承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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  • 1221年、承久の乱。後鳥羽上皇が打倒鎌倉幕府を掲げ、挙兵。しかし、結果は幕府側の圧勝。時代の空気を読めなかった敗軍の将、上皇は隠岐の島に流罪。日本の統治者は武士であることを決定づけた出来事だ。

    しかし、本当に後鳥羽上皇はろくな勝算を考えず無謀な戦いを挑んだのか、世の中を再び朝廷中心にすることを目指したのか。あっさりと終わった乱の結果だけで判断せず、そこに至る過程をさかのぼってみれば、意外な真実が見えてくる。

    承久の乱の数年前に3代目将軍、源実朝が暗殺される。本書はこの実朝が承久の乱の重要なキーマンだったと解説する。若くして亡くなったので歴史的評価は低いが、源実朝は後鳥羽上皇と良好な関係を築き、北条家も一目置く将来を嘱望された将軍であった。一方の後鳥羽上皇も強健な肉体と豊かな芸能センスを持つ、優れた「王」であった。おそらく実朝が長命であったならば、幕府と朝廷は良好な関係を保ち、協力して日本を統治しただろう。それを執権の北条家も望んでいたようだ。

    実朝の暗殺は幕府、朝廷、上皇、北条家いずれの立場からも予期せぬ不幸な出来事だった。そこから、社会は大きく転換し、源氏将軍のいない幕府では朝廷との協力関係を維持できないと悟った後鳥羽上皇による北条家排除の行動、それが承久の乱だったのだ。決して、倒幕を目的とするものではなかった。

    いつの時代も歴史を創るのは勝者の側だ。しかし、敗者の歴史に目を向けることで、見えてくる真実がある。

  • 承久の乱の経緯について具体的な流れを紹介した本です。本書ではまずこの時代の経緯となる平安時代末期から、本乱の主役である後鳥羽院、そして影の主役とも言える三代将軍実朝の生涯について紹介し、朝幕が強調していた時代からいかにして後鳥羽が挙兵を決意するに至ったかを紹介しています

    【こんな人におすすめ】
     承久の乱について詳しく知りたい

  • 承久の乱が起こる少し前から、白河、鳥羽、後白河、後鳥羽という朝廷の動きと、頼朝、実朝から北条への幕府の動きを「みてきたように」述べながら承久の乱が起こった歴史的な必然性を解説。
    鎌倉幕府ができただけで武士の時代が始まったわけではない。江戸時代の終わりまで長く続く武士の世がどのようにして成立したのかが素人でも理解できるようにわかりやすく解説され、とても面白く読むことができた。

    後鳥羽や和歌に深く踏み込みながらの著者の私見も交えての解説(だからこそわかりやすく面白い)であるため、承久の乱を理解するためにはもう1,2冊の解説書を読んでみるのが良さそうに思えたが、入り口としてはとても良い。

    なお、この本でも触れられていた三十三間堂は平清盛が後白河のために造成したものだが、そういう歴史的な経緯を知ってから訪れると「ここが1000年近く前、武士の世の始まりにおいて建てられたものか。。(その後焼失して立て直されているにせよ)」と感慨もひとしお。観光地を訪れる前に歴史を深めに勉強するのっていい。

  • 院政の始まりから解説。後鳥羽朝廷は宮廷儀礼の復興に力を尽くした院による独裁だが軍事面は幕府にお任せ、実朝幕府との協調が進むが「大御所実朝と親王将軍」体制成立直前で、鎌倉右大臣暗殺によりとん挫し摂家将軍へとトーンダウン。幕府助成なしの大内裏造営で、全国からの抵抗を期に自力コントロールを目指す。在京武士を動員、北条義時追討の院宣・官宣旨を出す。治承・寿永の乱や奥州合戦へ参加の古老もおり直近和田合戦あり、戦時体制を取れた幕府側が取りこぼし少なく圧勝、始末は保元の乱を思わす厳しさで全国政権に飛躍した(2018年)

  • 大河ドラマのネタバレ第二弾。この歴史がドラマでどう描かれるか期待ですさせて

  • 公家を中心とする類似した名前の人物が多いので、相関関係を理解するだけの集中力が保てなかったのが残念。承久の乱は幕府側の圧勝という印象であったが、それぞれの局地戦は、奥州藤原氏征伐などと比べると、よほど接戦だったような印象を受けた。この時代考証をする文献の中心となる吾妻鏡が全面的に信用できないとの、欠落している部分があるのは残念。内裏が消失したりしければもう少し資料も残ったのかもしれないけれど。歴史の暗部に光を当てる資料が出てくると面白いのだが、そこを想像するのがロマンなんだといえばその通り。

  • 後鳥羽上皇と実朝の協調関係や後鳥羽上皇が倒幕を目指していたのではなかったなど、最近の説を盛り込み、上手くまとめているが、さほど新味は感じなかった。

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著者プロフィール

創価大学教授
著書・論文:『源実朝 「東国の王権」を夢見た将軍』(講談社メチエ、2014年)、『承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱』(中公新書、2018年)、「中世前期の文化」(『岩波講座 日本歴史』第6巻中世1、2013年)など。

「2020年 『乱世を語りつぐ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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