ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫) [Kindle]

著者 :
  • 筑摩書房
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  • ギルガメシュは今から4000年以上昔のメソポタミアで栄えた
    シュメールの英雄である。

    とても古いこの物語が読めるのは石板が出土したからではあるが、
    脱落部分も多数あり、それがかえって研究や発掘が待たれているようでワクワクもするし、
    複数の箇所で文章の推定もなされているが、そういった研究の跡にすごいものだと驚きもする。

    さて、神話というのは現代の小説などとは違い
    心理描写などはほとんどなく、
    イベントと人物の名指しが中心となることが多い。
    これは内面というものが近代に発見されたものであるという見方もあるし、
    むしろ外部に現れている英雄的、あるいは神話的な縁起を呼び出すことに
    着眼点があるからと考えてもいいだろう。

    本作もそのような形で非常にサクサクとした展開でとても楽しい。
    登場人物はウルクの王でもある「ギルガメシュ」と
    そのライバルとして神に創られた野人「エンキドゥ」この2人が中心となって進む。

    関係ないとは思うけれども、RRRを観たこともあって
    ラーマとビームの関係だと思ってずっと読んでました。
    出会った最初はお互いの力比べのような争いがあって、
    互いを認め合うようになってから、森の化け物退治にいったり、
    わがままな神の試練に対抗したり、かなりエンターテイメントな物語だったので
    最後までそのイメージでいけたような気がする。

    そして、シンプルな作りの叙事詩であるからこそ、
    人間に対する洞察、残そうとした卓見のようなものも
    すっきりと入ってくる。

    最後に、このちくま学芸文庫版は解説も充実しており、
    前提知識がなくても楽しむことができた。


    >>
    ギルガメシュが冠りものを身につけると
    ギルガメシュの立派さに大女神イシュタルは目を上げた
    「来てください、ギルガメシュよ、私の夫になってください(p.77)
    <<

    唐突な求婚。
    ギルガメシュもギルガメシュで
    「え、あなたの今までの恋人たちはひどい捨てられ方してるって
    聞いてるんで勘弁してください」とさっくり拒否。
    ここからさらにイシュタルが怒るまでテンポが良すぎてコント感すらある。

    神話は神を呼び出すことにより神ではない人間の輪郭を際立たせるところがあるように
    古代の文章は現代の文章との差異をあらためて際立たせるものもあり、
    欠落などで読みにくい面もあるが、面白い刺激のある読書になると思う。

  • 人間が抱く友情、自尊心、達成感、嫉妬、不老不死への欲求は、1300年前から変わらないのだと思った。ところどころ虫食いになっているのは斬新で面白かった

  • シュメールの神話であるギルガメシュの英雄譚、女神イシュタルの冥界下り、そして解説などが収録されている。かなり欠損部分が多いけれども、様々な言語の限られた断片をつなぎ合わせてここまで物語らしく復元してくださった著者の苦労が偲ばれる。
    エンキドゥとの戦いと友情、男に手を出しては破滅させる女神の求婚をすげなく断るあたりの面白さ、不死を求めるも叶わない終わり方など、完全な状態であればもっと生き生きした語りが読めるのだろうなと思う。それでも、4000年以上前にこんな想像力に満ちた話が語り継がれていたことにわくわくする!
    電子版で読んだものの、注にリンクがないタイプだったのがとても残念。

  • 世界最古の文学というふれ込みのギルガメシュ叙事詩は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通聖典である旧約聖書に多大なる影響を与えた。なかでも「大洪水」はノアの方舟とほとんど変わらぬ筋書であって、深い繋がりが観られる。付論として紹介されている「イシュタルの冥界下り」においては天照大神の岩屋隠れに酷似する。事実はともかく、神話の基本とはそもそも歴史のメタファーであるのだから、啓蒙的な内容は世界に広がったという発想も無碍には否定できない。同時に、粘土板として残されたこの最古の記録もまた、単にチグリス・ユーフラテスの春季氾濫から得た教訓という枠に留まらず、さらに前世代の教訓をアレンジした結果なのかもしれないと、思い知らされた。

  •  なんだかタイトル買いしてしまった。
     ギルガメシュっていうと、とある世代は某テレビ番組名を思い出すのではないだろうか・・・。
     たまに神話系の本を読むのだけど、これは詳しく知らなかった。
     暴君半神半人ギルガメシュ(初夜権を行使するとかいう話が精力絶倫説に至り、テレビ番組名に結びついたらしい)、それを抑えるために生まれたエンキドゥ。その邂逅と闘い、その後の友情(っていっていいのかな)、共に戦う姿。からのエンキドゥの死。それから不死をもとめるギルガメシュ。。。
     本の最初は石版で見つかったものをつなぎ合わせて和訳してあるものがそのまま。その後解説になる。
     そこでちょっとびっくりしたのが、ギルガメシュがエンキドゥにフンババという森のモンスター討伐に共にいこうと説得する場面。ギルガメシュはエンキドゥに
    「進め、恐れるな」
    といってくれといっている!
    これで思い出したのが、村上春樹の『かえるくん、東京を救う』!
    かえるくんは片桐に、みみずくんとの闘いの場において応援して欲しいというのよね。これ同じモチーフじゃないか!!!
     そしてこのかえるくんにたどり着いたのも、『輪るピングドラム』を見ていて出てきたのであって、かえるくんをみていたら、村上春樹が恐怖は想像力から来るというあたりがコンラッドの『闇の奥』の影響らしくて、もう最近読んだ本が全部つながっている不思議!!!!
     というところに大興奮。
     この本自体は、学術的にどのように出来たかというのを丁寧に見せてくれていて、こういう分野の方の学びがわかってすごく面白かった!思いつきで買ってみるのもいいなと思った。

  • 世界最古の文学作品『ギルガメッシュ叙事詩』を翻訳・解説した本。

    『ギルガメッシュ叙事詩』は、ウルク市の王ギルガメシュが不死を求めて冒険する物語。分身エンキドゥとの友情や杉の森の怪物フンババ退治などが描かれています。

  • NDC(9版) 929.71 : その他の東洋文学

  • 本書は1965年に出版され,のちに1998年に文庫化に伴って増訂されたものであり,「ギルガメシュ叙事詩」研究の一つの到達点を示している。

    「ギルガメシュ叙事詩」について,現在残っているのは全体の約半分のみである。また破損箇所も沢山あり復元は困難。本書は,できる限りの原文の翻訳と,必要に応じて物語の概要の補足により構成される。読みにくいのはしょうがない,むしろここまで物語が再構築できることに驚くべきだろう。

    解説よりメモ:
    ・ミショー石・アッシリア学のはじまり・1827年ジョージスミスの発見:大洪水の記述・叙事詩の再構成:イェンゼン「アッシリアバビロニアの神話と叙事詩」・1930年カムベルトムソン「ギルガメシュ叙事詩」・ギルガメシュの実在性・大洪水を記した書物

    「ギルガメシュ叙事詩」のほか,「イシュタルの冥界下り」を収録。

  • 半分は解説に割かれている。欠損部分が多く、解説や脚注がなければさっぱりわからんと思う。欠損部分が全部見つかればいいのになぁ。
    この本の元版が出版されたのが1965年。それから研究は進んでるのかな。最新の情報が知りたい。古代オリエント博物館に行くか…。

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著者プロフィール

1928-2006年。東京生まれ。東京外国語大学フランス科卒、学習院大学文政学部哲学科卒。アジア・アフリカ図書館館長。著書に『文字学の楽しみ』『解読---古代文字』など多数。訳書に『文字』『シャンポリオン伝(上下)』、監訳書に『文字の世界史』『王家の谷』『ピラミッド』など多数。

「2015年 『古代エジプト文字ヒエログリフ入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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