民主主義 (角川ソフィア文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 文部省が戦後2年目に作成した冊子である。かなり分厚く、これを読んで理解して教育に役立てる教師はさぞかし大変であったと思われる。海外の例は欧米中心でありアジアはほとんどなく、民主主義の基準についても欧米である。日本の明治からの歴史も十分書かれている。
     あとがきで内田がGHQの監視の下で作成したと記載しているが、それよりも本文に従って学問的見地から書くべきであったがそれが書けなかったのが内田の限界であろう。
     学生が戦後の歴史と文部省のもともとの方針として理解するのはいいであろう。

  • 読むべしといった書評を目にしたことをきっかけに、電子版で読み始めた。戦後のGHQ占領下での文部省による「民主主義」ということで、薄いパンフレットのような書き物と思ったら、民主主義とはなんぞやから延々と話は続く。400ページを超える書物であった。明治初期から民主主義の考え方がだんだんひろがりつつあったのに、いつのまにか軍国主義に染まって日本滅亡の一歩手前までいってしまったことの無念さがある一方で、戦後の復興に民主主義にかける熱い思いが文章のいたるところに出てくる。全体として、論理だった記述で、例を挙げて説明を尽くしており、民主主義を学ぶ上での良書と思う。

  • 終戦後、アメリカが主導する政府の中で、民主主義教育のために使われた本……というのを解説を読んで始めて知った。
    8000万人の国民が……など、最近かかれた本ではないことは途中から理解したが、やたら、ナチスドイツと日本の軍国主義が間違っていたのが当然の当たり前の前提で、それに比べてアメリカやイギリスの民主主義がいかに素晴らしいか、という論調がどうなの?と思って読み進めていた。解説を読んで納得した。なるほど、GHQに検閲されているのが前提として書かれているのか。
    自分は最初のページから読み始めたが、解説から読み始めた方が面白いと思う。
    民主主義とは政治体制であるだけでなく、社会生活、行動規範に広く適応されること、というのはなるほど面白い。
    よく公約を守らない、最初に言ったこととやっていることが違う、という非難があるが、最初に多くの人が正しいと思って選んだことが実際に正しいとは限らないのだから、多数決で選んだ選択が間違いであれば、再度、多数決を取り直すことが大切、というのはなるほど、と思わされた。
    神ではない人間が多数決を行った結果正しい選択をするとは限らないのだから、多数決で決定されたとしても言論弾圧をすると間違いであった場合の多数決の取り直しができなくなる、というのは確かに、と納得した。
    共産主義の途中の社会主義として、その選択が多数決の結果であれば問題なく、そして多数決の結果少数派であれば、多数に従う覚悟をもつこと、という民主主義と社会主義の融和の考え方も面白い。社会主義と対比されるのは資本主義なのだから、別に社会主義と民主主義が両立してもおかしくないのだが、社会主義・全体主義は言論弾圧により多数決が使えない状況のイメージが大きかったので。
    終戦後、このような内容を学んでいたのか、と戦後教育を垣間見えた点も興味深かった。

  •  民主主義とは国民主権を実現するための制度であることを踏まえると、結局は主権者としての自覚がないから投票率も上がらないのだと言えるのかも知れない。そこに取り組んだのが、戦後まもなく執筆編纂された文部省著作教科書である本書。子どもたちに民主主義とは何かを教えるため1948年から1953年まで実際に使われたもので、今読んでも読みやすく、かつ深い内容が込められている。
     教科書というと無味無臭の退屈なものを想像してしまうが、本書には熱がある。民主主義をたんなる制度ではなく、「みんなの心の中にある」と説くのだ。すべての人間が個人として尊重されること、さらに不断の努力により平和で暮らしやすい社会を作っていくべきこと、それこそが民主主義の営みであると本書は訴える。清水崑による挿絵や漫画も入っていて、読み物としても面白い。こんな教科書があったのかという驚きに加え、いまでもなお新鮮に感じてしまうことに少し恥ずかしい思いがしてしまう。
     発表と同時におもに革新系の学者や団体から「資本主義前提の民主主義に偏っている」と批判され、一方で米国本土での反共主義の影響を受け、挟み撃ちになった結果、教科書としては短命だったというが、まことに残念なことだ。

  • GHQの指示の下で文部省が書いた、1948年から1953年まで日本で使われていた教科書の復刻版。

    内田樹さん曰く、

    ここに説かれている「民主主義とはどういうものか」という説明は、今読んでも胸を衝かれるように本質的な洞察に満ちている。「そうか。民主主義とはそういうものだったのか」と今さらのように腑に落ちた。

    という。

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