WIRED (ワイアード) VOL.33 「MIRROR WORLD - #デジタルツインへようこそ」(6月13日発売)
- プレジデント社 (2019年6月13日発売)
- Amazon.co.jp ・雑誌
- / ISBN・EAN: 4910045920798
感想・レビュー・書評
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WIRED、今号の特集は「Mirror World」。冒頭で『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則 (The Inevitable)』、『テクニウム (Technium)』のケヴィン・ケリーが”AR will spark the next big tech platform.”と煽る。
昔、一時的に仮想世界の中で活動を行うSecond Lifeというものが流行したが、今回はリアルワールドを模した仮想世界の中で新たな活動が始まるというものだ。もしくはリアルワールド自体に、AR技術によってデジタルワールドが重なってくるというものだ。
内容はWIREDらしく、表現は地に足のつかない感じでふわふわして、自分に酔っている風なものが多いが、それもまた時代の雰囲気となるもよいだろう。
業界紙の役割を果たすべく、この領域での注目すべき新興企業として次の名前が挙げられている。この中で誰もが知ることになる企業は出てくるのだろうか。いつかもう一度ここに挙がった名前を見直してみたい。
■AR Cloud
「もうひとるの「地球」のためのインフラ」
・6D.ai ... ミラーワールドは「あなた」がつくる
・Sturfee ...ストリートから世界をデジタル化する
・Ubiquity6 ... わずか30秒でAR空間を構築
・Infiniverse ... AR空間の「財産」を保護する
・Blue Vision Labs ... レヴェル5の自律走行に向けた一手
・Escher Reality ... 巨人ナイアンテックが買収
・Jido Maps ... ATコンテンツに「永続性」を付与する
・Scape Technologies ... GPSを超える「位置情報」技術
■3D MAP
「惑星規模の3Dマップをつくるのは誰か?」
・WRLD3D ... アジアや中東からミラーワールドは実装される!?
・Mapbox ... Googleマップ一強時代に別れを告げる
・Fantasmo ... 「データ独占」という過ちを繰り返さないために
・Mapper.ai ... ギグワーカーの空き時間に地図作成はいかが?
・ゼンリン ... 日本の”老舗企業”は伏兵となるか?
■Spatial Computing
「「体験」や「経験」そのものが同期される世界へ」
・Unity Technologies ... 「重力がない」世界をデザインせよ
■Digital Twin
「「世界をデジタル化せよ」とテクノロジーはささやく」
・Fyusion ... デジタルツインは産業をこう変える
■Avatar
「アヴァターと<わたし>は近づいていく?」
・High Fidelity ... もはや人々はメタヴァースを望んでいないのか?
■LiDAR
「都市の3Dマッピングツール」
・Ouster Lidar ... 自律走行車、ロボット、ドローンの「眼」をつくる
■Mobile AR
「ミラーワールドの入り口はここに」
・Snap ...「カメラ」と「メガネ」からAR体験を拡張せよ
何だかよくわからないなあ、や、どういうことはわかっているけど現実的にはすぐにはそうはならないよ、という感想を持ったときには、ビル・ゲイツの次の言葉を思い出して、謙虚にその可能性について思いをはせるようにしたい。
「私たちはいつも、今後2年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけない」
”We always overestimate the change that will occur in the next two years and underestimate the change that will occur in the next ten. Don’t let yourself be lulled into inaction.”
- Bill Gates, 1995
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村上春樹とクーガーの石井さんのエッセイが掲載されていたのは、意外な驚きと収穫。
WIRED誌が、ミラーワールドを特集する回に村上春樹のエッセイを置いたのは、偶然か、それとも意図的なものか。ミラーワールドは、ハードボイルド・ワンダーランドなのだろうか。
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『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』(ケヴィン・ケリー)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4140817046詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Mirror world デジタルツインの世界へようこそ。
日本は、神道、アニミズムをバックグラウンドに持つからこそ、ロボットに魂を宿す。ラップトップからマシンランドスケープがどこまでも広がっていく世界。初音ミク、攻殻機動隊を生み出した日本は、デジタル世界となった今異質かつ圧倒的な存在感をリアル社会で得るだろう。現実世界に実装される、ミラーワールド。デジタルが進んだ後、リアリティはメディアになり、プレイスはコモディティになる。リアルラリティという言葉も、ロボットがパスポートを持つ社会ももうそこまで来ている。インターネットの次は、ミラーワールドだ。
ミラーワールドを公共スペースとして捉える、するとそこが学校であり、地方公共団体の施設であり、逆にリアルか、ARか、そこに差異がなくなる。仕事もアバターが相対して、そこにリアルで仕事している人、アバターで仕事している人が行き交う。
村上春樹のインタビューもすごい。このテーマの中で、地下に降りる、意識下のメタファーといわれるが、地下の世界に関心があると。井戸の中の世界、パラレルワールドを書く小説家が、ミラーワールドにつながっていく偶然、または必然。 -
むずかしい。ようやく読み終わった。ウェブ→SNS→ミラーワールド。なるほどね。
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ミラーワールド特集。遠くない将来にやってきそうな世界について、かなり勉強になった。なかでもケヴィン・ケリーの予測が面白い。
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ARとかVRとか、エンターテイメントとしての利用価値はあっても、その他の領域ではなんの役にも立たない。ミラーワールド? そんなものは聞いたことはないし、仮に世界のコピーができたとして、それがなんなの?
というような考えが、ぐるっと180度方向転換させられちゃう、こういうところがこの雑誌のすごいところ。
ストリートビューは私たちの生活を格段に便利にしてくれました。ただそこになにがあるかというのを見に行くだけ、というリアルなトラフィックは間違いなく減ったと思います。それがいいことばかりかどうかはわからいないけど、時間を少しだけ無駄にしなくてすむようになったとか、少なくともそのくらいには変わりました。
では?
世界中のほとんどだれもが持っているケータイにはカメラがついていて、それらが見ている景色がリアルタイムで位置情報とともに共有されて、世界の今の形・過去の形がデータで蓄積されていったら?
世界のありとあらゆるモノ・コトが3Dデータで再現できたら? 「予測」とか「社会実験」とか言われているものを、実地で行わなくても、誤差なくシミュレーションできるとしたら?
いや、そんな世界が望ましいものなのかどうかはわかりません。でも、世界は変わる。