病院の子どもたち チャイルド・ライフ・スペシャリストのしごと (月刊たくさんのふしぎ2019年02月号)
- 福音館書店 (2018年12月21日発売)
- Amazon.co.jp ・雑誌 (40ページ)
- / ISBN・EAN: 4910159230295
感想・レビュー・書評
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今から60年前にアメリカで始まったという「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」
病院で働き、病気の子どもを応援する人。
著者はその一人。
その仕事で出会った2人の子供とのエピソードが、子どもにもわかりやすい言葉で物語のように綴られている。
病気のときはだれでも気持ちが暗くなる、そんな中でも出来るだけ楽しく過ごせるように応援するのがチャイルド・ライフ・スペシャリストの仕事。
お母さんが心の病気で面会がかなわず、寂しい気持ちの総太郎くん。仲良しの女の子が病気で亡くなり、ふさぎ込む亮介くん。そんな二人に想いを馳せて、求めているものは何か考え、寄り添い、手を尽くす。
これは病気の子どもたちへ向けたものだけではなく、人が人にできる本当の心遣いや優しさだと感じた。
総太郎くんのお母さんの代わりにはなれないけれど、総太郎くんの好きなご馳走を用意して誕生日パーティーをしたり、女の子の代わりにはなれないけれど、亡くなったことをきちんと伝えて、一緒に手紙を書く手伝いをしたり。
子どもたちの尊厳を守りながら、正直に向き合う大人の姿勢に心うたれた。押し付けがましくないサポート。
きちんと話を聞いてあげて、支えたい。
子どもに関わるときの大きな指針のようなものを学んだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
娘といっしょに読んでいる。が、彼女は聴きながら戸惑っているようで、なんだか複雑。
重い病にかかった同年代の子どもという現実。その苦しみを仕事としてできるかぎり和らげようとする著者の努力と善意。
しかし、娘はどうも、それが「その場しのぎ」に過ぎないということを感じとっているようなのだ。表情もどこか不安げ。
続きを読もうとしたところ、もういいと娘に拒否された。
親の自分も、何となくだが「その感じ」がわかったので、「いま読んでる」というか、読むのをやめた。というのも、チャイルド・ライフ・スペシャリストというものが職業としてしか存在しえない、その悲哀や矛盾を感じ取ったのだと思う。職業として母親的役割を演じているというその、双方が感じる悲しみ。何と言えばいいのか、もし自分が患者だったら(かつて自分も子供の頃に病で死にかけたことがある)、喜ばせようとしてくれればくれるほど、相手の心理がわかりすぎてきっと寂しくなったと思う。ああ、もう自分は助からないのだな、と思ったりして。そしてけっきょくは、自分を元気付けてくれようと努力してくれるその人に対して、深い同情を感じるのだ。
たいへんありがたいけれども、申し訳ないけれども、しょせん、浅はかなのだ。本書はその、いわば成功した物語(著者を動かした物語)を記しているだけで、それ以外に、光を当てられない現実が転がっているのだ。 -
購入。
「たくさんのふしぎ」はたまに興味のないテーマのものだと子に読む機会がなくて、積読になってしまうことがあるんだけど、この本は買ってすぐ自分一人で読んだ。
「チャイルド・ライフ・スペシャリストのしごと」という副題がついていたので、クリニクラウン(臨床道化師)みたいな仕事、パッチ・アダムスみたいな仕事かな?と思っていたけど、ちょっと違ったみたい。
「チャイルド・ライフ・スペシャリストのしごと」そのものよりも、そこで出会った子供にフォーカスしていた。
わたしは母親なので、「これ、私が翼ちゃんのお母さんだったらもう手紙読んで泣き崩れる」と思ったり、心の病気で起き上がれなくなってしまった総太郎くんのお母さんの気持ちがよくわかるな、と思ったりした。
8歳児Fもひとりでパラパラとめくっていた。後ろ姿を見ながら、どんな感想を持ったか聞いてみようと思った。 -
病気で入院している子どもの気持ちに寄り添い心を元気にするおてつだいをするチャイルド・ライフ・スペシャリストの仕事を具体的な2つの事例の物語を通して紹介する作品。一般的には遠い世界の出来事だと思うが、そういうこどもの心細さや喜怒哀楽を想像させてくれ、またそういう状況で助けてくれる存在がいるのだと知ってうれしくなる作品。そして、ああ、こういう仕事もあるのだなぁ、と子ども心に知ることができるのも意義があると思う。次女は小さい頃から幼稚園の先生一筋で看護婦さんがでてくるお話も好きだったけれど、こういう職業にも興味があるかもしれない。