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感想・レビュー・書評
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不思議な生き物に対する関心は、時代が変わっても衰えることはない。
著者は化石を研究する古生物学を専門にしているが、「不思議なことや化け物」などを意味する「怪異」と関連は深いと思っているそうだ。
その理由として、化石をモデルにしていたのでないかと例があるからだ。
古生物の一風変わった視点として、気軽にお楽しみいただければと断っている。
いろいろ載っているが、龍あるいは竜、そしてドラゴンの存在は興味深い。ラーメン屋の丼に描かれていたり、神社の建物の装飾に使われたり、ゲームのキャラクターになったり、生活していて触れる機会のある身近な怪異だ。
龍の正体として恐竜を上げることが多いが、ここでは恐竜以外の生き物に答えを求めている。
龍に関して江戸時代後期、偶然見つかった龍骨があった。それは1804年、現在の滋賀県大津市に当たる村で開墾中の農民が獣の骨を発見した。その骨は藩主に献上されて、当時の識者が調べて、龍骨と判断した。
中国の故事では、竜骨の発見は「吉兆」であるそうだ。藩主は、発見地を「龍ヶ谷」と名付け、「伏龍祠」を建て、発見した農民に「龍」の姓を与え、発見した場所の年貢を永代に渡って免除した。
藩主の天にも上る心地だったのがよくわかる。
しかし、発見から7年後、本草学者によって竜骨の正体は、ゾウの化石だと指摘された。
この「龍骨」は、明治時代になり元藩主から皇室に献上された。
化石からたどる怪異の世界。昔の人は今みたいに情報がないだけに、考えられるだけの情報を駆使して結論を導き出した。
「違う、ハイおしまい」と論破して終わりにするには惜しい。どうしてそうなったか歴史をたどって行くと興味深いことが見えてくるのだから。詳細をみるコメント0件をすべて表示