾーパ、Zone of Possible Agreement、合意可能領域)=自分の留保価格と相手の留保価格の間。
    ・合意は点ではなく、幅で考える。★
    ⑤合意できなかったらどうするかを考える(BATNA)
    ・BATNA(バトナ、Best Alternative to a Negotiated Agreement)=合意できなかった時の代替案
    ・効果的な合意を形成するために、合意できなかったときの打ち手をあらかじめ考えておく。
     STEP1
     ・決裂後の状況:現在の取引が成立しなかった場合、客観的にどうなるか。
     ・損害の予測:この取引がなくなったときの実際の損害。
     STEP2
     ・交渉決裂時の代替案をできるだけたくさん考える。
      - 代替的取引先の探索
      - 現在のビジネスモデルの変更は可能か。
     STEP3
     ・BATNAを選ぶ
      - 検討した代替案のから選択する OR 選択肢を組み合わせてBATNAを作る
     ・短期的利益か長期的利益
      - 現時点で最も損失の少ない代替案を我々は選択しがち。長期的な視点も忘れないこと。

    ▼交渉では協議事項中心に、交渉のプロセスを管理する。
    ・協議事項を抽出・整理・決定し、順序を決定する。(積極的に行い主導権を確保)
    ・合意しやすいところから話し合う。

    ▼交渉戦術
    ・「今後のおつきあい」というフレーズに安易な譲歩をしないこと。
    ・ビジネス交渉では、交渉戦術を駆使するよりも、交渉戦術には引っかからないことの方が重要。

    <戦術例>
    ・よい警官・悪い警官戦術(グッド・コップ、バッド・コップ(Good Cop Bad Cop))
     ・二人の交渉者が、悪意に満ちた意地悪な人物と、交渉相手に好意的な人物を演じる。
    ・ドア・イン・ザ・フェイス戦術
     1.交渉相手が受け入れられないような要求を提案する
     2.交渉相手はもちろんその提案を断る(かなり動揺はする)
     3.直後に最初の要求を引っ込めて譲歩案を提示する
    ・フット・イン・ザ・ドア戦術
     ・最初に小さな要求を相手に提示してこれを受け入れてもらう、その後、徐々にその要求を引き上げていく。・最後通牒戦術
    「今日(今回)で最後!」をちらつかせて合意を迫るやり方。
    ・おねだり戦術
     ・合意直前/直後をねらって、追加条件を提示してのませてしまう戦術。

    ▼オプション(附帯条件)で決着をつける
    ・どんな交渉でも、まず強みを探す。
    - 自分たちの強みを活かした選択肢を作る。
    ・自分にとって負担が小さく、相手に何らかのメリットのあるアイデアや選択肢を考えて提示する。
    - 私たちの強みが、交渉相手にどのような利益となるのかを具体的に説明すると効果的。
    ・自分にとって負担が大きいオプションは切り札にする。例)金額の譲歩。

    ▼相手に譲歩を要求するときは、特別なオファーを求める。
    ・否定すると反発される。

    ▼相手に対する提案は、常にベストオファーであることを主張し、簡単に譲歩しない。
    ・簡単に譲歩しないことがお互いの信頼関係を構築するうえで不可欠。(簡単に譲歩できるような提案を行ったということにならないように)

    ▼交渉力とは、4つの交渉姿勢をあらゆる状況下で維持することができる能力。
    ①対立にあわてず、適切に自己主張し、相手の価値を理解する努力を継続すること。
    ②表面的な態度や、脅し、ごまかしに惑わされず、真意を見抜き、毅然と対応すること。
    ③交渉相手の圧力に屈して安易に譲歩せず、時には、意見の対立を恐れず議論し続けることができること。
    ④どれほど対立的な状況が深刻化したとしても、最後まで対話による問題解決をあきらめないこと。

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著者プロフィール

慶應義塾大学法学部教授、ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー、ホワイトアンドケース法律事務所特別顧問(弁護士)、日本説得交渉学会会長、交渉学協会理事長、社会実学研究所所長。
1959年生まれ。1981年慶應義塾大学法学部卒業、1985年ハーバード・ロー・スクール修士課程修了(フルブライト奨学金、ハーバード大学奨学生)、1987年慶應義塾大学大学院法学研究科民事法学専攻博士課程。
ブルッキングス研究所研究員、アメリカ上院議員事務所客員研究員、ジョージタウン大学ロー・スクール兼任教授、慶應義塾大学総合政策学部教授を経て、1997年より現職。この間、慶應義塾大学国際センター副所長、同大学産業研究所副所長、同大学外国語学校長を務める。
専門は経済法、国際経済法、交渉学。
主要著作に、『交渉の戦略』(ダイヤモンド社、2004年)、『WTOガイドブック第2版』(弘文堂、2006年)、『企業のコンプライアンスと独占禁止法』(共著、商事法務、2006年)、『法と経済学』(共著、東京大学出版会、2007年)、『ビジュアル解説 交渉学入門』(共著、日本経済新聞出版社、2010年)、『独占禁止法 第4版』(共著、弘文堂、2013年)、『交渉学入門 ハーバード×慶應流』(中公新書ラクレ)(中央公論新社、2014年)、『戦略的交渉入門』(日経文庫)(共著、日本経済新聞出版社、2014年)、『16歳からの交渉力』(実務教育出版、2015年)、『リーダーシップを鍛える「対話学」のすゝめ』(共著、東京書籍、2021年)ほか。

「2021年 『競争法におけるカルテル規制の再構築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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