コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法 [Kindle]

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
3.83
  • (23)
  • (31)
  • (19)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 407
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (463ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 約3年ぶりに再読。
    初読時(紙の本)は求めていた内容と違ったので一読しただけだったが、
    今回はこの内容を求めての再読(Kindle版)だったので読書メモも作成。
    じっくりと読み返してみると、示唆に富んでいて改めてとても勉強になった。当たり前だが、その内容を求めているかどうかで、同じ本でもとても大きく印象が異なるのを実感。

    問題解決に向けた考え方もそうだが、
    筆者がもっとも伝えたいのは、社会課題の解決に向けて、きっとこういうことなんだろうと思う。

    企業が解決すべき問題は、顧客課題から社会課題へとシフトしつつあり、その社会課題の持続的な解決のためには、CSV(社会価値を高めつつ、経済価値、すなわち自社の企業価値を高めようとすること)を実現することが不可欠である。
    社会課題に対しても、コンサルの問題解決手法は有効であり、高度な問題解決スキルのある人材が、企業コンサルから、社会システムを変革する立場に流れ始めている。
    持続可能な社会の実現に向けては、人間の英知を結集していくこと、そのような志を持った社会課題解決型の人材が求められている。
    そして、社会課題の解決に貢献できる人材になるためには、「問題解決のスキルを磨く」だけではなく、「自分だけが本当に生み出せる価値は何か」 ということにこだわり続ける必要がある。
    つまり、目指すべきは、問題を解決できる者ではなく、価値を創造できる者である。
    「自分の志は何か?」
    いま、その答えがあってもなくても、考え続けること、再構築し続けることが重要である。



    ==以下、要約==


    ▼「問題解決」は総合芸術。
    ・直観と感性が要求される。
    ・真理より心理。重要なのは、正しい答えを出すことではなく、答えを当事者たちに信じさせること。そして、実行させること。
    ・論破より共感。危機感より使命感に火をつけることが重要。

    ▼課題設定
    ◆仮説を持って見にいく。
    ・「デイワン(Day 1)仮説」を持つ。
    ・仮説思考のポイントは、「仮説を持つ勇気」と「仮説を壊す勇気」。
    ・仮説は、検証するために立てるもの。仮説が間違っていたら修正すればいい。

    ◆問題解決は4段論法
    ①WHAT? 何が問題なのか?
    ②WHY? なぜ、それが問題なのか?(WHY?を5回で本質を深堀り)
    ③WHY NOT YET? なぜまだそれができていないのか? ←問題の本質★
    ④HOW? それができるようになるためには、どうすればいいか?

    ▼構造化
    ◆MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive。
    ・漏れなく、ダブりなく。
    ・「ダブり」を完全に排除する必要はない。「漏れ」は極力排除する。

    ◆構造化(イシューアナリシス)
    ・「イシューツリー」で「課題(イシュー)」をMICEに「サブイシュー」に細分化。
    ・サブイシューに優先順位をつける。(インパクト↑とスピード→の2軸)
    ・インパクト大だが時間がかかるものは、さらに細分化してスピードを上げる。
    ・余計な枝葉を切って割り切る。

    ◆ロジックツリー
    ・事象の塊をロジカルに細分化していくためのツール。
    ・MECEな切り口に沿って、ロジックツリーを作成。
    ・ロジックツリーは何枚も書く。(ひとつで作って思考停止しない)

    ◆イシューツリー
    ・イシュー(課題)を具体化していくためのツール。
    ・イシューをMECEな軸でサブイシューに分解して、仮説を立てる。
     ・生産現場は「QCD」(Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(生産スピード))。
     ・市場競争環境の把握は「3C」(Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社))。

    ▼定番フレームワーク
    ◆SWOT分析
    ・内部環境と外部環境のそれぞれをプラス側とマイナス側から見る。
    ・内部のプラスはStrength(強み)、マイナスはWeakness(弱み)、外部のプラスはOpportunity(機会)、マイナスはThreat(脅威)。
    ・「内部環境(強み/弱み)」↑と「外部環境(機会/驚異)」→の2×2マトリクス。

    ◆3C分析
    ・Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)。
    ・顧客、競合、自社の3つの輪を重ねる。

    ◆アンゾフの成長マトリクス
    ・「市場(既存市場/新市場)」↑と「商品(既存製品/新製品)」→の2×2マトリクス。
    ・「新市場×新製品」に一気に飛ぼうとすると、強みがないので確実に失敗するので、
     市場か製品の片方は既存に置き、もう片方だけを新規に一コマずらして「既存市場×既存製品」or「既存商品×新市場」で拡業を目指す。

    ◆ボスコンのマトリクス(BCGマトリクス)
    ・「市場成長率」↑と「市場シェア」→の二軸をとると、各事業を4象限にプロットできる。「負け犬」「金のなる木」「問題児」「花形」。

    ◆マッキンゼーの7Sフレームワーク
    ・企業は、7Sのフレームワークで要素分解できる。3つのハードS「ストラテジー(戦略)、ストラクチャー(組織構造)、システム(仕組み)」と、4つのソフトS「スタッフ(陣容)、スキル(能力)、スタイル(行動様式)、シェアードバリュー(価値観)」。
    ・ハードSが手段、ソフトSが目的。
    ・組織変革にあたっては、ハードSを変えることで、いかにソフトSを進化させるかを考える。

    ◆ORではなくANDの思考(マトリクスの威力)
    ・一見トレードオフに見える二つの軸(「品質×コスト」、「スピード×完成度」など)のマトリクスを描いてみると、両立しうるアイディア(トレードオン)が生まれてくる。
    ・どちらかをとる(OR)のではなく、両方とる(AND)場所を探す。→イノベーション。

    ▼IQ(知能指数)・EQ(心の知能指数)・JQ(判断力)
    ◆効率よい判断は、AIのほうが早く正しい答えを出せる。何が善かを見極める力(JQ)こそが、人間がAIに勝つ最後の砦。

    ▼先が見えない時代・VUCAワールド
    ・VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性/ブーカ)
    ・先が見えない時代(VUCAワールド)では、既存の構造や従来の考え方にとらわれず、つねに新しい価値や意味を再構築し続けることが必要。
    ・脱構築には、3つの方向性がある。
     ①深化:ひとつのことを極める。
     ②伸化:強みを発揮できる領域をずらす。
     ③新化:突然変異的に新しいマーケット・領域を狙う。
    ・新化は、強みが生きず成功確率が低い。深化か伸化は、強みをテコにできるので、成功の確率が高い。

    ▼コンサルを目指す人
    ◆コンサルになるための条件
    ①「左脳(ロジカル・シンキング)」
    ②「右脳(パターン認識)」:「イメージ」や「パターン」で物事をとらえる。
    ③「原体験(知的好奇心)」:好奇心を持ち、「なぜ? どうして?」と納得するまで問い続ける。

    ◆いいコンサルになるための要件
    ①常識にとらわれず、自分で考える力がある。
    ②自分と異なる境遇の人に対しても、相手の立場を疑似体験し、相手の気持ちになることができる。
    ③血の通った人間としての魅力がある。

    ◆自身の資質を磨くための大事な能力
    ①洞察力:もっとも大事なことは何か。みんなが気づかないことを探す。
    ②共感力:メッセージがシンプル、スパイス(サビ)がきいていて、ストーリーがある。
    ③人間力:自分らしい軸。情熱・本気度。

    ▼「社会課題の解決」と「サステナビリティ(持続可能性)」
    ◆企業が解決すべき問題は、顧客課題から社会課題へとシフトしつつある。
    ・社会課題の持続的な解決のためには、CSV(社会価値を高めつつ、経済価値、すなわち自社の企業価値を高めようとすること)を実現することが不可欠。(CSV:Creating Shared Value)
    ・社会課題に対しても、コンサル技の問題解決は有効。
    ・高度な問題解決スキルのある人材が、企業コンサルから、社会システムを変革する立場に流れ始めている。
    →持続可能な社会の実現に向けて、人間の英知を結集していくこと、そしてそのような志を持った社会課題解決型の人材が求められている。
    ・問題解決師ではなく、価値創造者を目指す。

    ▼あなたの志は何ですか?(吉田松陰の口癖)
    ・いま、答えがなくてもいい。重要なのは考え続けること。
    ・たとえ、いま、答えを持っていると思っている場合でも、考え続けること。
    ・現状に満足することなく、つねに破壊し、新しく構築し直すこと。

  • ロジックだけではなく人を動かしていくための感性・心理学、通説やWhy not yetを疑う、など、とても切れ味があって実践的な問題解決の手法を学べた

  • この本の良いところは、コンサルのよく使うツール(フレームワークなど)について有用性を認めつつも、弱点や限界などについて指摘していることだ。(所謂、クリティカルシンキング)

    従って、コンサルのフレームワークなどについて、引っかかっている部分がある人は、もしかしたら言語化されたような感覚を覚えるかもしれない。

    また、ORからANDへという指摘については、自身の考え方に大きく影響を与えた気がする。
    これまで、あらゆることを無意識にトレードオフで考えていたが、見方次第(戦略次第)でトレードオフに必ずしもならないとのこと。
    (本書ではコストと価値のトレードオフやESGを例にしていた)

    これを個人のキャリアに当てはめると面白い。
    キャリア選択で「やりがい」「市場価値(待遇等)」「残業」などをトレードオフで迫ってくる人がいる。

    確かにある程度の相関はあるのかもしれないが、やり方次第でそうではない可能性もあると希望が湧く。そういう意味で、理想を追い求めるのも悪くないと思えたので良かった。

  • 最初の方は面白かったけど、最後の方だらだらと書かれていて飽きてきた。最初の方だけで良いと思う。

  • 読みやすかった。課題設定と問題解決のやり方はこんなにもあるのかとびっくり。なぜなぜ分析は以前に何回かやったことあるので、その頃を思い出しながら読んだ。使いこなせるともっといろんなことに考えが及ぶようになるんだろうな〜。

  • こういう本は嫌いなのだが、これは意外と面白かった。

    例えば、仮説を検証し間違っていれば、ずらすことによって修正していく。市場をずらしたり、自社の強みをずらしたり。面白い。
    また、結局はみんながconstraintsだと思っていること、壁だと思っているところをどう壁じゃなくするかという戦いだということ。結局は仏教じゃん…と思った。壁や境目や線を消して全体で捉えることである。


    また、未来を予測するのにいちばん強いのは自分でその未来を作ることである、という言葉が自分ぽくて好きだった

  • ところどころ鼻につく感じはあるものの、コンサルタントや問題解決の思考法がわかりやすく書かれていた。

  • 安宅和人さんの「イシューからはじめよ」とも通じる考え方も多々有り(マッキンゼーの考え方かな)。

    問題の本質に迫るために問題を仮説を持って見に行く・出口を意識して課題設定する方法や、Why?を繰り返しながら課題を深堀り、Why Not Yet?の観点を考慮に入れてその上でHowを考える、一歩引いて疑い深くなる、「仮説を持つ勇気」と「仮説を壊す勇気」併せ持つこと(一旦設定した仮説を必要に応じて再検討すること)などなど考え方が参考になる。「イシューからはじめよ」を再読した上でこちらももう一度読み込みたい。

  • マッキンゼーとボスコン。
    名前を聞くだけで、
    「ははーっ」となってしまいそうな、
    この2つの長所短所を分かりやすく解説。
    そこからの説明だったので、
    あとの話が入ってきやすかった。
    「コンサルを超える」のは
    もちろん簡単ではないけど、
    その思考は持つべきだと勇気づけられた。

  • 【 #書籍紹介 】 @BizHack1
    問題解決の本。

    40代くらいのギラギラしたコンサルとは違い、
    俯瞰して書かれている。

    マッキンゼーとボスコンを知る著者が、
    60代半ばだからかも。

    自己に落とし込むのにちょうど良い感じ。

    #コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法
    https://amzn.to/3PN1A5v

    2022/07/24

全34件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一橋大学ビジネス・スクール(国際企業戦略科)客員教授
東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士(ベーカースカラー授与)。三菱商事の機械(東京、ニューヨーク)に約10年間勤務。マッキンゼーのディレクターとして、約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。2010年一橋大学ビジネス・スクール(国際企業戦略科)教授、20年より現職。

「2021年 『稲盛と永守 京都発カリスマ経営の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

名和高司の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×