- Amazon.co.jp ・電子書籍 (242ページ)
感想・レビュー・書評
-
ギルガメシュは今から4000年以上昔のメソポタミアで栄えた
シュメールの英雄である。
とても古いこの物語が読めるのは石板が出土したからではあるが、
脱落部分も多数あり、それがかえって研究や発掘が待たれているようでワクワクもするし、
複数の箇所で文章の推定もなされているが、そういった研究の跡にすごいものだと驚きもする。
さて、神話というのは現代の小説などとは違い
心理描写などはほとんどなく、
イベントと人物の名指しが中心となることが多い。
これは内面というものが近代に発見されたものであるという見方もあるし、
むしろ外部に現れている英雄的、あるいは神話的な縁起を呼び出すことに
着眼点があるからと考えてもいいだろう。
本作もそのような形で非常にサクサクとした展開でとても楽しい。
登場人物はウルクの王でもある「ギルガメシュ」と
そのライバルとして神に創られた野人「エンキドゥ」この2人が中心となって進む。
関係ないとは思うけれども、RRRを観たこともあって
ラーマとビームの関係だと思ってずっと読んでました。
出会った最初はお互いの力比べのような争いがあって、
互いを認め合うようになってから、森の化け物退治にいったり、
わがままな神の試練に対抗したり、かなりエンターテイメントな物語だったので
最後までそのイメージでいけたような気がする。
そして、シンプルな作りの叙事詩であるからこそ、
人間に対する洞察、残そうとした卓見のようなものも
すっきりと入ってくる。
最後に、このちくま学芸文庫版は解説も充実しており、
前提知識がなくても楽しむことができた。
>>
ギルガメシュが冠りものを身につけると
ギルガメシュの立派さに大女神イシュタルは目を上げた
「来てください、ギルガメシュよ、私の夫になってください(p.77)
<<
唐突な求婚。
ギルガメシュもギルガメシュで
「え、あなたの今までの恋人たちはひどい捨てられ方してるって
聞いてるんで勘弁してください」とさっくり拒否。
ここからさらにイシュタルが怒るまでテンポが良すぎてコント感すらある。
神話は神を呼び出すことにより神ではない人間の輪郭を際立たせるところがあるように
古代の文章は現代の文章との差異をあらためて際立たせるものもあり、
欠落などで読みにくい面もあるが、面白い刺激のある読書になると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間が抱く友情、自尊心、達成感、嫉妬、不老不死への欲求は、1300年前から変わらないのだと思った。ところどころ虫食いになっているのは斬新で面白かった
-
世界最古の文学というふれ込みのギルガメシュ叙事詩は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通聖典である旧約聖書に多大なる影響を与えた。なかでも「大洪水」はノアの方舟とほとんど変わらぬ筋書であって、深い繋がりが観られる。付論として紹介されている「イシュタルの冥界下り」においては天照大神の岩屋隠れに酷似する。事実はともかく、神話の基本とはそもそも歴史のメタファーであるのだから、啓蒙的な内容は世界に広がったという発想も無碍には否定できない。同時に、粘土板として残されたこの最古の記録もまた、単にチグリス・ユーフラテスの春季氾濫から得た教訓という枠に留まらず、さらに前世代の教訓をアレンジした結果なのかもしれないと、思い知らされた。
-
なんだかタイトル買いしてしまった。
ギルガメシュっていうと、とある世代は某テレビ番組名を思い出すのではないだろうか・・・。
たまに神話系の本を読むのだけど、これは詳しく知らなかった。
暴君半神半人ギルガメシュ(初夜権を行使するとかいう話が精力絶倫説に至り、テレビ番組名に結びついたらしい)、それを抑えるために生まれたエンキドゥ。その邂逅と闘い、その後の友情(っていっていいのかな)、共に戦う姿。からのエンキドゥの死。それから不死をもとめるギルガメシュ。。。
本の最初は石版で見つかったものをつなぎ合わせて和訳してあるものがそのまま。その後解説になる。
そこでちょっとびっくりしたのが、ギルガメシュがエンキドゥにフンババという森のモンスター討伐に共にいこうと説得する場面。ギルガメシュはエンキドゥに
「進め、恐れるな」
といってくれといっている!
これで思い出したのが、村上春樹の『かえるくん、東京を救う』!
かえるくんは片桐に、みみずくんとの闘いの場において応援して欲しいというのよね。これ同じモチーフじゃないか!!!
そしてこのかえるくんにたどり着いたのも、『輪るピングドラム』を見ていて出てきたのであって、かえるくんをみていたら、村上春樹が恐怖は想像力から来るというあたりがコンラッドの『闇の奥』の影響らしくて、もう最近読んだ本が全部つながっている不思議!!!!
というところに大興奮。
この本自体は、学術的にどのように出来たかというのを丁寧に見せてくれていて、こういう分野の方の学びがわかってすごく面白かった!思いつきで買ってみるのもいいなと思った。 -
世界最古の文学作品『ギルガメッシュ叙事詩』を翻訳・解説した本。
『ギルガメッシュ叙事詩』は、ウルク市の王ギルガメシュが不死を求めて冒険する物語。分身エンキドゥとの友情や杉の森の怪物フンババ退治などが描かれています。 -
NDC(9版) 929.71 : その他の東洋文学
-
半分は解説に割かれている。欠損部分が多く、解説や脚注がなければさっぱりわからんと思う。欠損部分が全部見つかればいいのになぁ。
この本の元版が出版されたのが1965年。それから研究は進んでるのかな。最新の情報が知りたい。古代オリエント博物館に行くか…。